14話 賢者の弟子になりました
バタバタッ
数秒後に戻ってくるエル爺さん。
彼の腕には一冊の本。
それに小さな布袋。
「これは?」
俺が本を指差すと。
「魔物図鑑じゃ。出合った魔物を自動的に記録する事ができる。
是非、世界中の魔物をコンプリートしてほしいのじゃ。
お主ならそれも夢ではなかろう。魔物マスターを目指すのじゃ。
ワシはこの階層からでれない分、よろしく頼むぞ」
えっ。
お爺さん、今なんて。
さらっと凄い事を言ったと思う。
「エル爺、この階層から出れないとは?」
「色々あって物理的に出れないのじゃ。結界みたいなものじゃな」
「そ、そうなんですか」
「後、こっちの袋はアイテムボックスじゃ。
ある程度の大きさのものまでなら何でも入るし、容量も気にしなくて良いじゃろう」
って、これ。
超絶便利アイテムじゃん。
きたああああああ!
よっしゃああああああ!
見た感じアイテムボックスじゃないかと思っていたけど・・・
まさか本物だったとは。
鑑定に次ぐ便利用品だと思いますよ。
うんうん。
エル爺に感謝。
肉の保存場所とか、血と骨の保存場所に困ってたのよ。
「ありがとうございます」
「いいのじゃ。まだいくつか余りもあるのでな。
ワシはこの家で魔物の研究をしているので、定期的に魔物図鑑を見せて欲しいのじゃ。
きっと研究の役に立つし、褒章を出すのじゃ」
「分かりました」
俺はアイテムボックスを腰につけ、その中に魔物図鑑をいれた。
四次元ポケットのように快適だ。
「お主には才能をビシビシ感じるからのう。
久しぶりに血が騒ぐのじゃ。
あやつ・・・昔の勇者を思い出すのじゃ」
???
勇者だって?
この世界にも勇者がいるのか。
となれば魔王もか・・・
どんどんゲームっぽくなってきたな。
「エル爺さん、勇者と知り合いなのですか?」
「そうじゃ。勇者といっても先代勇者じゃがのう。一緒に旅をして周った中じゃ。
ワシは賢者ポジションで、当時の魔王は強かったのう・・・」
うんうんと何かを回想しているエル爺さん。
尚、勇者パーティーの一員だったもよう。
イヤイヤイヤ。
エル爺さんとか気軽に呼んじゃってるけど、いいのかしら。
この世界ではすっごい重鎮のような気が。
しかし納得。
どうりでこんな所に住めるわけだ、ダンジョンの中に。
50層の魔物を追い払うとか、並じゃできないはず。
あっ。
そうだそうだ。
大事な事を聞かなければ。
周りの敵が強いのであれば、なんとか適応レベルでレべリングできるようにしたいから。
「ダンジョン内に人がワープできる、転移ストーンやゲートはないのですか?
話を聞くとこの付近の階層の敵は強いようなので・・・ちょうどいいぐらいの階層に行きたいのですが」
「転移ストーンはダンジョン内では使えないのじゃ。
ゲートはこの層にもあったのじゃが・・・ワシが壊してしまったからのう。
一番近い階層になると、40層かのう。まだ生きてるかは分からないが。
それが壊れていれば、30層、20層、15層、10層。一桁層にはどこにもあるはずじゃ」
やはりあったか転移ゲート。
でも、なんでエル爺さん壊してんのよ・・・
本当になんで?
「40層ですか・・・」
10層下るのは中々難しそうな気が。
エル爺さんの話を聞く限り魔物が強そう。
「ぬ、確か60層にもあったかも知れぬ。いや、あれは壊れていたかのう・・・
転移ゲートは作るのも大変じゃが、維持するのも困難じゃからのう。
魔物から守り、メンテナンスも持続的な魔力の供給も必要なのじゃ」
ほほう。
だからあまり数がないのか。
上級冒険者は数が少なそうので、ゲートを守るために人を貼り付けて置けないのだろう。
しかし60層にゲートがあっても、やはり狙うのは40層になるだろう。
下にもぐればもぐるほど敵が強くなるのでは。
「しかし大丈夫じゃ、お主なら大丈夫じゃろう。
コツコツレベル上げをしていけば良いのじゃ。
ワシもコツコツ強くなったからのう」
「そ、そうですね」
「大丈夫。ワシがビシビシ鍛えてやるのじゃ。安心してよい。
昔は賢者様と言われて、何人かの弟子も育てたからのう」
お、おうぅ。
まさかエル爺からのアプローチ。
賢者の弟子になるのか、俺。
実は今の実力では厳しそうな気もしていたので、修行をお願いしようかとも思っていたところ。
師匠が元勇者パーティーの賢者様ならいうことなし。
「お願いします」
「任せるのじゃ。必ずや、一流の魔術師になれるであろう。今から楽しみじゃ。ふふふ」
ヴァンパイアさんの俺は、賢者の弟子になりました。
息抜きリフレッシュ新シリーズ始めました。
↓
『勇者パーティーに私が必要ないって、それホントですか?』
http://ncode.syosetu.com/n7348dj/
※本作品は同じペースで投稿しますので、ご安心下さい。