寄り合い
「今夜だな」
俺は呟いた。そんな俺の言葉に反応したのが茜だ。
「何が今夜なの?」
「ああ、寄り合いさ。近所の猫が集まるんだ。そこでそれぞれ情報交換をするのさ」
茜は何故か嬉しそうに俺に聞いてきた。
「それって私も行ける?」
何でそうなるんだ。お前には関係ない話だろうに。それに、他の男の前には出したくないしな。
「……お前は行かねえ方がいい」
「なんでよ?」
茜は無邪気に聞いてきた。だから可愛すぎるんだって!
「……お前は綺麗過ぎるんだよ」
俺は恥ずかしかったが、なんとか茜に伝えた。しかし茜はそれでも納得していないようだった。どうしても寄り合いに参加したいらしい。
寄り合いに参加させるには、俺が守るしかねえか……。
「……仕方ねえな。絶対しゃべるなよ」
「うん!」
だからその笑顔が危ねえんだよ!少しは自覚してくれ!
そして夜、近所の猫たちがやって来た。みんな俺の子分……というよりは仲間だ。しかし、この辺一帯を取り仕切っているのは俺だ。だからみんなが挨拶に来る。
「虎、変わりはないか」
そんな言葉をかけあっているときに、ある男が気づいた。
「虎、その女は?」
ちっ、目ざといな。
「俺の女だ。手出しすんなよ」
ざわざわとし始めた寄り合いで、比較的年配のじいさんが口を開いた。
「そうか。虎にも女が出来たか。それで子供はいつなんだ?」
茜の前で変なことを言うな!
「他猫の家族計画に口を出すな!」
茜のことはみんなに口止めして、その日の寄り合いは終わった。
つ、疲れた。いつもの情報交換が頭に入ってこなかった……。
しかし、茜は満足そうだった。何故だろう。
茜が猫の集会に参加出来たと喜んでいるとは、虎には想像もつかなかった。