109話 天と地6
ヴァルゴのマナはつきかけていた。
雷獣との精霊化、それに伴う戦闘で大幅にマナを消費したのだ。
おまけに戦闘でのダメージが大きい。
エンシェントドラゴンの攻撃は苛烈を極めたのだった。
特殊な気、龍気をまとった攻撃は精霊体関係なくダメージをあたえてきた。
(まさかな、あのドラゴンの強さは想定外だった。
雷獣と精霊化すれば勝てるものだと思っていたが・・・それは甘い考えだった。
こちらのマナが先に尽きることは明白だった)
ヴァルゴが手を伸ばすと・・・そこには槍。
「エレクトニックランス」に触れる。
もしもの時のために、この槍を地面に刺して準備していたのだ。
ドラゴン、古代種、精霊等と戦うとなると、何が起こるかわからなかった。
ここまでの強さを発揮されるとは思っていなかったが、準備をした甲斐があった。
これは一か八かの賭けだ。
この賭けに出なければ、俺の負けは確定する。
ヴァルゴは上を見上げる。
巨大樹の上空には、大量の雲が浮かんでる。
槍を使って巨大樹内に電撃を流し続け、内部の液体を蒸発させたのだ。
蒸発して生成された水蒸気が上に上り、集まって雲を形成しているのだ。
(よくできてる。それに・・・想定外だったが、ドラゴンとの戦闘でもかなりの水蒸気が発生したのだろう。
思った以上の雲だ。後は、仕掛けを発動させるだけだ)
ヴァルゴは槍に触れる。
そして電流を操作する。
そう。
ただ巨大樹に電撃を流していたわけではないのだ。
巧妙に操作して、巨大樹表面の電位を操作していた。
巨大樹の表面にプラスの電位がくるように時間をかけて操作していた。
今。
その準備は整った。
少し後押しすれば、蓋がハズレ、地上はプラスの電位で溢れ出る。
上空には大量の雲。
急速に出来た雲は、内部では水蒸気が暴れまわっており、雲の下部にはマイナス電位が溜まっている。
地上。
空に一番近い地上。
折れた巨大樹の表面には、プラスの電位がたまっている。
こうなれば起こる現象は決まっていた。
上空のマイナスと、地上のプラス。
マイナスからプラス電気は流れる、いや、引き合うのだ。
少しの均衡が崩れれば、膨大なエネルギーの奔流、「雷」が発生する。
ヴァルゴは槍から流す電流を強くする。
巨大樹の表面にプラス電位を沸き立たせる。
「正雷撃っ!」
ヴァルゴが槍を操作し、プラス電位を解き放った瞬間。
ピカンッ!
ゴロゴロゴロッ!
ズドドドドオドドオドドオドドオドオオオオオオオオオオオオオオッ!
地上のプラス電位にむけて、上空のマイナスが移動した。
つまり、巨大な雷がヴァルゴめがけて落ちてきた。
その瞬間。
ヴァルゴは自身を再度精霊化する。
全身を電撃として、雷と一体化となったヴァルゴ。
巨大なエネルギー。
自身が壊れそうになる程のエネルギーの塊に包まれる。
(ぐっ、ま、まだ消えるわけにはいかない・・・・・このまま・・・このままだ。
この状態で・・・・・上に・・・・いくっ)
ビリビリビリ シューン
ヴァルゴは意識を失いつつも、ダンジョンの天井と地上とを繋いだ電撃の道を。
一瞬で駆け上がっていったのだった。
そう。
ヴァルゴはこれを狙っていた。
電撃の中ならヴァルゴは移動できる。
ならばっ、ダンジョンの上、うさぎのいうマナの源泉に近づくには、雷と一体化すればよかったのだ。
雷が落ちた後。
巨大樹の表面には、ヴァルゴの姿はなかった。
■その他
止まっていましたが、週一更新始めました
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『7人の聖女召喚~料理スキルLV80の俺は、おねえちゃんと世界最強になる』
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