第104話 真夜中の訪問者
私は、イリアとさんざん「した」後、バルコニーに出た。
夜風が、火照った身体に気持ちいい。
「あんた・・・私が亭主との行為を終わるまで、待っていたわね。」
「うん。「恋路を邪魔する奴はなんとやら」ってね。」
そこにいたのは、実験用マウス一号だった。
まったく・・・!
いい気分のときに!
「こうして、面と向かって会うのは初めてだね。」
「そうね。
あのライテスも、こんな感じであなたに会ったと聞く。
つまり「卒業試験合格」ってとこ?」
「まあね。」
「まったく・・・」
「娘たちが同僚にいじめられていて困ってるんだ。
いい手はないかな?」
「「敵」に聞くの?」
残念ながら、私の子供たちは未就学児だ。
「誰それ?」
「「嫉妬の大魔王ミュウ」。」
だめだソレ。
「あきらめなさい。」
「何で!?」
「敵味方以前の問題。
大方、あなたたちは、ラブラブで子作りし放題、交配実験し放題なんでしょ?
他の大魔王ならいざ知らず、ミュウはだめね。
娘とやらが、妊娠していたら「おなかの子供」ごと殺されるわ。
嫌でしょ。
肉親であると同時に、大事な実験素体なんでしょ。」
困った奴だ。
「そうなんだよ・・・
長男の実戦用一号は、補佐として有能で実戦用二号は、メイド・乳母として有能だったりこれからに必要なんだけどね・・・」
「なんで私に聞くかな?」
「いや・・・ライテス君は「敵味方」抜きだと、こういう話がすんなり通る男だったからね・・・」
「あんたにまで、言われるとはね。」
一緒にするな。
「銀魚や、ロボの石を造りかねないと周りに思われてる?」
「私・・・そんな子じゃないのに・・・
私・・・亭主と仲良くやって、娘たちを育てるのが好きなのに・・・」
実験用マウス一号は、空を見た。
「あのアホ総合導師の夢は、実現しつつあるよ・・・」
彼の言ったことは、意外だった。
「他人を可能な限り不幸にせず・・・
労働者に優しく・・・
失業者の出ない世界・・・
キティルハルムがいち早く始め、トラルティールが急速に取り組んでいる・・・」
「買い被りよ・・・」
「いいや・・・
あの男は、それを否定して一蹴した僕らをさらに、一蹴して見せた。
彼の意見は、「古代人」さえも魅了した。
その古代人はこうも言った。
「彼らは、被害者なのだ。しかし、今生きる皆様やご子孫にまで罪はない」とね・・・
困ったことに、僕らの存在意義を確実に「殺して」いるのさ。
確実にね。」
ところで・・・
と、私を見る。
「君と話していると、「女性」と話している気がしないな。「地球」でも「女」だったんだろ?」
「ええ。
どっちかってえと、「性的」な雰囲気を感じさせない男と過ごすのが好きだったな。」
ある程度話すと、実験用マウス一号は印を結んだ。
「じゃあ帰るよ。これ以上は迷惑かもしれないから。」
彼は、術を発動させて消える。
「困ったネズミね・・・」
がっくりする私・・・
ノロケを聞かされました・・・




