9:魔王ちゃん、再戦にて散る
本日2回目の投稿です
〜北の街、ノースライバックにて〜
「はーっはっは!はーっはっはっは!
久しいな!勇ましき者よ!
魔王シャムノア・シャンメリー自らが貴様らに引導を渡しに参ったぞ!
貴様らの墓標を礎として、混沌たる世界を統べるためにな!
さぁ、恐れよ!そして敬え!
その暗き感情こそ、我の欲する最も甘美な絶望への糧とならん!
そして世界を闇の深淵へと陥れた暁には、
我が百万の軍勢が大陸を我が物顔で闊歩し、
生きとし生ける全ての生命を遍く星の流れに還そうぞ!
天は常闇に支配され、闇が希望を笑い、希望を絶望に染め上げる!
それこそ我のふべしッ!!
な、何をする!?まだ我が喋っているではないか!
く、くそぅ!まだ原稿用紙は8枚残っているというのに!」
〜2分後〜
「わ、わかった!我が悪かった!
すまん謝るから攻撃を止めて欲しい!
もう二度と貴様らの前には現れん!約束しよう!
だから許してくれ!!
……頼む。
チラッ
馬鹿め隙だらけだ!!死ね!!」
〜1分後〜
「よ、よくぞ今の攻撃を躱したな……ケホッ。
上っ面の言葉に騙されない……なかなか見る目はあるようだ!
はぁ、はぁ、ならば我も、少しだけ本気を出そうか!
封印されし邪悪なる精霊を解放させてもらおう!
これを使ったらこの辺りは一面焼け野原!
故郷が消える様を指をくわえて見ているが良いわ!」
〜30秒後〜
「す、すまんかった!ゆ、ゆるして!
え?
ち、違う!今度はガチだから!!
もう100%ガチなやつだから?
何?土下座!?土下座すればいいの!?
隣界では土下座したら何でも許してくれるんだよね?
ごめんなさいねーーー!はい!土下座!!」
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はーい。本日はここ、北の森の隠れ家よりお送りしまーす。
どーもー、カンベエでーす。
四天王は今、自宅療養中でーす。
早速ですが本題に入りまーす。
これほど情けない話しがあるだろうか!
不意打ちを外した上に、敵に土下座までして生き永らえようとした我が主。
もはやこれを魔王と呼んでいいものか。
駄目でしょ!
「うむ、認識を改める必要があるようだな」
俺の転移魔法でなんとか逃げ延びた魔王ちゃん。
今はベッドで治療中だ。
「まず、勇者は我が思っていたよりも少し強い」
今日も相変わらずの上から発言が飛び出る。
俺はもう、心底呆れて何も言えない。
「それを加味しても我の方が総合力では勝っている」
どんな総合力だよ。
まぁ確かに?小物っぽさを数値化できたらNo.1だろうがな!
「じゃー何故あそこまでボロボロに負けたんでしょうねー」
「そうそれだ、何故今回は双方ともに互角の戦いを演じたのか」
ほう、あくまで接戦したという体で話しを進めるのか。
で、なんであんな無様に負けたんだ?
「装備の差、もうこれしかあるまい!」
「地力の差だよ!!」
「おっしゃる通りです……」
相変わらず押し弱ッ!?
なんで大きい声あげたらそんなにすぐ怯むの?
昔何かあったの?
大きい声の奴と何かあったの!?
って昔の事なんて知らんわ!
大事なのは今、この時、この状況!
「この前魔王様言いましたよね?
『あいつらの戦法わかったしぃ〜次はストレート勝ちっしょ〜』
的な事言いましたよね?あの時何をわかってたの?ねえ?」
「い、いや!そんな言い方はしてないだろう!」
「言い方なんてどーーーーでもEーーーじゃん!
今問題なのは魔王様が超が付く程無様な件であって、
んな事どーーーーーでもEーーーーーの!」
「カンベエ、なんかテンションおかしいよ!?」
俺もそう思うが、もう止まらない。
今まで抱え込んでいた憤りは、
まるで大地に押し込められていた溶岩のように溢れ出す。
「あと最初の登場シーンの口上!あれ何!?
ちょっとでも戦闘時間を長く見せる為にわざとやってたよね?
誤魔化されないからね!?
負けた時のための小細工なんかしてるから負けるんだよ!?
最初から気持ちの上で負けてるんだから勝てる訳ないでしょうに!
違う?ねぇ、違う?ん?言ってみ?」
「ぐぬぬ、いや、その、あれも作戦の一貫で」
「土下座も不意打ちも作戦だもんねー、外したけど!」
あ、魔王ちゃん、ちょっと涙目になってきた。
となれば、これ以上の言葉攻めは得策ではない。
男は女に泣かれたら負けなのだ。
「うぅ、というか勇者ちょっと無慈悲すぎではないか?
登場シーンに水を差したり、詠唱中に攻撃したり!
勇者VS魔王ときたらまず、広範囲極大魔法の打ち合い!
肉弾戦メインの戦いは魔王が第二形態になってから!
これぞ様式美!奴らはまるで理解していないんだ!
お前もそう思うだろ?違う?
逆に魔王である私が固く拳を握って『うおおおおおおぉおおお!!!!』
とか声を上げて向かっていく絵面見たいと思う?
なんかそれマヌケじゃない?マヌケだよね!
魔王の半分って英知で出来てるからなー。異種格闘戦はないわー」
お前の半分は威厳で、もう半分は慈愛じゃなかったのか!?
その英知はどっから引っ張ってきて、どこへ行く!?
「とにかく、家で留守番している四天王には報告するからな」
「そ、それだけはやめてお願い!」
いいや、言うね!
このままじゃ駄目になるばっかだ!
決めたぞ!俺は魔王ちゃんを立派な魔王にしてみせる!
駄目魔王は廃業だ!雑魚キャラ脱却計画、スタートだ!
でもそれだと、計画を管理する俺が面倒くさい事をしなきゃならんのだよな。
矯正計画のスケジュールは程々に温くしてやろう。
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・今日の魔王ちゃん
戦闘時間:7分14秒
・魔王ちゃんの軌跡
最短戦闘時間:00分00秒(戦う前に城ごと爆破)
最長戦闘時間:08分59秒(ただし相手は人間の子供)
累計戦闘時間:23分15秒
・本日の必殺技
【闇の精霊の封印解放】
・一度野放しにすれば、周囲一帯を無に帰すまで消えない凶悪な霊を解放するぞ!
・精霊は魔王ちゃんが考えた架空の存在!実際にはそんな技使えないぞ!




