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かくれんぼ

 白生は家に帰り着くと、冷え切った室内を温めようと薪をくべ、台所で湯を沸かし始めた。それから小さく切った根菜と肉をいれて味をつけ、最後に同じように小さくちぎった餅を投入。あとは煮るだけだ。

 外の様子を見ると、雪が降ったり止んだりで、なかなかに不安定になってきた。


「そろそろ呼びに行けばちょうどいいか……」


 白生は鍋の火を弱めると、上着に袖を通しながら外に出た。

 そのときだった。

 この森全体を一気に通り抜けるような突風が吹いた。辺りの木々が一斉にざわめき、枝の雪を振り落とした。


「うわ……急ごう」



 白生は、今日すでに二回通った道を急ぎめで歩いて行った。ひらけた雪原を見まわす。


「あれ、おかしいな」


 白空が遊んでいたと思われる、踏みしめられた雪や雪玉はあるが、肝心の白空が見当たらない。


「おーい、白空、どこにいるんだー?」


 辺りを見回しながら、何か動くものはないかと目を凝らす。すると、ここから離れるように、更に山奥へと続く足跡を見つけた。この大きさ、歩幅からして、白空のものである可能性は非常に高い。


「まったく……動くなと言ったのに」


 白空はそういう言いつけをわざわざ破るような子ではないと思っていた。というよりも、言われたことを守らない選択肢があること自体、分かっていないかもしれない。


「しかたないか……」


 白生は足跡を辿って奥深くへと進んだ。まばらに生えた木には少しの雪が白い線を描いている。数分歩くと、目の前の地面が突然変わり、傾斜の急なところに出た。

 小さな足跡は、そこでぷっつりと途切れていた。



 白生は自分の体がキュッと寒くなるのを感じた。

 もし、白空がここに落ちていたら……

 そのような跡はこの雪上に残されてはいないが、幾度となく吹きつけるこの北風に消されてしまっただけだとしたら、どうしよう。


「白空ーいないかー? 居るなら教えてくれーー」


 そう叫んだ声に返事はなく、雪に吸い込まれてしまった。



 まあ、返事は期待していなかったが。白空と暮らし始めて一年弱、出会った頃は、見かけの年齢によらず、声を発することすらままならなかった。もちろんそれは、彼女がそれまでいた環境が原因で、あの出来事のあと私と生活するようになって、徐々によくなっている所なのだから。

 白生はもう一度、家に向かって走りだした。



 家に着くと、本棚から分厚い辞書のようなものと、白い紙を取りだした。それからハッと思い出して鍋の火を消してから、元居た雪原へ戻った。


「はあーー」


 白生は息を大きく吐きだして、心を落ち着かせた。


「よし、やるか」


 持ってきた本を両手に掲げ、目を閉じた。


「我探したる場所を示せ――プシュテオ・クエチェルナ」


 古くから伝わる魔法の言葉を諳んじると、ペラペラと本の頁が捲れる音がした。そこに描かれていた陣の上へ、右手で一緒に持っていた一枚の紙を舞い上げると、光を集めていた陣はその効果を発揮した。


「ふう……」


 手元にある紙を見ると、さっき辿りついた急な斜面の場所の方向へ、きらきらと光る線が浮かび上がっていた。

 やはりそちらの方にいるのは間違いないということか。


「とにかく、行くしかないな」


集中力がお墓です。

間に合うように頑張ります…!

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