第199話 横恋慕の大魔王
老師こと、ハイペリオンは不機嫌だった。
「なぜ、あのアバズレがよみがえったのじゃ!」
普段の好好爺然とした彼が、嘘のようだ。
「ろ・・・老師・・・恐ろしいですわ・・・」
実験用マウス二号が、身震いする。
「うへえ・・・じいちゃん、こええ・・・」
変異種の発酵業務用マウス一号が、怯えている。
彼の身体は、光っている。「はっこう」だけに・・・
彼は、特別可愛がられていただけに、ひいている。
ちなみに彼の業務は、大魔王たちのメニューの一つ「ヨーグルトウォーター」やチーズの製造ラインの管理と開発である。
食用アルコールの製造もやっている。
発酵させるのが、得意である。
「老師は、この人のことを思い出すと、人が変わるよ・・・
なんせ、「奥さん」と子供を殺した張本人だから・・・」
語る、実験用マウス一号の額から、冷や汗が流れている・・・
「エル・クライン・・・
当時、ワシの許婚と、腹の中の子を殺した女じゃ・・・
ワシは、あやつを解剖しながら「憎しみと呪いを込めて」惨殺したのじゃ!」
「あら・・・わたしは、あなたとの逢瀬の邪魔者を殺しただけですわ・・・」
そのとき、白衣を着たエルフの女性科学導師が現れた。
「ネズミさんたち・・・
私は「横恋慕の大魔王」エル・クラインです。
よしなに・・・」
頭を軽く下げると、彼女は優雅に歩き去っていく。
「ひッ!」
発酵業務用マウス一号が、ハイペリオンを見て失神する・・・
なぜなら、彼は暗黒神波動以上に強力などす黒い神波動を放っていたからだ。
「こりゃ、血を見るぞ・・・」
実験用マウス一号は、震え上がった・・・
まあ、老師はかつて、この人のために人生を捨てたようなもんです・・・




