90話 雷刀のヴァルゴ
俺は男に見られていた。
若い男だ。
10代か20代か分からない男。
端正な顔に、目元には泣きホクロがある。
所謂イケメンだ。
「あーん。巨大樹の精霊さんよー。クリスタルを貰おうか。持ってるんだろ?」
いや。
なんのことだろうか?
ほんと。
俺は木の精霊でもないし、クリスタルも持っていない。
「人違いでは?俺は違いますよ」
「あーん。嘘つけ。お前は人じゃないだろ。それに魔物でもない。
出ているオーラで分かる。フロアマスターより強いだろ?」
くっ。
確かに今の俺は、『ベビーエンジェルヴァンパイア』。
多分、天使族なんだと思う。
通常の生物とは一線を博していると思う。
精霊と実間違えられてもおかしくないか。
服も着てないし。
「確かに、俺は普通じゃない。だが、巨大樹の精霊でもない」
「あーん。ダウトっ!白々しい嘘だなー。俺様、雷刀のヴァルゴを騙せると思ってるのか」
こ、こいつが・・・
アイシャの追っていた敵か。
確かに、全身からヤバそうなオーラを出している。
刀をさっきからビリビリ唸ってるし。
絶対あれ。
電撃が流れてますわ。
「人違いですよ。ではっ。私はこれで」
スタスタ スタスタ
颯爽とその場を離れようとすると。
「雷撃ッ!」
ズバッ
うひょーん!
ヒョイッ!
俺はとっさに体を動かす。
さっきまで俺がいた場所は、パチパチと黒焦げになっている。
「ちっ。すばっしこい奴だ」
ヴァルゴが呟く。
奴の刀がバチバチと輝いている。
どうやらいきなり攻撃されたらしい。
なんて奴だっ!
不意打ちとは卑怯なっ!
ササッ
俺はとっさに間合いをとる。
相手の攻撃が未知数だ、近づくのは危険だろう。
すぐに腰のリボルバーマグナムを抜く。
戦闘はいくどもあったが。
俺自身が戦うのは久しぶりだ。
俺が今もっている弾薬は5つ。
血の弾丸、ブラッドバレッド。
骨の弾丸、ボーンバレッド。
塩の弾丸、ソルト・バレッド
毒の弾丸、ヒガン・バレッド
身体強化の弾丸、ムーン・バレッド
クルッ ガチャ
瞬時に弾奏に球を装填する。
選んだのは、ブラッドバレッド。
相手の体内に打ち込むことで、血流を暴走させ内部から破壊する。
相手に血が通っているならのなら、十分な効果を期待できるだろう。
ザッ
銃口をヴァルゴにむける。
狙いを定めえる。
「精霊・・・奇妙な武器だな」
「ヴァルゴ、人違いだと言っているだろ、さもなくば、弾丸をくらうことになるぞ」
「あーん。俺様をおどすってか、良い度胸だ。相手になってやろう。どうせ、狩るつもりだったからな」
俺とヴァルゴは向かい合う。
夜風が二人を揺らす。
ザザッ。
奴が刀に手を触れ、動き出そうとした瞬間。
バンッ バンッ バンッ
俺は奴に向ってブラッドバレッドをおみまいする。
だが・・・
カンッ カンッ カンッ
「遅いなっ!」
「何っ!」
うそっ!
奴は全ての弾丸を刀で弾き飛ばした。
弾丸をはじき飛ばしたのだ。
まさか、弾丸を刀で捉えられる奴がいるなんて・・・
おっと。
驚いている場合じゃない
今は戦闘中だ。
クルッ ガチャ
俺はすぐに弾奏を入れ替え。
身体強化の弾丸、ムーンバレット装填。
バンッ バンッ バンッ
自分自身に向って撃つ。
「あーん、何やってんだ、てめぇー。自傷趣味でもあるのか?」
ふんっ。
ヴァルゴは驚いているが。
俺の体内ではエネルギーが活性化する。
体の中で細胞が活性化していく。
身体能力が向上していくのを感じる。
この相手・・・
ヴァルゴ相手には、普通の状態では厳しいと思ったのだ。
クルッ ガチャ
俺は再び弾奏にブラッドバレッドを装填する。
そして。
ザザッ
高速で動き出した。
「何っ!急に動きが・・・っち、さっきのはフィジカル強化魔法か!」
ザザッ
俺はヴァルゴの周りを動き回る。
彼は刀を握ってその場でたたづんでいる。
自分からは動かず、俺が襲い掛かってくるのを待っているようだ。
ならばっ。
弾丸をおみまいしてやろう。
バンッ バンッ バンッ
俺は高速移動しながら、弾丸を放つ。
自分の速度を、弾丸に上乗せするのだ。
俺の今の弾丸は、先程の3倍以上だっ!
バンッ バンッ バンッ
走りながらブラッドバレッドをおみまいする。
「ちっ」
カンッ カンッ バシュ
ヴァルゴは2発刀で弾いたが。
一発はヒットした。
奴の体を弾丸が貫く。
だが・・・
おかしい。
体内で血流の変化が起きている様子はない。
まぁ、いい。
このままでいい。
このまま弾丸をおみまいし続けてやる。
バンッ バンッ バンッ
ブラッドバレッドを繰り返す。
「あーん、ええいっ、ちょこまかとっ!」
カンッ カンッ バシュ
ヴァルゴは刀で弾丸を弾くが・・・
よしっ!
また一発ヒットした。
俺の速度がのった弾丸は食い止められないようだ。
しかし・・・
相手の血流に変化がおきないのが気がかりだ。
ブラッドバレッドの効果が働いていないようだ。
魔物でも効かなかった奴がいるからな。
相手の血との相性もあるのだろう。
ならばっ。
クルッ ガチャ
弾丸を変更する。
骨の弾丸、ボーン・バレッドを装填。
ボーン・バレッドをくらった相手は、体内で肥大化する骨に体を切り裂かれる。
これで決めるっ!
バンッ バンッ バンッ
ヴァルゴに向って放つ。
カンッ カンッ バシュ
一発ヒットする。
ヴァルゴの傷口から骨が巨大化するが・・・
シュン
骨は瞬時に炭となって消える。
コッパ微塵に消えた。
えっ!
うん?
おかしい。
どういうことだ・・・・
何故、弾丸が効かない・・・
「あーん。お前、妙な攻撃ばかりしやがってっ!」
ヴァルゴの表情に変化はない。
余裕が感じられる。
何発も銃撃を食らっているのに、ひとつもダメージを受けた形跡がない。
「俺様も、ちょいと本気をださねーといけねーみてーだな。まぁ、精霊相手ならしゃーないか」
ザスッ
ヴァルゴが、ビリビリと光り輝く刀を振り回し。
叫ぶっ!
―――「エレメンタル・エンチャント・雷獣っ!」
―――ブオオオォォオオオオオオーーーーン!
ヴァルゴの周りに突風が巻き起こり。
彼がピカピカと電撃で包まれていった。




