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5:魔王ちゃん、移転する

評価、ブックマークありがとうございます!

とても励みになります!


10/12 

二ヶ所修正、なんとなく違和感のある部分を微調整しました。

展開に大きな変化はありません。

 ここは魔王城跡地郊外、北の森の隠れ家。

 俺は幹部A、改めカンベエという名前になった。

 なんだか軍師っぽい名前だがやってる事は斥候に近い。


「うーん、家狭いし、勇者ムカつくし。

 やっぱ四天王差し向けようかなぁー」


「魔王様、今日は顔合わせだけで活動は明日からだったんじゃ」


「いや、でもベッドだって一つしかないじゃん?

 犬とカンベエは床でいいとしても、他の3人はなぁ」


 斥候どころか扱いは犬に近かった。


「へっ!そういう事なら四天王随一の壊し屋と呼ばれた男!

 破壊大公ボルドフォック様が勇者を血祭りに上げて見せましょう!」


 耳聡く駆けつけたのはパワー担当、猪男のボルドフォックだった。

 というかなんでもう二つ名をもっているんだよコイツ。

 一度も出動してないどころか、さっき結成したばっかなのに。

 誰が呼ぶんだよその別称。

 え?もしかして、俺達か?


「うむ、ではボルドフォックよ!そなたに勇者一行の始末を任せる!」

「はは!」


 恭しく頭を垂れるボルドフォック。

 魔王ちゃんの表情も満足そうだ。


「ぐへへへ!この圧倒的なパワーで目に映る全ての人間を破壊し尽くしてやる!」


 こうして、勇者の滞在している街へ向かい、猪男は旅立った。




「しかし、魔王様。

 一番図体のでかい奴が消えたとはいえ、四天王はまだ3人残っていますよ?」


 そう、未だに寝所の問題が解決した訳ではない。

 いっそ四天王を全員差し向けた方が早かったのではないか。

 と思っていたのだが……。


「ボクは小柄なので、そこのソファーで充分です」


「私は女だし、魔王様と同じふとんで寝てもいいですか?」


「うむ、まあそれでいいだろう」


 色々と考えている間に、寝所の問題も解決したようだ。

 これで俺も安心して眠ることが出来そうだ。


「じゃあ俺は、転移魔法で犬と一緒に自宅に帰りますね!」


「「「え?」」」



 こいつらを家に招き入れる?

 嫌に決まってるだろ!




////////////////////////////////////




「いやぁ、でかいな!お前んち!」


 はい。結局押し切られました。

 チャネルライトさんに頼まれたら断れませんでした。

 男なんてそんなもんです。


 俺の家は北の森より更に北の地にある。

 壮麗にそびえ立つノースリンド連峰の麓、静かな湖畔の一郭だ。

 城とまではいかないが、1人で暮らすには充分過ぎる程立派な家である。

 自慢の家だ。

 俺の憩いの場所だ。


「ボクならこの湖で水棲系の魔物を養殖できますよ?」

「はっはっは!手下は増え過ぎて困るものではない!いいぞ、やれ!」

「やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」


 ここは休暇を使って俺が釣りを楽しむ癒しスポットなのだ。

 何が悲しくてあんなグロい生物の苗床にしなきゃならんのだ。

 というか、ついさっきまで手下が多くて困ってたじゃねぇか!


「素敵な家ですね。お庭もとっても広いです!」


 チャネルライトさんからお褒めの言葉をいただく。

 なんだろう、素直に嬉しい!


「わかります?庭にはこだわりがあるんですよ、例えばそこの」

「いい土だ!ここでなら新種の食人植物を培養しても問題なく育ちます!」

「はっはっは!許可する!」

「するなあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 この庭は季節によってまったく違った色の花を咲かせる俺の楽園!

 納得いく形まで完成させるのに半年費やしたんだ!

 俺は魔境に住みたい訳じゃない!

 NO!魔境、YES!楽園だ!


「頼むから、俺の許可無く、何もしてくれるな!」

「えー、つまらん男だなー、お前」

「ボクの啓発セミナーを受講すれば面白い顔になれますよ!」

「誰がつまらん顔やねん!!」


 駄目だ!こいつらは野放しにすると危険すぎる!

 ガルガントリエが謎の才能を発揮する前に、さっさと家の中に招き入れよう。

 さぁ、おいで犬。

 はぁ、お前が一番大人しいよな。




////////////////////////////////////




「いやぁ、広いな!お前んち!」


 魔王ちゃん一行は客間のソファーでくつろいでいる。

 ここ数日、なんだかんだで色々あった。

 不本意ではあるが、招き入れたからにはお客様だ。

 ゆっくり羽を休めてもらうため、お茶でも入れてみようか。


「みなさん、何か飲みます?」

「我はミルクティー砂糖増し増し」

「ボクはミネラルウォーターで」

「コーヒーがいいです。ブラックで」


 うんうん。何か飲んでいる内はコイツらも暴れたりはしないだろう。

 犬にはミルクでもやろうか。


 俺はキッチンへ向かおうとして、ふと足を止める。

 こいつらから目を離して大丈夫なのだろうか?


「大丈夫ですよ。見てますから」


 チャネルライトさんがニッコリと微笑みながらそう言った。

 すごいな。エスパーかよ。

 まったく。この人には敵わないなぁ。

 そう思いながら俺は客間を後にした。




////////////////////////////////////




 あれから、一週間の時をこの地で過ごした。

 俺とチャネルライトさんが目を光らせていた事もあり、

 何事もなく平穏な毎日が過ぎて行った。


 俺は今、満ち足りていた。

 魔王ちゃんに釣りを教えたり。

 ガルガントリエと犬の散歩に出たり。

 チャネルライトさんと家庭菜園について話したり。

 まるで一週間前の騒動が夢であったかのように穏やかな日々だった。


「ずっとこんな日が続けばいいのにな」


 思わず俺は呟いた。


「ふふふ、そうですね」

「ふん!まぁ、そーゆーのも悪くはないかもな!」

「ボク達、この一週間で絆が深まった気がしますね!」


 反応はまちまちだが、皆も満更ではなさそうだ。


「よし!今晩のメニューはちょっと豪勢にしよう!

 ちょっと遅くなったが四天王の歓迎会だ!!」


「ぬおお!本当かカンベエ!?我は夜が待ち遠しいぞ!」

「私も何か手伝いますね!」

「ボクは飾り付けの準備を!」


 ああ、本当に楽しい。

 久しく忘れていたこの感覚!

 俺は今、真っ当に生きているんだ!!


「よおおおおし、みんな!今夜はパーティーだ!」

「「「おおぉーーー!」」」


 嬉しそうに尻尾を振る犬を抱き上げ、俺は材料の調達に出掛けたのであった。




////////////////////////////////////




 〜どこかの街〜


「くっくっく、俺は四天王の一柱!破壊大公ボルドフォック様だ!!

 人間どもよ!死にたい奴からかかってこい!

 勇者を倒すのは、この!俺だああああああああああぁぁぁ!!!!」




////////////////////////////////////




・今日の魔王ちゃん  至って平和でした。



・魔王ちゃんの軌跡

  最短戦闘時間:00分00秒(戦う前に城ごと爆破)

  最長戦闘時間:08分59秒(ただし相手は人間の子供)

  累計戦闘時間:16分01秒

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