18:魔王ちゃん、コケにされる
「あんたも【呪託の夜】に魔王としての洗礼を受けた、そうやろ?」
「【呪託の夜】に夢の中に現れる黒衣の女、
奴に選ばれた者のみが魔王となる事を許される。
この世界で魔王を名乗る事が出来るのは、洗礼を受けた真の魔王のみ」
ほ、ほう。
「不思議な話しやけど……”魔王”という言葉は口にできても、
自らを魔王と名乗る事が出来るのは本当の魔王だけっちゅー話しや」
「魔王となった者は他者を圧倒する"力"と魔王としての"知識"を得る」
ほうほうほうほう。
「ワイらが教えた事も大体はその知識から引っ張ってきただけやで。
てか何で魔王を名乗れるあんたが知らんのか不思議やわ、ホンマ」
「何かのイレギュラーか、余程物忘れが激しい馬鹿か、どっちかねぇ?
大体、魔王が唯一の存在だとするなら、それに対して勇者の数多過ぎだろ」
ほ〜〜〜〜〜〜。
「魔王と勇者は光と影。今期の魔王の数が26なら、
勇者だって26人まで召喚できるって事になるんやで?」
「尤も、26人の枠の内、21人まではどっかの魔王に殺されたみたいだが?」
すぴ〜〜〜〜〜ZZZzz。
「「寝るなや!」」
「うおッ!びくった〜〜〜〜」
あまりに話しが意味不明すぎて寝てしまった。
途中までは聞いていたんだけどなぁ。
えーと、何だっけ?
【呪託の夜】がどうたらこうたらだったっよね?
夢見は良い方だけど、黒衣の女?なんて会ったっけ?
私が魔王になった日の夢は……お菓子を食べている夢だったはずだけど?
チョコにキャンデー、アイスにプリン、そしてケーキ!
最高の夢だった!よく覚えているぞ!
特にプリン。あれは良い物だ!
あれを生み出した燐界の人類には余す事の無い賛辞を送りたい!
そういえば、プリンを食べている途中。
何やら耳元でずっとブツブツ五月蝿い話し声が聞こえたような……。
五月蝿い!消えろ!と念じたらすぐに聞こえなくなったから忘れていたなぁ。
あれは何だったのか?
さっぱりわからない!
まあ、取りあえずこの人達の言い分は理解できたので良しとしよう。
「つまり、魔王を名乗るお前達もまた正式な魔王だ、と言いたい訳だな。
まーあ?お前達の言ってる事が本当だとは限らないけど?」
闇の奥から舌打ちが聞こえる。
ボーガス(自称魔王)は気が短そうだ。
怒らせないように注意しよう。
「勿論、ワイは名前だけのお座敷魔王とちゃうで?」
隣の牢から反響したアザトの声が聞こえる。
顔は伺い知れないが、なんとなく今はニヤついている気がする。
独特なイントネーションと能天気な声音がそう思わせるのかな?
まあ、言っている事の意味はよくわからないけどね。
なんだ?お座敷魔王って?
「くっくっく、テメエの事だよ、お座敷魔王」
な!?
よくわからんが、響き的に馬鹿にされている事はわかったぞ!
たぶん、カンベエの世界で言う所の引きこもり!
家でゴロゴロしてるだけで何もしない奴!みたいなニュアンスだろ!
本当に失礼な奴らだ!!
私はもっとちゃんとしてるぞ!
「誰がお座敷だ!お前達だって態度が大きいだけで私より先に捕まっているではないか!」
「ぐ!儂はお前よりも派手に暴れ回ったから先に目を付けられただけだ!」
「ふん、どうだかな?さっきから具体的なエピソードも何もないではないか!」
「因にワイは空気を操る能力で人間の街一つを更地にして、
それを止めに来た勇者を一人返り討ちにしてやったんや!」
「ちょ、儂だって!人間の食料源である東の大農園を消し炭にした上で、
ビィービィー五月蝿い勇者を、発火能力で丸焼きにしてやったぜ!」
……え、勇者倒せたの?
へ、へぇ〜。
やるじゃん。
ふーん、あれ倒せるものなんだ。
じゃあ次は私も倒してみよっかなぁ〜。
前戦った時は、ちょっと本気出し切ってなかったとこあるし?
うん、わかっています。
私にはムリです。
てか、その能力?って何ぞ?
私なんか独学で覚えた闇魔法しか使えないんだけど?
何で私だけ色々貰ってないの?
夢の中に置いてきちゃったとか?
今寝たら取りに戻れるかな?
「で、お座敷魔王のシャムちゃんは何してたん?」
「お、おおおおお座敷言うな!」
「くっくっく、ほら!早く言ってみろよ、おい!!」
「私だって勇者を!」
い、言える訳が無い。
私が勇者と共謀している、という情報が漏れれば魔族と人類の両方を敵に回しかねない。
「勇者をどうしたんだ?あ?早く行ってみろよ!」
「21番目の召喚者、転移の勇者の殺害」
答えたのは私ではなかった。
艶やかな金色の髪、きめ細かく白い肌。
扇情的で蠱惑な体型、同性の私から見ても魅力的な容姿だ。
耳や尻尾がなくてもすぐに誰かわかる。
「ですよね?魔王様?」
「……チャネルライトか」
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「おうおう、つまりあれだな?手元まったく無しから今すぐに金が欲しい、と」
「さっきからそう言っているじゃないですか!」
師匠達は特技以外となると本当に話しが通じなくて困る。
これはもう、諦めてカンベエさんと合流した方が早いのでは?
そう思い始めた矢先、師匠の1人がポツリと呟いた。
「良い方法があるぜ?」
「とりあえず聞くだけ聞きます」
期待はしない。
持たない、出来ない、持ち込めない。
非期待三原則。師匠達と付き合う上で必要な心意気の一つだ。
「相当厳しい戦いになると思うが、ついて来れるか?」
「師匠、急ぎなので巻きでお願いします」
「へへへ、そうか。じゃあちょっと耳を貸せ」
耳元でゴニョゴニョと作戦を発表する師匠。
うんうん。
思ったより普通……かも?
いや、でもこんな簡単な事でお金を稼げるのかな?
というか耳元で言う必要なくないですか!?
「ケケケ、成る程、冴えてるな!兄様!」
「思ったより現実的じゃねぇか」
「で、弟子よ。やるのか、やらんのか?」
ニタリと、黒い笑みを浮かべる師匠達。
わかっている。
ボクにできる事なんて、もうこれくらいしかない。
だったら答えは一つ。
「わかりました。それでいきましょう」
悪魔と相乗り、しちゃおうかな?
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・今日の魔王ちゃん お座敷デビュー
・魔王ちゃんの軌跡
最短戦闘時間:00分00秒(戦う前に城ごと爆破)
最長戦闘時間:08分59秒(ただし相手は人間の子供)
累計戦闘時間:23分50秒




