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16:魔王ちゃん、そしてワンチャン!

「ね?言ったでしょ?門番さんをからかうと面白いよってね?

 お兄さん達はボクとの約束を守ってくれたからコレ・・は返すね!

 じゃ!また遊んでね!ばいば〜〜〜い!」


 大きく手を振りながら走り去るガルガントリエ。

 その無邪気な笑顔が残したモノは乾いた静寂。

 そして、なんともいたたまれない空気だった。


 方や子供に身分証を奪われたマヌケ冒険者。

 方やその冒険者と子供に遊ばれた門番。


 勤務中の門番からしてみれば、最高にモチベーションの下がる展開だ。

 尤も、だからこそ、そこに付け入る隙が生まれるのだが。



「すみません。本当はさっきの少年に身分証を掠め盗られたんです。

 門番さんを挑発したら返してくれるって言うので仕方なく……」


『うっす』


「はぁ……にしても危険な魔物の存在を騙るのは関心せんな。

 まぁ、もう、なんでもいいや。

 今回は大目に見るが、次は前もって相談してくれよ」


「はい」

『はは!』



 門番さんは脱力した肩をぶら下げ、持ち場に戻って行った。

 魔王の手下の俺が言うのも何だが、酷く悪い事をした気分だ。

 今回俺が(不本意ではあるが)怒られるだけで済んだ事も、

 あの門番さんの心の広さ故の結果だろう。

 ありがとう門番さん。

 君の(貴重な勤務時間の)犠牲は忘れない。

 何はともあれ、これで第一関門は突破できた。

 ここまでしてメカ・ボルドが役に立たなかったら……。

 まったくどうしてくれようか。




////////////////////////////////////




 堅牢な門を潜る。

 するとそこには、静平と建ち並ぶ煉瓦造りの街並が広がる。

 どこか暖かさを感じる石畳の情景、その上を駆ける子供達の営みが視界を賑やかす。


 皆々様ようこそ、ここが北の都、ノースライバックなり!



「こっちです!こっち!」


 手招きするガルガントリエを発見し、小走りで歩み寄る。



「上手くいきましたね」


「あの身分証は?」


「ボクの師匠は皆さん手先が器用なんですよ」


「師匠?そんなんいたのか?」


「小枝を使って地面に迷路を描いている内に描写力が上がったとか」


「あー。例の剣玉の奴か?」


「いえ、鬼ごっこの方の師匠です」


「どっちでもいいわ!」



 もう顔すらうろ覚えだよ!

 そんえばいたなぁ……程度の存在感しかないよ!

 とは言え助けられた事は事実だ。

 お金のかからない遊びが好きな三人のならず者、侮れないぜ。



「それじゃあ引き続き探知で魔王様の居場所を探ります」


「ああ、頼んだぞ!」


『おう!流石は魔王様だぜぇ!!』



 なんだかいい流れだぞ!

 魔王ちゃんの居場所さえ特定できれば、

 あとは首に縄をつけて転移でずらかるだけだ!







 と、思っていたのは2時間前の事。


「うーん。あれ?うーん。おかしいなぁ」


 俺達は外壁に沿うように街を一周して尚、

 魔王ちゃんの居場所を掴む事が出来ずにいた。



「!? わかりましたよ!!」


「そのセリフは16回目だ、ガルガントリエ」


「や、やだなぁ。今度こそ本当の本当にわかりましたよ!」



 なんだかんだでここまで歩き詰めだったため、足が棒になってきた。

 こういう時は素直にメカ・ボルドが羨ましくなる。

 今回の「わかった」で当たれば・・・・いいのだが。



「で?天才のガルガントリエくんは何がわかったのかな?」


「わからない事がわかりました!」


「今一番聞きたくなかったセリフだよ!!」


「はっはっはっは!」



 笑っても誤魔化されないよ!?

 俺はガルガントリエの肩を両手で揺すり、どういう事かと問いつめてみる。

 天才少年曰く、空気中の魔力が不安定に揺らいでいるおかげで、

 魔王ちゃんの波動を追う事が困難な状況にあるらしい。

 その感覚には俺も心当たりがある。

 転移妨害ジャマーだ。



「つまり転移妨害ジャマーが邪魔〜だという事ですよ」


『ごふっ』 カタカタ カタカタッ


「なんかカタカタ震え始めたが、もしかしてメカ・ボルドは笑っているのか?」


「いえ、普通に燃料切れですね!」


「ふーん……成る程な!

 って、おい! コイツまだ何も成してないんだけど!?」



 検問所で騒動を起こしただけじゃねーか!

 燃費悪いな!

 あとメカ・ボルドよ。

 震えながらサムズアップするのはやめろ!

 褒めてねーから!!



「だあぁクソ面倒くせぇ!

 ここまで連れてきてガス欠とか有り得ないだろ!

 さっさと燃料補給するぞ!

 というか、そもそもコイツの燃料は何を使ってるんだ!?」


「魔石ですよ。魔具マジックアイテムの原料になるアレです。

 純度が高く、保有魔力の高い魔石を炉に焼べれば長く稼働できるかと思います」


「魔石か!だったら魔具ショップで手に入るな!

 時間が惜しい!二手に別れて魔具ショップを探そう!」


「わ、わかりました!メカ・ボルドは路地裏の影で休んでいてください!」


『うっす!目の前に立つ奴は皆殺しだぜ!!』


「大人しくしてろ!!」



 本当にやっかい事しか持ち込まない秘密兵器だぜ!

 と、文句を言っても仕方が無い。

 魔王ちゃんの幽閉先に突入するには一人でも多くの力が必要になるはずだ。


「ボクは東へ!」

「俺は西だ!魔石が見つからなくても一時間後にはここで落ち合おう!」

「了解です!」


 こうして救出隊の魔石捜索が始まった。

 幸いな事に俺は以前、一度だけこの街を訪れた事がある。

 ショップ関連なら西側の大通りに何軒か固まっていたはずだ。

 風化しかけた記憶を頼りに、路地と路地を縫うように駆け抜ける。


 そこで思わぬ出会いが訪れた。


「ワン!ワンワン!」


 い、犬!?

 あの犬だよな?四天王の!!

 ゴタゴタしていて存在を忘れていたが、何でこんな所に犬が!?


「ワン!ワン!」


 何かを訴えるかのように、俺のズボンの裾に噛み付き引っ張る犬。

 犬に人の言葉などわかるわけはないのだが、俺は尋ねずにはいられなかった。



「魔王ちゃんの居場所がわかるのか?」


「 ワンッ! 」



 その問いかけに答えるかのように響く快活な一鳴き。

 俺は目の前の小さき盟友を信じて、走り出すその背を追いかける事に決めた。


 これはワンチャンある!!

 あ、俺の魔石捜索は終了しますね!




////////////////////////////////////




〜東通りの魔具ショップにて〜



「すみません!魔石ください!」


「坊や、お金持ってるの?」


「あっ」




////////////////////////////////////




・今日の魔王ちゃん  今日も行方不明。



・魔王ちゃんの軌跡

  最短戦闘時間:00分00秒(戦う前に城ごと爆破)

  最長戦闘時間:08分59秒(ただし相手は人間の子供)

  累計戦闘時間:23分50秒


カンベエは犬の事を忘れてたけど、

作者はずっと覚えていたよ!


何故犬が街にいるかは後日!

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