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  作者: 紀ノ川
第2部 CDをプレゼントする男
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12枚目 ウェス・モンゴメリー「インクレディブル・ジャズ・ギター」

 ある所にCDをプレゼントする男が住んでいました。

 男は、

 スーパーの店員に、

 CDをプレゼントしました。

 ウェス・モンゴメリーの「インクレディブル・ジャズ・ギター」です。


 男はスーパーでコーヒー・紅茶・緑茶・烏龍茶・ミネラルウォーター・スポーツドリンク・栄養ドリンク・炭酸飲料・牛乳・豆乳・野菜ジュース・果物ジュース・日本酒・焼酎・梅酒・ビール・ウイスキー・ワインを買おうとしました。


 男は、「僕はお金を持っていません」とスーパーの店員に言いました。

 男はお金の代わりに、スーパーの店員へ、ウェス・モンゴメリーの「インクレディブル・ジャズ・ギター」をプレゼントしました。

 スーパーの店員はひどく驚きました。


 1時間後、男は警察の牢屋に入れられていました。

 警察官は男の書類を作成しながら、つぶやきました。


「わけがわからない!」


 男は牢屋で夢を見ていました。

 男は中学1年生で、姉は中学3年生でした。

 姉の白いセーラー服は太陽の光を吸いこんで、いつも輝いて見えました。

 姉は男の知らない、大人の世界を知っているように見えました。


 中学1年生の時に男はお小遣いを貯めて、生まれてはじめてレコードを買いました。そして姉と一緒にそのレコードを繰り返し繰り返し聴きました。


 男は何故、牢屋でそんな昔の夢を見たのでしょうか? 


 姉は大人になり結婚して男の子を授かりました。

 姉はしばらくして夫に捨てられました。夫は他に女をつくったのです。

 姉は女手一つで息子を育てました。


 母親が入院したので、父親と男と犬の世話をする為に、姉は息子を連れて実家に戻って来ました。

 男は姉と甥を歓迎する為に、買い物をしたかったのです。


 男は警察官に叩き起こされました。

 牢屋の外には警察官と中年のおばさんが立っていました。

 中年のおばさんは疲れ切ってやつれた顔をしています。ショートの脱色した髪の毛も見るからに傷んでいます。黒い地味な服がお似合いでした。


 男は中年のおばさんに言いました。「あなたは誰ですか?」

 警察官が代わりに答えました。「君のお姉さんだよ」

「僕の姉は白いセーラー服が似合っていました」

「君のお姉さんだよ」

「僕の姉は輝いていました」

「君のお姉さんだよ」

「僕の姉は美しい黒色のロングヘアーです」

「君のお姉さんだよ」


 男と警察官のやりとりを黙って聞いていた姉は、

「このくそぼけ、何、寝ぼけとんねん!ボコボコにいてこましたるぞ!」


 男は、

「あ、お姉ちゃん!」


(つづく 最終更新日22年07月22日)

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