第2037話 囲碁将棋
絨毯はそれから1時間程で、お城の一角に降り立った。
なぜか疲労困憊の咲希。
「主にバトってたのは、あちしらにゃ。」
「誰のせいで疲れとるの!」
絶対、ナキのアホトラブルのせいだろう。
とは言え、まだ仕事がある。
一番疲れる、王様との謁見。
明日は無理なのは分かってるから、仕方ないが。
「皆様、謁見の間へどうぞ」
執事の方に案内され、私たち、咲希と和磨、他数名の騎士の方々と共に、謁見の間へ。
そこには、王様とフランツ王子が何やら会話しながら、待っていたようだ。
「只今戻りました。」
代表して、咲希が声をかけた。
「ふむ、よくぞ無事に帰った、客人方も楽しかったようで何よりだ、ふむ。」
王様、玉座に座り、神妙に何度も頷いていた。
何やら思うところがあるようだ。
大方、ナキがオーバースペックな学問を披露しまくっていたので、参っていたのだろう。
「さて、ミリアム様とナキさんより、献上したい物があるとの事です。」
私は、レインボーアイアントの蜜袋。
ナキさんは先日作成したチェスセットを取り出す。
王様も、隣に控えたフランツ様でさえ、興味津々に見ている。
「こちらを献上しますにゃ!」
元気いっぱいに差し出したチェスセット。
大理石と黒曜石、アルミニウムと黒曜石のチェス盤セットだ。
ナキの技術では、片手間だが、この世界ではものすごいだろう。
「・・・これは、何だろうか?」
写真で見ていたものの、実物には圧倒される王様。
フランツ王子もピンと来ていないようで、不思議そうにこれを見ていた。
あぁ、あれは、初めて見た人の顔である。
「こちらは、我々の世界ではチェスと呼ばれる、盤上のゲームですね。」
「ふむ、イーゴやショーギみたいなものかの?」
「はい、将棋の仲間ですね、分かりやすく言えば。」
あれ?
ご存じない?
イマイチピンと来ていない王様の質問に、和磨が答える。
しかし、何やらナキさんの顔に悲壮感が漂い始める。
「チェス、無いのにゃ!?」
「世界が違いますからね、常識も違うのでしょうか・・・
まあ・・・
だいたいルールは、将棋と同じ。
しかし、「成る」駒は、「兵士」のみで、「女王」「城兵」「僧兵」「騎士」として使えるようになります。」
この世界、何故か囲碁や将棋はそのままの形で伝わっていた。
しかし、何故かチェスは無かったのである。
前の勇者は、200年くらい前に、召喚されたらしいから、伝わらなかったのだろう。
「次に、レインボーアイアントの蜜袋を献上いたします。」
これには、王様もフランツ王子も、明らかに顔が満面の笑みと分かる物を浮かべていた。
やはり、国のトップからしても、これは嬉しいらしい。
「ふむ、ご苦労である、ありがたく受け取ろう。」
私たちは、レインボーアイアントの蜜袋を3個、クリスタルアイアントの蜜袋を5個、献上した。
近年、このどちらも、献上品には上がらなくなってきたらしい。
ナキ曰く・・・
「冒険者たちが、サボったにゃ?」
とのことだが・・・
バキッ!
金属バットで殴る私。
「自分の基準で言うな!」
バットは、また断面を晒して折れていた・・・




