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第2章 事件
事件は2013年2月19日に発生しました。
寒さが一段と厳しい日でした。
その日は禁煙男が禁煙をはじめてから1年と3ヶ月目でした。
「煙草を吸うなーーー!!!」
禁煙男は老父の目の前に並べられた、ご飯とみそ汁を見て、壁が震えるほどの大声で怒鳴りました。
禁煙男には温かいご飯とみそ汁から香るように立ちのぼる湯気が、煙草の煙に見えたのでした。
その湯気は老母が心をこめて、ご飯とみそ汁をつくった証です。
「煙草を吸う奴は許せない!!!」
禁煙男は老父をぶん殴りました。
禁煙男は40歳過ぎで身長180cm、体重130キロの巨漢でした。
老父は70歳半ばで枯れ木のように痩せ細っていました。
禁煙男は老父を一発で殴り殺してしまいました。
老母の目には、宙を飛び散るご飯とみそ汁が、いつまでもいつまでも焼き付いていました。
(つづく 最終更新日13年01月06日)




