1話 鑑定スキルを入手しました
ぬうぉおおおおお!
驚いて寄声を上げてしまったけれど、自分の声が反射してくる。
それぐらい狭い場所に閉じ込められているようだ。
ぬ?
うーん。
ここはどこだ?
目を開けても、真っ暗で何も見えやしない。
目を閉じても空けていても変わらないなんて。
ゴツン
あ痛っ!
イタタタタッ。
体を伸ばそうとしたら頭うった。
どうなってるの?
俺、今どこにいるのよ?
えーと、確か昨日は・・・
アレ?アレ?
何も思い出せやしない。
イヤイヤイヤ。
本当に何も思い出せないんですよ。
なんだ俺?
もしかして誘拐とかされちゃったの?
身代金とか要求されちゃう?
ビデオカメラの前で命乞いですか?
待て待て待て。
ちょっとタンマ。
焦らない、焦らない。
ひとまず落ち着こう。
体に痛みとかはないし、犯人らしき人もいない。
よーし、とりあえずセーフ。
セーフ。
もちつけ、俺。
イヤイヤイヤ、落ちつけだった。
さてさて。
とにかくまずは視界を確保しないとな。
縮こまっていてすっごく窮屈だから、手と足を伸ばせるようにしたい。
体が丸まっているようで、ギシギシするのですよ。
狭いとこはあまる好きじゃないのです。
押入れの生活とは無理ですから。
ボシュ ボシュ ボシュ ボシュ
ふぅ~。
俺を包み込んでいる殻の様なものを突き破る。
なんとか手足は出せた。
外の空気に触れて気持ちいい~。
爽やかなクール。
伸び伸び出来るのはいいね。
ボシュ ボシュ
ついでに、顔の前の殻を破る。
おっふ!
うわっ!なんか光が差し込んできた。
弱い光だけど目がパチパチする。
立ちくらみに似た感覚。
でも、ちょっと回りが見えてきたー。
周りには植物っぽいものが見えるけど、空は見えない。
洞窟の中とかかも。
ジメジメしてるし。
とりあえず、車の中や怪しげな事務所の中でなくてよかった。
誘拐の線は薄いのかもしれない。
それならなんだ?
なんでしょう?
うーん。
よし。
この調子で周囲の状況を確認していこうかな。
「キャンキャン」
「ガルルルルルゥゥゥ!」
パクッ
「キュイーーン」
クチャクチャ クチュクチュ
んん?
何か物騒な音が聞こえたんですけど・・・
その・・・悲鳴と怒号?
野獣の様な叫び声。
死んだような弱々しい声。
何かを食べているようなクチュクチュ音。
ボシュ ボシュ ボシュ
視界を広げるために目の前の殻をさらにやぶると。
ゲッ!!!!
ウオッホイイイイイイ!
お、おおおおい・・・
なに見せてくれとるんじゃ!
でっかい野良犬がでっかい卵を食べてるよ!
中にいる子犬?っぽいのや、よく分からない生物食べてるから。
グロイ・・・・
「キャンキャン」
「ガルルルルルゥゥゥ!」
パクッ
「キュイーーン」
あっ、一匹食べられた。
てか、あの犬デカスギ!
超デカイじゃん!
最早犬じゃないでしょ。
サイ並みの大きさあるから。
あんなの家で飼えないし、首輪も付けられない。
絶対入店拒否。
○AONとか、総合ショッピングセンターに連れて行ったら死人出るレベル。
最早ゲームとかにでてくる魔物。
人食べるサイズだから。
「ガルルルルルルルゥゥゥゥ!」
ヤバっ!
ヤバシ!
巨大野良犬?の一匹と目があった。
大丈夫かなー。
すっごい顔で睨まれてるですけど。
でも、あの生物はなんぞ?
なんぞなんぞ?
【現状のスキルポイントは50です。】
【スキルポイントを50消費し、鑑定スキルを取得しますか?】
なんだなんだ?
なになに?
ん?
頭の中に声が聞こえてきた。
気のせいか?
多分そうだな。
【スキルポイントを消費し、鑑定スキルを取得しますか?】
うおっ!
うそっ!
どうやら間違えではないようだ。
二回も聞こえるんだもん。
これはマジですね。
鑑定スキルってあれだよね。
ゲームでよくでてくる、物の正体や、人物のステータスやレベルが見えるやつ。
異世界に行ったら何よりまず欲しい能力。
なら、答えは決まってる。
もち、もちさー。
絶対に取得する。
『取得するぜ、そのスキル』
とりあえず心の中で返事をすると。
【鑑定LV1を取得しました。】
やりぃー。
イェーイ。
パチパチ。
とりあえず、鑑定をゲットしたらしい。
それでは、先程からこちらをガンつけている野良犬?に使ってみよう。
あれ?
でもどうやって使うんだ。
とりあえず念じてみるかな。
『鑑定』
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種族 :生物
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おっふ!
顔の前にウィンドウがでてきた。
ゲームみたいに文字がみえる。
みえるけど・・・みえるどけ・・・・『生物』それだけ。
さすがに俺でもわかりますよ、目の前の犬が生物な事は。
もう一度やってみよう。
『鑑定』
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族 :生物
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さらにもう一度。
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種族 :生物
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もう一回。
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種族 :生物
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
もう一回。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族 :生物
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ええい、もう一回。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
種族 :生物
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だめだ。
この鑑定使えねー。
生物って漠然としすぎでしょ。
だめだめ鑑定さんだったようです。
いやいや、待てよ。
あの犬が特別なのかも。
『生物』という、種族名である可能性もある。
では、違うものを・・・
いってみますか!
よし!
近くにある卵を見てみよう。
『鑑定』
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種族 :生物
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
くぅ~、おい!
やはり変わらなかった。
不変の「生物」表記。
まぁ、知ってたけどけどね。
一応確認ですよ。
「キャンキャン」
「ガルルルルルゥゥゥ!」
パクッ
「キュイーーン」
あっ、又、一匹食べられた。
そうだよ。
そうでした。
こんな冷静に鑑定している場合じゃない。
これ、狙われてるでしょ、俺。
ワイルドワンワンに。
野獣先輩に食べられちゃいますよ、俺。
早く逃げねば!
一刻も早くここをさらなければ。
何個か卵もあるようだし。
多分大丈夫。
彼らが犠牲になって、野獣たちは追ってこないはず。
さらば!
どうも、赤ポストです。
連載開始です。