護衛騎士の恋の終わり
※後味悪いです。
かつての相棒同士の戦いは長期化していた。
実力はユクシノの方が上だろう。
しかしその優位をユクシノの躊躇いとアナスタシアの気迫が完全に打ち消していた。
蛮族のような本能のまま戦っているかのような気迫だが、その剣技は変則的で人を効率良く殺す為に磨かれた卓越したもの。
ユクシノが劣勢となり、このままでは首を取られるまでものの数分であるだろう。
そうなって数分、剣と剣が弾き合い二人の間合いは一旦離れた。
共に息は荒く、されど剣に握る手は疲れを知らず。片や相手を睨み殺さんとばかり見て片や未だ戸惑いを隠せず視線をさまよわせていた。
息が整い、アナスタシアは再び突撃の構えを取る。それを見て咄嗟にユクシノは声をあげた。
「アナスタシア!」
ぴたり、と構えをとったまま彼女は静止した。先程までの凶笑は何処か、能面のような表情でユクシノを見つめている。
濁った瞳に確かな殺意をのせた彼女の視線に思わずたじろいだが、それでもユクシノは言葉を紡いだ。
「アナスタシア……何故皇女様を狙う?」
返事はない。
表情も変えずただ黙って構えをとり続けている。先程まるで普通の人かのように話していたからいけると思ったのだが、とユクシノは心の中で溜め息をついた。
やはり言葉は無用か、と剣を構えようとした時。
「ユクシノ…………」
アナスタシアの口から吐息のようなそんな囁きが漏れた。
何だろうか、と動きを止めた彼に剣が一気に迫った。
間一髪避けて剣を構えようとするが猛攻は止まらない。
「なんでっ、皇女を選んだの!?」
猛攻をかけながらアナスタシアは叫ぶ。
激情に囚われながらもその剣は鋭く容赦はない。
油断や隙があればあっと言う間に命を刈り取るだろう。
「なんで……拒むのっ!!」
アナスタシアの顔は追い詰められた人間のように今にも倒れそうな程蒼白で、その目は揺らいで涙をためている。
しかし同様に追い詰められて動揺しているユクシノはその事に気付かない。その言葉も理解が追いついていない。
「なんで……置いていったの!!」
致命的な一撃。
避けきれないそれに対して彼がおこなったのは……。
「か、ふ……。」
首を失った体。それが握った剣はアナスタシアの体を袈裟切りち致命的な傷を負わせていた。
飛んだ頭は近くに落ちていた。
アナスタシアは剣を支えにそこまで歩いていく。
拾い上げたその頭が浮かべている表情は泣き出しそうな苦悶の顔。
それさえも彼女にとって愛しかった。
首を抱いて近くの木に寄りかかる。
感覚が無くなってきた手で彼の髪を梳いた。
走馬灯のように彼との思い出が溢れてくる。
そして、愛しい人を自分の手で殺してしまったことに気付く。
その事実に絶望しながら、彼女は目を閉じる。
どうしてこうなってしまったのだろう。
そう思いながら。
Obwohl die Erzählung endete, war es jetzt wirklich gut?
読んでくださりありがとうございます
護衛騎士~はこれで終了です。
後味悪い話になってすみません。
本当にこれでよかったんでしょうか?
そう思うこと、ありませんか?
言わなくても理解してくれるだろう。
時間がなんとかしてくれるさ。
いまはこれでいいんだ。
……なんてなぁなぁにして困ったことになったこと、ありませんか?
私の知り合いには適度に抜いて本当上手くやっていけている飄々とした人物がいますが、そういうのは上手い人の話であって下手な人がやれば目も当てられない。
そんなディスコミュニケーションの結果が上手く行くわけないんだよ、もっと勇気だしてみろよ!……と思いながら書いていました。本当です。
作中の二人はもっと歩み寄っていればこんな風にならない筈です。ちょっとの努力をしなかった、それだけです。執着して諦められなくて暴走……誰も得していません。そういう意味ではアナスタシアも努力の方向音痴です。
少しの諦観と少しの努力。
最近友達が言った言葉で思いついた話でした。