2話 吸血鬼さんに転生しました
ドテッ
足を進めようとしたら倒れた。
立とうとするが出来ない。
あれ?力が入らない。
全然、うんともすんともいわない。
何だ俺?どうした?
自分の手を見ると・・・
あらっ!小さくて可愛いお手て。
まるで子供・・・赤ん坊みたい。
イヤイヤイヤ。
みたいじゃなくて本当に小さいんですけど。
俺のお手て。
近くにある水溜りをみると・・・
美少女?いや、美少年?の姿。
とにかく中世的な天使のお顔が見えます。
誰でしょうかね?この天使は。
見てるだけで気持ちが良いですが。
こんなところで・・・
彼?は、卵の殻を被って、手と足だけ出しているようですね。
斬新なファッションですね。
随分前衛的です。
パリコレかな?
クイクイ
顔を左右に振ると、水溜りの顔も動く。
クイクイ
再び顔を左右に振ると、同じように動く。
ドーン!
これ俺かい!この天使が俺なの?
え、マジで?
本当に?
どうなってるの、俺?
いやいや落ち着け。
そうだ。
俺自身を鑑定すればいいわけよ。
スキルなんちゃらで手に入れたわけだから。
俺は何者か?
いかに?
『鑑定』
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種族 :生物
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ノオオオオォォォォオオ!
しまったー。
そうだった。
そうでした。
ポンコツ鑑定さんだった。
鑑定さんダメすぎですよ。
だが、諦めるな。
もう一度、やってみよう。
諦めない事が大事ですよ・・・多分。
『鑑定』
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種族 :生物
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『鑑定』
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種族 :生物
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ぽ、ポンコツや・・・
ダメダメやん。
こうなればやけや。
とりあえず、まともに鑑定できるものは・・・
片っ端から鑑定!
いざ、参る!
『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』
『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』
『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』
『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』『生物』
うぐぁあああああああああ!
ぬおおおおおぉおおおおぉおお1
目がー、目がーつぶれる。
あ、頭が痛い、痛くて爆発するって。
何かが頭の中でうごめいているって。
あまりの情報量でパンクしそう。
【熟練度が一定に達しました。『鑑定LV1』が『鑑定LV2』になりました】
おっふ!
んん?
なんか声が聞こえた気がするけど、
ちょい、頭痛いからタンマ。
待って。
数分プリーズ。
でも・・・
あれ?
頭痛の成果があったのか、鑑定がレベルアップしたっぽい。
神の声が聞こえたから。
まじなのか?
まじ?
まじですか?
一定の熟練度って・・・
確かに一気にスキル使った感はあるけど、修行しちゃった?
まぁ、この際なんでもいいや。
レベルアップは良い事だろう。
少しは鑑定の性能をあがっているはず。
ならば、やることは一つ。
今度は自分だけを意識して。
いざ!
『鑑定』
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種族 :ヴァンパイアエッグ
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おっしゃああああああああ!
イェーイ!
ウエェェェェエイイイイイイ!
『生物』じゃなくなったよ。
なんかそれっぽい名前が出たよ。
とっても嬉しい。
名前が出ただけで嬉しい達成感。
バンザーイ。
んん?
あれ?
でも待てよ。
ヴァンパイアエッグ?
それが俺だって。
えええ?
俺、人間じゃないの?
てっきりと手と足があるからそう思ったんだけど・・・
確かに人にしては美しすぎるかも、だけど・・・
うーん。
んん?
どうでしょう。
全然分かりませんがな。
いきなり言われましても。
ヴァンパイアって事は、あの血を吸う吸血鬼なんだよね。
エッグついてるけど。
そもそも吸血鬼って哺乳類だから卵でいいのか?
いやいや、哺乳類ってわけでもないか。
伝説上の生物だからね。
実際に学者さんが分類したわけじゃないし。
それなら卵でもおかしくないかも。
現に、俺が卵から生まれてるわけだし。
てかてか。
まさか・・・・
これあれじゃないの。
ネット小説とかで有名な異世界転生では?
貴族とか、勇者とか、魔法使いに転生して、魔王を倒すあれでは。
最近では、ゴブリンやエルフなどの人外転生もあったはず。
でも待て。
確かああいうのは・・・
異世界転生する前に神様にチート能力貰っていたはず。
その能力で快適異世界生活送るんじゃ。
俺、何も持っていないような気がするんですが・・・・
気のせいでしょうか?
気のせいでしょうか?
大事な事なので二回言いました。
「キャンキャン」
「ガルルルルルゥゥゥ!」
パクッ
「キュイーーン」
あっ。
マタマタ一匹食べられた!
ガブっとやられましたよ。
卵から出てきた子犬っぽいのが、グシャってなった。
デカイ野良犬の口が血まみれ。
ここ、本格的にヤバイのではないでしょうか?
生命の危機では。
とっとと逃げよう。
うん、すぐにそうしよう。
逃げるが価値よ!
さらば!
ドテッ。
ああああああぁぁぁぁあー。
うぬあああああああああああ!
そうだった。
そうだでした。
一瞬忘れていたけど、俺、歩けないんだ。
エッグというか、生まれたばかりのベイビーだから二足歩行とか無理。
イヤイヤイヤ。
ベイビーですらない卵状態で修羅場って、スパルタ過ぎ。
だが、とにかく逃げよう。
そうするしかない。
ならば、選択肢は3つ。
転がる
ハイハイ ←こっち
精神力で歩く
地面が凸凹してるし、ここ平面だし、障害物多いし。
転がるじゃ目が回って絶対に生き残れない。
俺の精神は肉体を凌駕していないだろうから、いきなり歩くのは無理。
なので、ハイハイ一択です。
では、出発!
ササッ ハイハイ ササッ ハイハイ
俺は卵の脇を全力でハイハイした。
ヴァンパイアさんはハイハイするのです。