プロローグ
赤く ただ赤く
見渡す限り赤く 燃えていた。
村も、人も、何もかも
その小さな村は全てが炎に包まれていた。
全てがとんでもない熱さに包まれ、すべての命が手遅れだった。
たった一人を除いて
村の中心の一軒家。
その家も崩れ、そこにいたはずの2つの命も燃えていた。
そこに小さな少女の泣き声が響く
熱いよ 助けて お父さん お母さん
それしか言えなかった。
そこにいたはずの両親が死んでいることは少女は分かっていた。
ただ、叫ぶしかなかった。
体に火傷を負い、その熱さに喉を焼かれても、ただ叫ぶしかなかった。
大きな獣のような声と、金属音だけが響く
その少女の視界には、見渡す限りの炎と焼けて黒くなった両親。
そして、刀を持った男が立っていた。
黒髪、返り血がついていた。
少女は、幼いながら分かった。この男が両親を殺したと。
ただ泣き叫ぶことしかできなかった少女は、この瞬間、復讐の鬼となった。
目に、憎しみと怒りが宿る。
「殺してやるぅ!」
今出せる精いっぱいの声で叫んだ。
男がこちらを見る。ゆっくりとこちらに近づいてくる。
不思議と恐怖はなかった。
そして、膝を立てて、目線を合わせてきた。
「よくもお父さんとお母さんを!殺してやる!」
全力で言葉でかみついた。ただ、それしかできなくて、涙が目からあふれてきた。
「俺が憎いか。俺を殺したいか」
その男が、目の前に、持っていた不思議な刀を地面に突き刺した。
「ならば強くなれ。強くなって、この剣で、オレを殺しに来い。」
「俺はここで待っている。行け!!!」
少女は、その刀をもって走った。
なるべく遠くへ その男から離れるように・
熱さなど気にせず、遠くに遠くに
ただ、その少女の赤髪は、どんな炎の赤より、赤く美しかった。