05「エスタシオンとおいかけっこ」
05「エスタシオンとおいかけっこ」
多分グリースは、感情的になって文字を打ち込んでいるのだろう
グリースの誤字・脱字混じりの長い、長い文章は・・・
頭を抱える程、難解な文章になっていて明人を苦しめた
先に到着していた透矢も・・・
『半分くらいしか理解できていない』と、スカイプ越しに明人に自白した
2人はスカイプで話しながら文章の解析をし・・・
文章を打ち込んで確認を取りながら、事の次第を理解していった。
相変わらず・・・
グリースの文章には、言いたい事が詰め込まれ過ぎていて理解に苦しんたが
それを既に理解しているらしい
晴季さんの補足文章には、本当に助けられる事となった
『今度、グリースには内緒で・・・晴季さんにもスカイプに参加して貰おう』
脱力感が伝わって来る程、疲れている透矢の言葉に・・・
明人は賛成するほかなかった。
明人達が理解に苦しんだ「グリースの言い分」を要訳すると・・・
グリースは・・・
通算5時間程、「エスタシオンとおいかけっこ」をしているらしい
同じ星に辿り着き、近付いたと思えば・・・見失う
次に見付けた時には、自分が直ぐに行けないくらい遠くに行ってしまっているか
他の星へ移動してしまっていて・・・
と、移動アイテムと課金しないと使えない乗り物を駆使し
エスタシオンが、故意にグリースを避けているらしい・・・との事だった。
一つだけ考えられる事は・・・
エスタシオンは「本気で逃げてはいない」と言う事だけ
同じゲームがしたくて・・・でも、会いたくない人がそこに居れば・・・
使用するキャラを変更したり、サーバーを変更すれば気付かれなくて済むのだから
2人は、これが2人に対し前日に語られたエスタシオンの悩みと関係ない
「エスタシオンとグリースの痴話喧嘩」でない事を本気で願った。
「とりあえず・・・ここで連絡取れる手段は全部試したんだよな?」
明人の文章にグリースは・・・
また、長い文章で・・・やった事を全部書いて返してくる
『これじゃ、逃げたくなるかも』
気付くと、2人は同時に同じ言葉を発していた。
ふと目線を移すと、時計は23時・・・INしてから無駄に2時間も過ぎている
明日はまだ平日・・・明日の天気も思わしくない
早く起きねばならない明人と透矢は
「会えるかどうか、1時間だけ追掛けてみる」と「別行動」を申し入れた
グリースには悪いが・・・「会いたくないのがグリースだけ」なら
「明人と透矢だけで追掛ければ会えるのではないか?」と考えたのだ。
が、しかし・・・グリースが言う事を聴く訳もなく
「エスタシオンはここだけじゃなく、リアルでも私の友達なの!
イキナリ無視するだなんてゆるさない、その理由をきく権利が私にはあるの!」
と・・・反論の文章を打ち込んで、明人と透矢の後をついてきた
晴季さんの助け船を待ったが・・・
意思疎通の願いは叶わなく、助け船は来なかった。
結局、4人全員でエスタシオンを追う事となったのだった・・・
役割分担は、諸事情から・・・透矢が見張り役になる
その理由は・・・課金している三人を余所に、透矢が
『「課金して購入した物」が「期限付きで使えなくなる」なんて言う
毎日INできないユーザーを切り捨てた環境設定の「ネットゲーム」に、課金は不要!
「基本無料」なら・・・俺はその「基本」でしか遊んでやらない。』
と、このゲーム会社の経営側からみると・・・
困った主義主張を自負しているなんて事は、公然の秘密です。
計画はグリースがたてた・・・
課金してなくて移動の遅い透矢が、星を移動する為の船着き場に陣取り
他の星への移動を阻止し・・・
他のメンバーがエスタシオンを挟み撃ちにするらしい・・・
ただし、この時・・・
グリース以外の三人は、この計画について手を抜く事を決めていた。
決めてはいたが・・・エスタシオンがアイコンに無い表情を見せ
幾つか不思議な現象が起きている事にも気付き
それで、少し本気で追掛けた
その時、俊敏に動きまわるエスタシオンから受け取ったメッセージ・・・
次の瞬間には、エスタシオンは移動アイテムでも使ったのか姿を消していた
透矢も・・・多分同じモノを見聞きしたらしい。
見失い、星を移動され・・・遠くに逃げられた時点でグリースに・・・
会えても捕獲できる機能がないから捕まえられないのではないか?と言い
納得してもらおうとしたのだが・・・勿論、世の中そんなに旨く行く事がない
なんで・・・・どうして・・・と、グリースは怒るばかりであった。
日付が変わる24時・・・
明人と透矢は「学校」を理由に、晴季さんは「仕事」を理由にログアウトした
グリースは・・・
「さけられる理由が気になるから」と徹夜覚悟で頑張るらしい。
半時後・・・AM1時
明人と透矢のPSPのスカイプ画面には3人目のメンバーが加わっていた
『それでは、明日「Usignolo」で・・・』
約束を残し、このアプリケーションは終了された。