52話 ワイバーンの巣は、巨大樹の上
ガブッ チューチュー
差し出されたワイバーンの長い首に噛み付く。
ムーン・フォックス達を仲間にした時と同じように。
『眷属になれ~』『眷属になれ~』と、とりあえず祈ってみる。
ワイバーンの肉感は、これまでにないジューシーさがあるな。
祈りながらも食感を味わっていると・・・
おっ。
おおっ。
何か反応が出た。
【ワイバーンを眷属を加えました。】
【名前がありませんので、名前を決定してください。】
久しぶりに神の声さんだ。
なんだかこの声を聞くと落ち着く。
でっ、名前かー。
やはりワイバーンにも名前がないか。
名前がある魔物の方が少ないのかもしれないなー。
うーん。
そうすると名づけか・・・
どうしようか?
ムーン・フォックスの時と同じで良いかな。
あの時は・・・月太郎、月次郎だったから。
今回もそれにしよう。
『神の声さん、ワイ太郎でお願いします』
【ワイ太郎で登録します。】
よしよし。
上手く眷属にできたようだ。
「ありがとうございます。
かなり強いドラゴン様をお連れしているお方。
さぞ、名のある方だと思いますが・・・なんとお呼べすればいいですか?」
うほっ。
ワイバーンさんこと、ワイ太郎が話し出した。
やはり・・・眷属化すると会話が可能になるのか。
ムーン・フォックスだけの機能ではなかったようだ。
「徳川で頼む」
「はいっ。トクガワ様ですね」
ふぅー。
分かっていたよ。
片言トクガワで返される事は。
未だに誰も徳川と呼んでくれないから。
日本名が普及していないのだろう。
「よろしく頼む」
「ははっ。我らワイバーン、トクガワ様の傘下に加わらせていただきます。
出来ましたら、仲間たちもお願いします」
「よいよい。分かっておる。一列に並ぶが良い。全員俺の眷属に加えよう」
「ははっ。ありがとうございます」
ザザッ ザザッ ピタッ
ワイバーン達が一連れに並び、首を差し出す。
凄い光景だな。
映画で見た、ヤクザの組長を迎える組員みたいだ。
ワイバーン達は統制が良く取れているようだな。
ではっ。
ガブガブ眷属タイムを始めますか。
ガブッ チューチュー
俺は一匹一匹噛み付いて、眷属にしていった。
眷族が増えるたびに体の中の魔力が失われていく気がする。
ムーン・フォックスの時よりも強く感じる。
強い仲間を眷属にするには、その分魔力を消費するのかもしれない。
ガブッ チューチュー
ガブッ チューチュー
ガブッ チューチュー
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
最後の一匹を眷属にした頃には、ウトウト眠くなっていた。
「ご主人しゃまーおねむなの?」
「主よ。程ほどにした方がよいぞ」
「あぁ、少し横になりたいかな」
魔力の消費が思ったより大きかったようだ。
魔力がなくなると眠くなる。
今すぐに横になって寝たい。
「主よ、それではアドの上で寝ていると良い。後の事は、第一の部下である我に任せよ」
「ええ~。ご主人しゃまの第一はアドだよ~」
「ぬっ。アドは早くなっただけ。我こそ第一。最強っ!」
「アドだよ~アドだも~ん。アドが一番でしゅ」
「ぬっ」
何やら声が聞こえる中・・・
俺は眠りに落ちた。
zzzzzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzzzzz
ビュー ビュー パタパタパタ
風音がして目覚めると・・・
うえっ?
んんっ?
アドの上ではなく・・・ウロコの上?
首を振ると・・・何もない?
ええっ、あのー。
空しか見えないんですが・・・
しかも景色が動いている。
「あっ、ご主人しゃまおきた?」
「ぬっ、寝ぼすけ主よ。やっとおきたか」
俺が回りを確認すると、どうやら空の上らしい。
大きなドラゴン姿になったエンさんの上にのっているようだ。
因みに、俺の背中にはぴったりとアドが張り付いている。
俺が落ちない様に支えてくれていたのかもしれない。
「どうして空を飛んでいるんだ?」
「ワイバーンの巣に向うでしゅ。大きな木の上にあるから、飛んでいくでしゅよ~」
「我の飛行は繊細だ。安心してよい」
俺は周りをよく見ると・・・
ワイバーンの群れに囲まれていた。
編隊を組んで飛んでいるようだ。
俺達はちょうど群れの中央に位置している。
下を見ると、地面はかなり下の。
ダンジョン内だというのに、かなりの高度。
あれ?
でも、そういえば・・・・
アドは高所恐怖症だった気が・・・
うーん。
こんな高い場所というか・・・
空の上を飛んでいて大丈夫なのかな?
「アド、高いけど大丈夫か?」
「でしゅ?そういえばそうでしゅねー。気づかなかったでしゅ」
ほ~う。
あれかな?
高所恐怖症でも色々な人がいるからな。
高い場所は苦手でも、飛行機には乗れる人もいるし。
アドもそっちなんだろう。
「ぬっ、我の安全飛行の賜物よ。アド、感謝せい」
「エン、ありがとでしゅ~」
「ふっ、礼には及ばん」
礼を求めて、礼を断る。
さすがエンさんだ。
にくいぜ。
俺は流れていく景色を見ていると・・・
おっ。
なんか見えてきた。
前方には・・・
天を突くように生えている大樹。
所々形が変化しており・・・鳥の巣らしきものも見える。
ワイバーン達が自分達の巣を作ったのだろう。
その証拠に、巣の周りではワイバーンが飛び回っている。
「あそこが目的地みたいだな」
「でしゅねー。おっきいでしゅ~お空でしゅ」
「ふふっ、我のピラミッドに比べると・・・まだまだよ。年季が違うわ」
バサッ バサッ
大きなワイバーンがこちらに近寄ってきて。
空中でクルっと礼をする。
「トクガワ様達は、3番ゲートからお入り下さい。前のワイバーンが誘導いたします」
「ぬっ、我に任せよ」
前方のワイバーンが進路を変える。
エンさんがワイバーンに従い追尾する。
3番ゲートか・・・
うーん。
よくみると・・・
木々を覆う葉と枝の中に穴が開いており、何個が入り口があるようだ。
多分、穴一つが一つのゲートなのだろう。
バサバサッ ズサァー
スカイツリーより何倍も大きい木の中に着地。
飛行場の様になっている大きな枝の上に。
俺とアドがエンさんの上から降りると・・・・
ポワンッ
エンさんも小さいドラゴンの姿に戻る。
「大きいでしゅね~アドより葉の方が大きいでしゅ」
「俺よりも大きい」
「我の新の姿よりは小さいな」
俺達は近くに生えていた葉っぱをつついていた。
本当に大きな葉だ。
それに、ここはよく整理されているようで、かなり奇麗なだ。
小さなワイバーンたちの姿も見える。
俺達と変わらない大きさの者まで・・・
生まれたての子ワイバーンだろうか。
穏やかな生活臭がする。




