第六話
入ってきたのは170cmを超えているだろう長身の、女でもこれには劣るであろう美しさの腰の辺りまである銀髪。そして雪のように白い肌に瞳も同じく銀色の、いや銀色なんて安い言葉で例えるのすら失礼なほどに美しい、静かな光を持つ瞳。そして何より、その雰囲気。神聖で美しい容姿とは裏腹に、悪魔のような恐ろしさ、畏れ、妖艶さなどが感じ取れ、思わずひれ伏したくなる。いつもなら説明長ぇよ!と自分で突っ込むんだが、それすら忘れるぐらい見蕩れていた。クラスのみんなもそうだろう。水龍はどうか知らないけど。
「それじゃあ、自己紹介してください」
すると、その端整な顔に微笑を浮かべ、口を開いた。
「私、生徒会長に選ばれました玄武と申します。本名は都合のため、名乗ることはできません。以後、お見知りおきを」
学ランだし男だよね?あまりにも声までが中世的だから女ですって言われても違和感無いな。玄武さんが笑みを浮かべた。すると、数名の女子が倒れ、新しい扉を開いた人も居るようだ。そして、水龍と僕にしか分からないぐらい小さく口を開け、
『得意科目は内緒です。ついでに言っておきますが・・・“死神”は私のことですよ?』
と口を動かした。少し離れた席の水龍が「へぇ・・・」と呟いたのが聞こえた。僕だって驚いてる。死神と言えば”魂を刈ることができる能力”と言う珍しくてチートな能力を持ってる能力者だ。まさか僕たちと同年代だったなんて・・・。
昼休みになると、みんなが思い思いの場所で昼食をとり始める。うちの学校は売店で買うか弁当らしいから、1人は寂しい。だから、水龍もさそって3人で食べている。そう、僕と水龍と玄武さん。どうやら売店で買おうと思ったら欲しいのが売り切れていたらしい。だから、ジャムパンとクリームパンとチョココルネとクロワッサンと鮭おにぎりと梅おにぎりとエビマヨおにぎりと高菜おにぎりとコーヒーを買ったらしい。9個も買ってる。どんだけ食うんだこの人・・・。それだけ食べてもまだお腹がすいてるみたいで、それを見かけて、「これ買ったけど余りそうなんだ。だから一緒に食べよ?」ってさそったんだ。そしたら、その余りそうだったのが売店で買い逃したやつだったとか。
そんな訳で3人、屋上で食べてます。玄武さんにあれを渡したときは、驚いたよ。なにせ、どこか作り笑いを感じる笑みしか見せていなかったのに、心の底からの笑み(と言っても微笑)を浮かべて、
「有難う御座います」
って言ったんだ。思わずあれ?食べ物あげてれば仲良くなれんじゃね?とか思った僕は悪くない。
「お前食うの速ぇなぁ」
水龍が言った。うん、同感。だって僕が渡したやつを2口で食べたんだよ?普通もっとかかるのに。
「それじゃあ、ここらで能力教え合おうじゃねーか」