19話 川&塩作り
川につくと、アドは絶賛水浴び中。
バシャバシャ
水がこちらにまで飛んでくる。
気持ちよさそうにはしゃいでいる。
俺の膝までの浅瀬で、水は透き通っており、光が反射してキラキラ。
まさか、ダンジョン内に川があるとはな・・・・
地下水的なものだろうか。
俺は久しぶりというか、こちらで生まれて初めて水浴びをする。
心が洗われる気分だ。
ヴァンパイアなのであまり汚れがつかない体質のようだが、水浴びはいい。
しかしふと思った。
この水は飲めるのだろうか?
『毒耐性』『食中毒耐性』持ちの俺なら問題はないかもしれないが・・・
あの方の出番ですね。
鑑定さん、お願いします。
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その他 :川
備考 :奇麗な清流。純度は高い。飲める。
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飲めるそうです。
では、手で水をすくって。
ゴクリ
くぅうううー。
冷たい水が喉を通っていく。
ヒガン・フラワージュースとは違う美味しさ。
やはり水は美味しいな。
甘みはないが清清しさがある。
生命の源は伊達じゃない。
「ワンワン」
バシャッ ペチペチ ペチペチ
おっ。
アドが水面をはじくと、魚が岸に飛ばされた。
やりますね、アド。
魚を取るのは得意なようだ。
魚とり名人アド。
クマみたいな手つきで魚を取るイヌ?だ。
俺が岸で日向ぼっこしていると・・・
アドが魚を加えて持ってくる。
クイクイ
「ありがとう」
「ワンワン」
魚を受け取り観察。
まんま川魚って感じだな。
見て種別が分かるほど詳しくないからな、俺は。
スーパーでしか生魚はみたことないから。多分。
では、またしてもお願いします。
鑑定さん。
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種別 :アユユ
備考 :川に生息する魚。食用魚。石についた藻類を食べる。
幼魚のうちは湖や海で育ち、大きくなると川を上る。
成魚は30cn程になる。塩焼きが人気。
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これは・・・アユですね。
日本の食卓で御馴染みの。
ジュルリ
くぅうううー。
鑑定文みているだけでお腹が減ってきた。
焼くのは出来るだろうとして、この世界に塩はあるのだろうか?
今この場所はダンジョンの50層だから、多分地下だろう。
なら川の水は地下水か・・・
この世界が日本と同じ風な仕組みなら。
『雨→地下水・川→海→雨』のサイクルで水が移動しているはず。
塩は元々地表にあったものが水に解けたわけだから・・・
この地下水にも塩分はあるかもしれない。
水を持って帰れば塩の作成も可能か・・・
よし!
やってみよう。
確か、エル爺さんから貰ったアイテムボックスの中に容器が合ったはず。
おっ。
あったあった。
チャプン チャポン
この容器に水を入れて採取終了。
なるべく多くの水をとっておく。
アイテムボックスは重さも感じないからマジ便利。
さてさて。
水浴びもしたし、魚も手に入った。
家に戻るかな。
「アド、行くぞ」
「ワンワン」
クイクイ
頭を下げるアドの背中に乗、家に帰った。
家に帰ってエル爺に塩について聞くと。
「塩?あれは高級食品じゃからのう・・・中々手に入らんじゃろ」
とりあえず、塩が存在している事が確認できてよかった。
しかし、高級食品なのか・・・
あまりとれないのかもしれない。
「エル爺さん、何故高級なのですか?」
「塩の原料である岩塩がある地域が限られているからじゃ。
大抵強い魔物がうじゃうじゃしているからのう。経費がかかりすぎるのじゃ」
あれ?海の自らは取れないのだろうか?
日本では海水から蒸発させてとっていたと聞くが。
「岩塩ではない方法。海水からは取っていないのですか?」
「取れる事は取れるが、物凄く微量じゃ。それに何より海水の塩がまずいのじゃ。人気はないぞ」
ほーう。
この世界の塩は日本とは僅かに違うのかもしれない。
「近くの川から水をとってきたので、この水を蒸発させて塩をとりたいのですが。
火が出るものはありますか?」
「この川の水か・・・そういえば蒸発させた事はないのう。お主は面白い事をするんじゃの・・・
しかしワシは炎魔法が使えるからのう。魔道具は・・・どこかにあったきが」
エル爺さんは自分のアイテムボックスをさぐり。
「おっ、これじゃこれ。炎のブレスレット。
魔力さえあれば、誰でも焚き火の火ぐらいは出せる優れものじゃ。
こいつを使えば良い。腕につければ、どう使えばいいかなんとなく分かるじゃろう」
「ありがとうございます」
俺はブレスレットを受け取り、家の前に戻る。
エル爺さんから借りたさらしと容器。
川の水をさらしの上から容器に流し込み、ゴミを取り除く。
何回かろ過して奇麗な水に。
次に、川の水が入った容器を網の上に置き、下に枯れ木を集める。
炎のブレスレットを右腕につけると。
おっ。
頭の中にイメージというか、どう念じればいいか浮かんでくる。
右手を枯れ木に向けて、魔力を炎のブレスレットに流すと。
ボワッ
炎がついた。
ミシミシ
枯れ木が燃え出す。
その様子をアドと一緒に見守る。
暫くすると水がにごり始めるが、これは塩ではないので放っておく。
容器の底に出来た塩をさらにさらしに通してろ過する。
再度容器に戻して蒸発させて、結晶化したら終了。
はい!
できました!
塩です。
冷ましてから、指ですくって食べる。
むむ!
しょっぱい。
しかも何故か甘いぞ、この塩。
めちゃくちゃ美味い。
通常の塩と違うのかもしれない。
こういう時は、あの方の出番です。
お願いします、鑑定さん。
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その他 :アリエスの塩
備考 :アリエスの大迷宮でのみとれる塩。具体的な場所は不明。
甘くさと塩味を融合した希少種。知る人ぞ知る高級品。
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な、なんやて・・・・
凄いものつくってしまった感が。
場所不明って・・・
ここの川、50層の川水でとれちゃいましたが。
これを外で売れば、メチャクチャ儲かるのでは?
イカンイカン。
目が小判になりかけた。
今は料理中だった。
では塩も出来た事だし、アユユの塩焼きを開始しますか。