第28話 総合導師王女
やがて、いくつかの特許を取り、私は十四歳で卒業するころには、「総合導師王女」と呼ばれていた。
まだしっくりこない。
しかしだ・・・
歴代の女王の名に「総合導師」の名が加わるのだ!
こいつァすごい!
「ミリアム様!
科学長官やアリシア様からの収支報告が・・・」
イリアが、書類を持ってくる。
くそッ!
新開発のたびにこれだ!
いそがしいったらありゃしない!
「姉様!」
第二王女のワッフリーズ・キティルハルムが、部屋に訪れた。
「どうしたの?ワッフル。」
「トラルティールのアルナス・ライテス博士がお越しです。」
「「えっ!?」」
「なにーッ!」
総合導師アルナス・ライテス。
彼女は、次期ライテス家当主である。
「すぐに応接間にお通しして!」
「すでに。」
気の利く妹である。
「いやあ・・・
まさか、炭素建材を開発した総合導師・ミリアム王太子にお目通りいただけるとはね。」
そう言って、白衣の総合導師はお茶を飲む。
ソファに、二本の刀が立てかけられている。
ん?
両方とも「太刀」だ!
二刀流か?
私が再現した静岡茶だが。
「うちもね・・・
初代から、緑茶を飲んでいるし、邪馬台国の皇室ともつきあいがある。
さすがに、「転生人」の「生の技術」は違う。」
首の辺りで、青いリボンで髪をまとめているが、長い髪はぼさぼさだ。
メガネが似合っているが、どれほどの神波動をもっているか・・・
「しかし・・・あなたの釣った「オオウナギ」はうまかった。」
「歴代の女王は、古代鮫も釣っていますが。」
こいつ・・・
結婚式に出ていたのか。
「まあ、国連主導での軌道エレベーターの建材としての、ライセンス提携をお願いしたいのですがね。」
「「受注」と・・・考えてよろしいかと?」
「そのとおりです。」
そこまで話をすると、アルナスは、伸びをした。
「ふう・・・」
ため息をつくと、メガネを外す。
「まったく・・・
なぜ私なんぞが、次の国連事務総長をやらねばならんのだ・・・
嫌だ嫌だ・・・
すでに、私は科学長官をやっているのに、これ以上いそがしくなってたまるか!
私は、好きな研究をしていたいだけなのに!」
「食えない人だと思ったら、研究者バカでしたか。」
アルナスは、ニッと笑った。
「そういう、姫こそ「ワル」ですなァ・・・」
「アルナス殿こそ・・・」
「「ぶわははは!」」
た・・・楽しい!
こんなところで、「ジャパニーズギャグ」を言い合える人に出会えるとは!
「さて・・・
交渉が終わったところで、帰ることとしよう。」
「へっ?うぷッ!」
突然吐き気がして、突っ伏した。
「ま・・・まさか・・・」
「私は、なにもしていない。
ただ、あなたの身体の中から、あなたとは別の「神波動」を感じたのでね。ご無理は禁物・・・と、言いたかったのだが。」
登場人物7
ワッフリーズ・キティルハルム
ミリアムの妹1
通称ワッフル。
切れ者で、素早い。
アルナス・ライテス
トラルティールの総合導師。
科学長官。
ずぼらな女性で、実はかなりの剣術と魔法の使い手。
ミリアムと末永い付き合いになる。