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水の都の乙女  作者: 姫青
序章
1/22

第0話:騎士と聞いて想像するものはなんですか?

ぽてり・・・と鈍い音を響かせそしゃくするはずであったみかんがコタツの上に落ちる。

「開いた口が塞がらない」とはこのことだと実感する。

11月27日土曜日9時27分。

クリスタルヒ○シ君の某番組を見ていた私、木佐原希は声を大にして叫んだ。



「さっさと引退しろ!!」

ビシッと人差し指をテレビに向けのけぞってみせる。

「うっさい」

人の感情を無視して間髪いれずに投げつけられる姉の冷たい声に

少し苛立ちながらも口をつぐむ私。


うん、だってさ。文句なんていってみ?

分殺ですよ。分殺。

多分秒殺もできるだろうけど、じりじりと苦しめるのが好きなお姉様

断言しよう、あなたはドSだと。

経験者にはわかるのです。

あの時のにっこり笑顔は氷の女王様のものだったと!!


そしてそこで口を開けて寝ているお兄様?

もともとはあなたのせいですよ!!?

いくら顔がよくてもあの時のことは一生忘れないからね……

この桁外れ兄姉めっ!

容姿端麗、頭脳明晰、と、まぁいわゆるチートですよ。この二人は。




ちょっと、過去の事がフラッシュバックしたが

まだ、熱はおさまらないので声には出さず脳内で批判大会をはじめる。



(みなさん、「騎士」と聞いて想像するのはなんですか?

えぇ、はい。そうですね、イケメンですよね?細マッチョですよね?

わかります、わかります。

世の乙女はそれを望んでいるんです。

決して、お腹の出ている老人を望んでいるのではありません。

ハゲもお断りなのです。

そうなんです。


……だから早く引退してそこの孫にその服きせやがれ、おっさん!!)



思わず人差し指をビシッとテレビに向けると、またしても横から

「邪魔」

という氷の女王様ボイスが聞こえてくる。


しまったとおもい、横目でちらちらと姉の横顔を伺う。

もちろん警戒度MAXで。

我が姉はキレると物をなげてくる。

ケータイ、消しゴム、ティッシュ、エトセトラ、エトセトラ……。

幸い、今まで凶器となるものはなげてこなかったけれど。

しかしチートな姉だ、たとえティッシュでも皮膚が赤くなるくらいにはなる。



警戒という名のオーラをだし神経をとぎすましている私を姉は一瞥し、

「鯉にエサあげてきて」

と冷たく言い放った。







……了解です、ボス。



先ほど落としてしまったみかんを口にほおりいれ

掛けてあった羽織りに袖を通し、庭に出る。

澄んだ夜空に浮かぶ月に照らされた日本庭園をかけると

その足音が聞こえたのか池の鯉がぴちゃぴちゃと跳ねる。




「………ありがたくお食べー、私がこの寒い中ご飯もってきてあげたんだから」

エサを投げ入れると争奪戦が始まった。

その様子を近くで膝を抱えて観察する


(あいつ……

ふと目に付いた一匹の錦鯉。似ている。

誰に?もちろん騎士団のハゲでデブなおっさんに!!)


一度冷めていた苛立ちがふつふつと沸き起こる。




(あれはないよなー、騎士団とか言われたら期待しちゃうじゃん。

……平均年齢高すぎなんだよ。)

「はぁ~~~」

深く長いため息をつく。




さっき見ていた某番組でとある紳士の国の騎士団が紹介されていた。

私も世の乙女の一員であるからして、騎士団とやらに期待していた。




(なのに!!CMも2つもはさんだくせに出てきたのは平均年齢64.8歳の

おっさん集団だったなんて、誰が求めた!!

しかも、その横の孫!!笑ってないであんたがあの服着なさいよ!

というかプロデューサーでてこい!

この私がじっくりと需要と供給についてお話してあげようじゃないか、フフフフフ……)








そうして一人ぶつくさ文句を言っていた私は気づかなかった。

背後に人がいることに。

そして、その人の手が私に伸びていることに。












ばっしゃーん








盛大な音と共に私は池に落ちた。




否、落とされた。

何者かによって。





ここまで読んでいただきありがとうございます。

初めての作品ですが、お付き合いいただければ幸いです。

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