107話 天と地4
「この姿を見せるのは久しぶりだな」
巨大な黄金の獣のオーラをまとったヴァルゴが、エンさんと向かい合っている。
巨大なドラゴンと巨大な獣。
怪獣大決戦のような姿だ。
「ぬっ、久しぶりに骨がありそうな相手よのー」
「その姿、ただのドラゴンではないんだろ」
「そうよ、我はエンシェントグリーンドラゴンぞ」
「あーん、まさかそのような敵とはな・・・精霊を狩りにきたが・・・お前でもいいな」
「ぬっ、まさか我に勝つ気か?」
「そのつもりだ。電撃を鱗に刻んでやろう」
ビリビリビリビリビリビリイイイイイイイッ ズドンッ!
これまでとは比較にならない電撃の塊が放たれる。
「た、退避ー」
「でしゅー」
「逃げるにゃー」
「くっ」
俺たちは全員で二人から離れた。
近くにいれば、巨大なエンさんとヴァルゴの戦いに巻き込まれてしまうからだ。
「甘いわい」
ボワーッ
エンさんが口から炎を吐くと・・・
ドっカカアアアアアアアアアアアアアアアアアッン!
電撃が炎に触れて爆発する。
「雷弾」
ビリッ ビリッ ヒューン ヒューン
巨大な雷の弾が、何発もエンさんに向かって放たれる。
「ほーう。色々出せるのう」
ボワーッ
エンさんは再び炎をはいて防衛。
ドッカカアアアアアアアアアアアアアアアアアッン!
電撃の弾が爆発していく。
「あーん。これならどうかな」
ボワーン シャーザァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!
電撃の塊を空中に吐き出したと思ったら、それがシャワーのように降り注いできた。
巨体同士の戦いの中。
「危ねー」
「でしゅでしゅー」
「にゃにゃにゃんだー」
「皆さん、避難を」
俺たちはとっさに近くにあった影、巨大樹のコブに隠れてやりすごす。
だが、エンさんとヴァルゴの戦いは今も続いている。
ドカアアアアアアアアンッ!
ズドドドドドドオオオオオオオオッ!
ズドカアアアアアアアアンッ!
グドドドドドドオオオオオオオオッ!
巨大なモノどうしの戦いで、巨大樹の地形はドンドン変わっていく。
いつまでこの巨大樹がもつかも分からない。
ビリビリビリー ズドドドドドドドドドッ!
ボワッ ボワッ ボワッーーーーーーンッ!
エンさんの炎。
ヴァルゴの雷がぶつかり合い、大きな爆発が連発する。
俺たちはその光景を眺める。
熱風が飛んでくる。
「激しいな」
「エン頑張るでしゅー」
「にゃんにゃ、これは夢にゃ?」
「ヴァルゴは雷獣を使いこなしているようですね・・」
苦々しい顔で戦いを見守っているアイシャ。
彼女は何か知っているのかもしれない。
「アイシャ、あのヴァルゴが纏っているものを知っているのか?」
「はい。前にも話したかもしれませんが、アレはうちの家から盗んだ精霊です」
「アイシャの家のにゃー?」
「はい、しかし・・・雷獣を。
まさかうちの家のもの以外が、アレほど使いこなせるとは思ってもいませんでした」
「んにゃ、聞いたことあるにゃー。魔導十家に伝わる精霊を使える人は滅多にいないと」
「そうです。うちの家のモノでも、実際に精霊と契約できるのは極少数・・・適正がなければ出来ません。
それに力を十分に発揮できない場合も多い。
しかも秘中の契約が必要なのです。ヴァルゴがどうやってそこを欺いたかは知りませんが・・・」
アイシャは握りこぶしをつくっている。
本来はアイシャの家のモノで、容赦のない力を誇示されているからかもしれない。
「アイシャ、あの獣を倒す方法はあるのか?」
「それは・・・・あそこまで精霊化したものを倒すには、同じように精霊をまとったもので戦うのが通常です」
「出来ない場合は?」
「逃げることです。精霊化は膨大なエネルギーを使いますので長くは持ちません。
今、エン殿が戦っているので、これを維持できれば、相手も疲弊します。そこがチャンスです」
見たところ・・・
エンさんとヴァルゴの力は拮抗している。
このまま待つのが最善なのかもしれない。
しかし、あのドラゴンモードのエンさんと同等とは・・・精霊はかなりの強さを誇るのだろう。
「にゃら、このまま待機にゃー」
「でしゅねー」
「そうだな。戦況を見守ろう」
「はい。それが最善でしょう。しかし、やはり気になりますね。雷獣とどうやって契約したのか・・・
それに、長引けば不利なことはヴァルゴも分かっているはずですが、逃げる気配がありません」
確かに・・・
エンさんとヴァルゴは戦い続けている。
ヴァルゴには、一向に逃げる気配はない。
「ヴァルゴに、何か狙いがあるのかもしれないな」
「ですね。私達はそれは見つけなければ」
「でしゅかー。槍を引っこ抜くでしゅか?」
「槍にゃー?」
「アレでしゅー?」
アドが肉球を向けた先には・・・地面につき刺さった槍があった。
前に巨大樹内でみた槍だ。
コブの上に突き刺さったまま、電撃を発している。
その周りには水蒸気がまっている。




