黒の間
青年が目を開けると、そこは真っ黒な部屋だった。青年はおそらく20代中頃、30にはなってないくらいだ。真っ黒というのは部屋が暗いというわけではなく、天井、壁、床、あと中央に大きなテーブルとイスが10脚置かれていたが、その家具も黒い。その部屋はおそらく20畳くらいであろう。壁の何箇所かと、天井にも等間隔で埋め込みの照明が備えられており、明るさという点では申し分ないくらい照らされていた。ただ、すべてが黒かった。そして、その部屋に居たのは青年だけでなく他に6名。計7名が部屋に居た。
「え…なんなの、この部屋。あっ!サヤちゃん!お父さん!これって…?」
サヤと呼ばれた女性は、青年と同年代くらい、お父さんは50絡みくらいであろうか。
「シンくん!なんなのこれ〜!私、昨日普通に私の部屋のベッドで寝たよね…?なんか真っ黒過ぎて不気味なんだけど」
「んー…なんなんだろうね〜…てか頭が痛いわ…昨日飲み過ぎた…サヤお水くんできて〜」
何やらお父さんのほうは二日酔いのようだ。青年の名前はシン、という。あと部屋にいる4名は…
「タクちゃん!はよ起きな学校遅刻するで〜!なんか部屋も暗いし、キッチンもないんやけど!」
「え〜…今日休みじゃないん…?えっ、ここって家じゃないやんな…あれ、ていうか母ちゃんは相変わらず幽霊やんな」
何やらシン達3人と少し離れたところに、母と息子のような2人がいた。母の方はタクちゃんと呼ばれた息子が言うように、身体が透明になっていて、なんだかふわふわとしている。息子の言うことが本当なら幽霊のようだ。そしてそのタクちゃん親子、シン達の向こう正面に残り2名がいた。
「アルド、ここはどうやらルミノース王国ではないところらしいぞ。それに魚屋もいない」
「うん、うん。グラちゃん、僕たちさっきまで魚の丸焼き食べてたよね…?」
グラちゃんと呼ばれた、耳が尖ったエルフの少女は不思議そうに部屋を見渡している。アルドと呼ばれたのはおよそ8〜10歳くらいの男の子だ。この2人は明らかにその他の5人とは住む世界が違うようないでたちである。そのグラちゃんにサヤが声をかける。
「ちょ、ちょ、ちょっと!あなたってもしかしてファンタジーの世界にいるようなエルフ…じゃないの??アニメとかおとぎ話で出るような。そっちの男の子は普通の男の子みたいだけど…」
「ん?お前はこのアルドと同じ人族だな。そんなに焦らずとも私はちゃんと聞いているぞ。ファンタジーとかアニメという言葉はよくわからないが、私はエルフ族には間違いない。あちらのふわふわしている女以外はみな人族のようだな」
「わっ!やっぱりエルフなんだ!すごーい!なんでエルフさんと同じところに、私達がいるのかはわからないけど…でもやっぱすごーい!ねぇねぇシンくん、パパ!こちらエルフさんだよ。あ、私は進藤 紗弥って言うの。こちらは私の彼氏のシンくん、あとついでにパパ」
「ついでにはないだろ〜…」
パパは二日酔いに苦しみながら、不平を漏らした。
「エルフ族が凄いかどうかはまぁわからんが…あ、私はグラティアという。こちらは人族のアルドだ」
グラティアの自己紹介を聞き、サヤと同じくびっくりしているシン。
「うわー、ホントにエルフさんっているんだね。お話の中だけの存在かと思ってたよ。シンです、よろしくお願いします。それにしてもこの真っ黒の部屋はなんなんでしょうね」
「シンくん、あっちのお母さんと息子くん?にも声かけてみよーよー。おーい!」
サヤは割と誰にでも声をかけれるタイプのようだ。サヤの声に反応して、幽霊お母さんとそばにいたタクちゃんが反応した。
「あっ、はじめまして。黛 彩海です。こちらは息子の拓海です。なんとなく気になってるかもですが、私死んでるので幽霊です」
一瞬みんなが固まった。少ししてグラティアが聞く。
「幽霊とは死んで実体のないようなものなのに、見えているのはなぜなんだろうな。魔法のようだな。生命と死を司る精霊、ヴィータとモルスの力だろうか…」
興味ぶかそうに、グラティアがアヤミの身体を手ですり抜けながら聞く。
「ちょっと、グラちゃん。幽霊さんに失礼だよ〜」
一通り皆の自己紹介が終わった。
───ビィー!!
警報のような大きな音が部屋に響く。
「わっ!!何この音!?」
すると、どこからか何か機械のような声が聞こえてきた。
『ようこそ。黒の間へ』
「「「黒の間??」」」
『僕の名前はニゲル。これから集まってもらったみなさんで、戦いあってもらうよ』
「戦い!!?」
急に聞こえてきた声の主、ニゲルとは何者なのだろうか?それに皆で戦うとは?
次回へ続く。
ニゲル戦記の参加者
◯松岡 心 26歳
◯進藤 紗弥 26歳
◯進藤 聡 48歳
◯黛 拓海 17歳
◯黛 彩海 死亡
◯グラティア 248歳
◯アルド 8歳




