114話 その後5
スタスタ スタスタ
ヴァルゴは歩いていた。
ダンジョンの天井を歩く。
だが、いっこうに何も現れない。
透明な床が続くのみ。
(何もないかー。何もない・・・)
マナも体力も尽きかけていた。
もう、歩くだけでも難しくなっていた。
スタンッ
ヴァルゴは歩みを止める。
いやっ、止めざる終えなかったのだ。
膝に力が入らず・・・前のめりに倒れてしまった。
バサッ
目の前に見えるのは・・・ダンジョン内の姿。
透明な床越しに見える折れた巨大樹。
そういえば・・・
あそこでうさぎにあったのだっけ。
天井にマナがあるといっていたうさぎに。
だが、今俺はダンジョンの天井にきている。
しかし、マナはない。
あれは嘘だったのかもしれない。
不思議なうさぎがいうことだから・・・真実かどうかは分からない。
一体、何故そんな話を信じてしまったのか。
今となっては分からない。
(ふっ・・・・意識がゆらいできた。歩みを止めたことで、急に眠気も襲ってきた。
一度眠ってしまえば、もう・・・意識も回復しないかもしれない)
瞼が重くなり、視界が小さくなっていく。
暗くなっていく世界。
閉じている視界。
トントン トントン
耳には幻聴が聞こえてきたのかもしれない。
ここには俺しかいなかった。
ずっと見渡せる空間に誰の姿も見えなかったのだ。
足音など聞こえるはずがない。
トントン トントン
幻聴は止まらない。
ははっ。
もう、ダメなのかもしれない。
視界にも何か人の姿?がおぼろげに見えてきた。
こちらに近づいてくる人影。
あれは・・・何なのか・・・
揺れている人影。
消えていく意識の中で声が聞こえる気がした。
『ここにくる人間がいるとは・・・』
◆
「zzzzzzzzzzz」
「zzzzzzzzzzzzz」
「zzzzzzzzzzzzzzzzzzz」
部屋の中。
皆が寝ている。
エンさんもチコも、アイシャも気持ちよさそうに寝ている。
俺はベッドの上でゴロゴロしていたのはいいが・・・中々寝付けずにいた。
何故か眠れないのだ。
不思議と頭はさえ、胸はドキドキしていた。
ゴロゴロゴロ ゴロゴロゴロ
うーん。
やっぱり寝れない。
落ち着かない。
ゴロゴロゴロ ゴロゴロゴロ
バサッ
俺は布団から出て、外に出ることにした。
木の実の上に乗り、ユラユラと揺れる。
泡だった気持ちが静まっていく。
揺りかごにような効果だ。
ユラユラ ユラユラ
スタスタ スタスタ
うん?
足音が聞こえた。
その方向を見ると・・・
あっ。
チコが温泉から戻ってきたようだ。
ほてったのか、ポカポカと湯気を漂わせている。
ご機嫌なチコだ。
「にゃ、にゃーん。んにゃ、トクガワにゃー」
「温泉気持ちよかったか?」
「にゃんだふる。良かったにゃー。眠くなるほどにゃー」
「そうかー。じゃあ、ベッドで寝るがいい」
「ンにゃ?トクガワは中で寝ないのにゃ?」
「ここの方が寝やすいんだ」
「にゃーん。トクガワも分かってきたにゃー」
何を?とは聞かないでおこう。
「おう、お休みー」
「にゃーん、にゃっ」
スタッ ピョーン
チコは木の実の上でぐたーっとしている。
「あちしもここで寝るにゃー」
あらららー。
チコもおねんねか。
「危ないぞ。さっきみたい転がって大変なことになるかもしれない」
「大丈夫にゃー。今度は転がらないように固定するにゃー」
ザクッ ザクッ ザクッ
お、おう・・・
チコがクナイのようなモノを地面に投げると・・・
ビリビリビリ ビリビリビリ
投げられたクナイが互いに電撃で結ばれた。
どこかでみたことがあるような気配。
「チコ、それは・・・?」
「自作の魔導具にゃー」
あーそういえば。
チコは色々作れるんだっけ。
出会った時も、魔導く具の罠を張っていたし。
「もしかして・・・ヴァルゴの槍の真似か」
「そうにゃー。槍の結界をみて思いついたにゃー。前から考え付いていた魔導具を改造したのにゃー」
「そ、そうか、それでこれはなんなんだ?」
「結界みたいなモノにゃ。このクナイの電撃の輪の中からは簡単に出れないようになっているにゃ」
「つまり、木の実が転がってもこの枠から出ないと」
「そうにゃー」
「中々便利なものだなー」
「にゃー。トクガワにもやってあげるにゃー」
ザクッ ザクッ ザクッ
クナイが地面に刺さり、俺の周りも電撃で囲まれる。
これで俺が寝ていても、寝ぼけて木の実で転がっていくことはないだろう。
まぁ、枠を出たらどうなるのか?電撃を受けるのかは分からないが。
「さんきゅっ」
「助けてくれた礼にゃー」
ユサユサ ユサユサ
こうして俺とチコは、木の実に乗りながら寝たのだった。
zzzzzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzzz
zzzzzzzzzzzzzzz




