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4:魔王ちゃん、四天王を結成する

 ここは魔王城跡地郊外、北の森の隠れ家。

 俺は幹部A。名前とか、もう別に必要ないかなー。


「同志諸君よ!奴らは外道で邪道で畜生だ!」


 俺1人しかいないのに、突然演説を始めた童女。

 この人が俺の主、魔王ちゃんだ。


「だからこちらも禁じ手を使うぞ!」

「ほう」

「数には数!こちらも四人で事に臨む!」

「いや、そもそも今まで配下が俺一人ってのがおかしかったんだよ!」


 はい。

 実はそうだったんです。

 この残念な魔王に配下は一人しかいません。

 そうだよ、俺だよ!


「我はここに、シャムノア四天王の結成を宣言する!」

「だから俺1人しかいないって言ってるじゃん!!」


 馬鹿みたいに目立つ城なんかに経費を使うから人を雇えないんだよ!

 その城ももうないけどな!!


「超高速転移移動で4人に分身……」

「できません」

「斬ったところから分裂して」

「できません」

「実は四つ子ちゃんという設定が」

「ありません」

「タイムリープして別々の時代から4人集結」

「無理だっつってんだろ!?」

「すみませんでしたもう言いません」


 やっぱ弱!!

 ちょっと大きい声に弱い魔王とか、もう駄目駄目である。


「まぁとにかく、四天王を結成する事は決まったのだ。

 我は今からメンバーを集めて来るので、留守は頼んだぞ!」


「え、俺が行かなくていいんですか?」


「我の直属の配下故な!我の目で直接見極めたいのだ!」


 それが一番信用ならないのだが。

 もういいや。好きにやらせてあげよう。



〜5分後〜



「集った!!」

「速ッ!?」


 ついて来る方もついて来る方だが、そいつら本当に仕えるのか!?

 俺の前には魔族の大男に子供と女、あと犬がいる。

 何でもいいからとにかく4人揃えたって感じのメンバーだ。


「右から紹介しよう、図体の大きい奴がボルドフォック」

「うっす!」

「ちんまいのがガルガントリエ」

「やぁ!」

「こっちの女はチャネルライト」

「はぁ〜い」


「そして犬だ!」

「見りゃわかるよ!!」


 拾ったからには名前くらいつけてやれよ。

 可哀想だろうがよ。


「で、魔王様。この四天王はそれぞれ何ができるのですか?」


「ボルドフォックは元々アングリーボアという魔物だった。

 とっても力持ちで性根の真っ直ぐな男だぞ!」

「うっす!目の前に立つ奴は皆殺しだぜ!!」


 赤茶色の肌にがっしりした体格。弧を描くように伸びた二本の牙。

 成る程確かに猪っぽい。

 使いづらそうな男だが、定番で言えばパワータイプって1人は必要だもんな。

 尤も、一番最初に負けるのもこのタイプな訳だが。


「ガルガントリエはラピッドクロウという賢い魔物だった。

 体は小さいが、トリッキーな動きと多彩な攻撃手段を持つすごい奴だ」

「ボクがこちらに付いたからには、勝利は99%揺るぎませんよ」


 紫色の髪と、同色の翼を持つ少年に視線を移す。

 確かに歳のわりに賢そうに見えるが、精神面での幼さが気がかりだ。

 策に溺れそうなタイプにしか見えない。

 

「チャネルライトはダンシングフォックスという種族でな。

 非常に高い魔力を有し、幻術によって相手を惑わす事もできるのだ!」

「よろしくね!」


 うん。この人は逸材だ。何より職場が華やかになる。

 狐耳と尻尾を持つ金髪金毛の美女。

 スタイル抜群の四肢を包む妖艶な踊り子の服も素晴らしい。

 これだよ、こーゆーのを待っていたんだよ俺は!


「いでっ!?」


 とか考えていたら魔王ちゃんに蹴られた。

 何するんだこのガキは、と怒鳴るのは簡単だが、

 チャネルライトさんを連れてきた功績に免じて許してやろう。


「ふん!だらしない顔をしおって!!」


 確かに、さっきの俺は気が緩んでいたかもしれない。

 魔王ちゃんに注意されるくらいだから相当なのだろう。

 いかんな、気をつけよう。


「で、最後のこいつは……犬だ!以上!!」

「待て待て待て待て!何で犬なんだ!」

「それは哲学的な疑問だな。犬とは何故犬なのか……」

「そうじゃない!そこは深読みしなくていい!」


 四天王って選ばれた優秀な奴らがなるもんだろ!?

 なんでその最後の枠が犬になるんだよ!!

 どこから来る発想だ!?宇宙か!?宇宙なのか!?

 せめてケルベロスくらい連れて来いよ!

 ……はっ!?


「魔王様もしかしてその犬……」

「ほう、気がついたか?ならばググってみるがよい」


 言われるがままに俺はググルを発動した。







【ポメラニアン:友好的で活発な小型犬】


「ただの犬じゃねーーーか畜生!!」


 冷静に考えたら、ケルベロスを5分以内に連れて来るとか無理だよね。

 本当になんでこの犬を選んだんだろう。


「まぁ、そうは言うがな。この犬は本当にすごいんだぞ」

「俺にはそのすごさがまったくわかりませんが」

「では、この犬の瞳をよーーーーーーーく見てみろ」


 それでどうにかなるとは思えないが。

 俺は犬の瞳を凝視した。


 丸くて、つぶらな瞳だ。


 とても愛らしい。


 うん、可愛いが、それだけだ。


「すいません魔王様、やっぱりこの犬のすごさがわかりません」

「いいや、もうお前はこの犬の魔眼に見入られている!」

「そんな事は……ないと思いますが」

「ではこの犬を攻撃できるか?」

「いえ、それは流石に可哀想でしょう」

「だろ!?」


 つまり何が言いたいんだろうか。

 俺は犬に関する熱いトークを期待している訳ではないのだが。


「こんな可愛い犬を攻撃できる者などいない!

 攻撃されない=最大の防御!

 つまりこの犬は世界で一番防御力に秀でた種族なのだ!」


 また訳のわからない事を言い始めた。

 攻撃されないからと言って、対勇者戦においてこの犬がどう役に立つというのか。


「おう!流石は魔王様だぜぇ!!」

「魔王様、ボクですら構築不可能なほどに完璧な理論です」

「かわいいよね、わんちゃん」


 駄目だ!この四天王ポンコツしかいない!


「今日は顔合わせのみでいいだろう!本格的な活動は明日からとする!

 各員、しっかりと休息を取るように!それでは解散!!」


 今いる一部屋しかないけどな!

 隠れ家がそんなに広いわけないだろ?そうだよ、ただの小屋だよ!!


「あのー、魔王様?まだそこのお方の名前を聞いていないのですが……」


 チャネルライトさんの一言で全員の視線が俺に集る。

 どうするんだ?魔王ちゃんよ。

 俺を眷属にしたまま、名前をつけずに放置したのはお前だぞ。


「う、うむ……こいつは幹部の……」


 あ、もしかして今、名前考える感じ?

 や、やめろよ!絶対適当なのがくるじゃん!


「幹部のカンベエだ!!」


 ほらな!!!

 くそっ!隙あらばこんな職場は辞めてやる!!




////////////////////////////////////




・今日の魔王ちゃん  至って平和でした。



・魔王ちゃんの軌跡

  最短戦闘時間:00分00秒(戦う前に城ごと爆破)

  最長戦闘時間:08分59秒(ただし相手は人間の子供)

  累計戦闘時間:16分01秒


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