第127話 哀しみの力
私にとって、何が哀しいか・・・
それが、ようやくわかった気がする・・・
地球では、私の「負」の心は強かったほうだと思うけど、暗黒神波動が発現するほどではなかった。
その日・・・
背教者が、王宮を襲った。
強烈な暗黒神波動に、私は眼を覚ました。
すぐさま、王太子のローブに着替え、謁見の間に走った。
「くそ!」
「まさか、そんな!」
騎士や格闘士、銃士が肩で息をしている。
玉座を見ると、息を絶えた父さまと、全身から血を流した母さまが・・・
「ミリアム様!
あぶのうございます!」
「まさか、この背信者ごときに侵入を許すとは!」
そこにいたのは、豪華な神官服をまとった老人・・・
「あなた・・・「大魔皇エクシィル」!?」
私は、目を剥いた。
「くくく・・・ワシは、ファルスやネズミと違って、甘くはないぞ。」
私の身体の中から、何かが沸き起こっていた。
なぜ、人の幸せを壊す!
なぜ、道理を歪め、自分の解釈で物事を決める!
私は、エルフ文明の前の高霊族が、滅んだ原因を思い出した。
それは・・・
「高霊族が、滅んだのは自分たち以外を認めなかったからよ!
だから、神もそれに準じる竜神たちも、始祖エルフによる高霊族文明への攻撃を止めなかった!」
私の心には、怒りが渦巻いていた。
しかし、妙に理性的な感情が心を支配していた。
目の前にいる男に対する怒りよりも、自分勝手な理屈で人を傷つけ、殺めようとするこの思想が哀しかった。
「これは・・・哀しみか・・・!?
ま・・・まさか・・・!
ありえん!
敵への哀れみで暗黒神波動に覚醒するなど・・・!」
「あなたは、その時代にいたはずでしょ?
わからないはずがない。」
私は、悠久の守護杖から剣の部分を抜き放ち、柄の部分を展開する。
「ルカ様やリケちゃんが来るのを待つまでもない!
この王太子ミリアムが、引導を渡してくれる!
覚悟なさい!」
怒りと哀しみが今・・・




