第7話:感謝の気持ちをもって?
「とりあえず、朝ごはんでも食べながらお話しようか。」
魔王様の再降臨にシュゼの顔が一気に青くなる。
地を這う黒く重たいオーラに一同動けない。
……なんですか?この絶対に王子様にいらないスキル!
オーラで動けないとか意味わかりませんよ!?
口内で舌を回し、唾液でのどを潤わしてから口を開く。
「あ、そうですね。朝ごはんまだですし、王子様にいろいろ聞きたい事もありますから。」
必死に王子様に話かける。
「だよね。じゃあゼラ、持ってきて。」
王子様の発言に時が動き出す。
温度が上昇したのを感じ、ホッと胸をなでおろす。
「かしこまりました。」
ゼラが一礼して、装飾の少ない扉に消えた。
!!消えた!!
消えた。本当にゼラは消えたのだ。取っ手に手を掛けたとたんパッと。
いうなればハリーとかいう少年が赤毛の子に出会い、4と2分の3番線を目指し壁に激突していくといったのと同じ現象が起こった。
「……ま、魔法?…」
目を細め、部屋の隅の扉をじっと見つめながらつぶやく。
「あー、やっぱり君は魔法のない世界から来たんだね。」
右側から聞こえる王子様の声に横を向くと――
ゼラが窓側の丸いテーブルに並んだ料理を取り分けていた。
……うそーん。
……あぁしまった、これではどこかのお祭り男と同じじゃないか
ただ呆然と目の前の出来事を眺める私に今度は左側頭上から声が聞こえた。
「くっくっくっ…」
見上げればシュゼが耐えられないというように笑いをかみ殺していた。
ぷちーん。
何笑ってんですか!!すみませんねぇ、魔法をしらなくて!!
さぞおかしくみえたでしょうね。凝視している反対側にお目当ての人がいるのに気がつかないという状況は!!
笑われた羞恥とイライラにまかせベッドから勢いよく立ち上がり、その拍子にシュゼの足を思いっきりふんづけてやった。
…なにが悔しいって?「痛み?なにそれ、驚いただけだけど?」っていうシュゼの表情にかな。
ずかずかと大股でテーブルにつく。その様子を口元に笑みを浮かべながらみていた王子様も反対側の席に座った。
「いただきます!!」
両手を合わせ手じかなスープを飲む。
ふわっと香る香りがどことなくコーンスープを思い出させる。
「ゼラ!!これすっごくおいしいよ。」
顔を上げにっこりと微笑むと、よかったですと微笑み返してくれる。
炒め物みたいな料理もおいしかった。
卵料理らしきものに手を伸ばすと、いつの間にか隣にいたシュゼがお皿をひょいと持ち上げ取り皿に分けてくれた。
少しだけフンっと思う気持ちもあったがお礼を言うことは大切だ。
「ありがとうございます。」
顔を見上げると、シュゼの口端がちょこっと切れていたのが気になった。
「どうしたんですか?口。」
自分の口元を指差してみせる。
(私が倒れる前にはなかったのに……
さっきのゼラの反応といい、王子様の生存確認といい、やっぱり何かあったんだ。気になる……。)
「あぁ、………気にすんな。それより、頭平気か?」
悪い、と少し頭を下げて謝るシュゼに教えてくれないんだと思いつつもうん、と頷く。
「平気です。でも私何にぶつかったんですか?先がとがってたような気がするけど…。」
あのとき自分の後ろには部屋へとつながる扉しかなかったはずだ。
「それは、コレですわ。」
ゼラがすっと黒い塊を私に手渡す。
……天狗?
いや、アントニオ○木?
そうだきっとそうだ。
手渡された物は金属のような物でできているお面だった。
このにょーんとしてるのってあごだよね。
…長いなあご!!手のひら一個分くらいの長さあるけど!?
まさかコレが?とゼラをみるとこくりと頷く。
後頭部にクリティカルヒット☆
ってわけですか……
「……なんでこんなの飾ってるんですか?凶器ですよコレ。」
体験者として一応、危険性を教えておく。
「凶器というか、魔よけなんだけど……。」
申し訳ないといった顔で王子様が教えてくれる。
魔よけなんですかコレ!?
道を歩けば各々の家の扉にはコレが飾ってあるんですか!?
……怖いなこの国。
改めて魔よけを見ると子供がみたら大泣きするであろう顔をしている。
じっと魔よけを見つめる私に何を思ったか誇らしげに王子様が教えてくれる。
「それは、君のためにつくらせた特製物だよ。」
「…………。」
「……?」
「…あ、ありがとうございます。」
「うん。」
このとき希が心の中で思った事は後に撤回することとなる。
おまたせしました。
更新予定を活動報告の方に書いておくのでご確認ください。