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「うーん……。パッと見た感じミューちゃんたちは居なそうだけど……」


 だが、実際に上陸してみると分かる。ここは怪しい。私は兄と違って、他者の魔力を感じ取るのが得意というわけではないけれど、ここは何だか……そわそわする。


「まあ、とりあえず探してみようかな。ええと……―――ん?」


 さっそく今、何かが引っかかったような―――


「気のせい?」

「気のせいじゃないぞ?」

「あ、やっぱり?」


 返ってきた言葉につい相槌を打ってから、あれ?と思う。

 今、声が聞こえたよね?

 そのまま視線を周囲に向けるが、これといって生き物は見つからない。あれ?


 うーん、と少し考えた後、


「もしかして、幻聴だった?」

「違う」

「これも幻聴……?」

「違う!」

「まあ、幻聴なんてよくあるよね」

「そんなことあってたまるか!―――おい待て。右下だ、右下!!」


 幻聴なはずの声につられて右下に目を向けると、……うん?


「鳥のぬいぐるみ?」


 何でこんなところに、と疑問に思いながら木々の隙間からはみ出ているぬいぐるみに手を伸ばした。


「違う!僕だ、『   』だ!」

「……ピーくん?」


 こてん、と首を傾げると、目の前のぬいぐるみから、どことなくホッとした雰囲気を感じた。ぬいぐるみなので、あくまで何となくだけれど。


「おい、今アウローラの声が聞こえなかったか!?」


 ガサガサ、と葉が擦れる音がしたと思ったら、ひょっこりと虎っぽいぬいぐるみとヘビっぽいぬいぐるみが現れた。

 これは、まさか……。


「ミューちゃんと、リューくん?」

「…………なんだか、この姿で分かられるというのもな」


 非常に微妙な声色だったが、正解だったらしい。

 なんかすみませんね。でも、分かって欲しいから出てきたんじゃないの?


 なんとも言えない沈黙が落ちたが、このまま黙っていても仕方ない。

 なんでぬいぐるみ?という疑問が頭に浮かんだが、今聞いたところで私に解決できる問題ではなさそうな気がしたので、岸にいる兄とニナに丸投げすることにする。世の中には適材適所という素晴らしい言葉があるのだ。


「……とりあえず、向こう岸にお兄ちゃんとニナがいるから、移動する?」


 そういえば、兄から様子を見に行けと言われて来たのはいいが、実際にミューちゃんたちを見つけたらどうすればいいかは聞いていなかった。

 今から聞きに戻ってもいいけれど、どうせみんなを運ぶのなら、連れて戻った方が早いし、無駄に往復せずに済むだろう。


「ただまあ……問題はどう運ぶかなんだよね。お兄ちゃんを連れて往復してもいいけど、面倒だから一回で終わらせたいよね」


 手のひらくらいの大きさとはいえ、3…匹?体?のぬいぐるみを一度に持って移動するのは難しい。アウローラちゃんの手はそこまで大きくないのだ。


 ワンピースのポケットに入れることも考えたが、そもそも小さめのポケットしかついていないので、ぬいぐるみを入れることができない。

 かといって、無理をして何とか手に抱えたところで、バランスを崩せば即座に湖に落としてしまう可能性大の、不安定な未来が待っているだけだ。


 どうしようかな、と悩んでいると、ミューちゃんが「アウローラ」と私の名前を呼んだ。


「その巾着に、我々を入れて運ぶのはどうだ?」

「お、それいいかも。……あ、いやでも待って」


 巾着の中にはシュアの花が入っている。ミューちゃんたちを入れるとして、この花をどうしようか。


 シュアの花を失くすとお兄ちゃんから怒られそうな気がするので、雑には扱えない。ミューちゃんたちの救出のためだと言えば許してくれるかもしれないけれど、それとこれとは話が別だと言われる可能性も捨てられない。

 怒られ慣れている私であるが、別に自ら進んで怒られたいわけではないのだ。避けられるなら避けたい所存である。


 とはいえ、この巾着はそれなりの大きさがある。花を潰さずに入れるために余裕のあるものを選んだため、ミューちゃんたちが全員入れるくらいには大きい。

 ……まあ、シュアの花くらいなら手に持っていても大丈夫かな。


「ミューちゃん、これ持ってて」

「よいぞ」


 一旦巾着の中を空にする。


「……うん。よし、ミューちゃんそれ返して」

「うむ」


 ミューちゃんが返事をしたその瞬間だった。

 ピカッとミューちゃんの体が強く光り、次の瞬間、その光が上へと放たれた。空高くまで上っていった光は、そのまま見えなくなってしまう。


「え。何、今の」


 発光していない普通のぬいぐるみに戻ったミューちゃんに視線を向けると、「あ」と何かを思い出したような顔をしていた。ぬいぐるみなので分かりにくいが、ぬいぐるみなのに分かる程度に表情を変えていた。これは確実に何かを知っている。


「え、何。どうしたの」

「あー…いや、何でもない」

「でも光ったよね?」

「幻覚じゃん?」

「私が言えたことじゃないけど、無理あるよね?」


 じっとミューちゃんを見つめるが、逸らされたままどうにも視線が合わない。

 ここはもう、地面に寝転がってでも視線を合わせるべきか、いや私が持ち上げればよいのでは?と悩んでいると、見かねたらしいリューくんが声を上げた。


「とりあえず、ルイのところに行こう」


 ……私も偉そうなことは言えないけど、お兄ちゃんに説明を押し付けようとしているような……。


 そんな疑いが胸を過ぎるけれど、まあ説明してくれるなら誰でもいいかと思い直す。

 そうと決まればさっさと戻ろうと、ぽいぽいっとぬいぐるみたちを巾着の中に詰め込み、私は再び湖の上を歩いて岸へ向かった。



 そして無事に辿り着いたその先。


「アミュリエット様がいらっしゃったんだな?」


 なぜか私が口を開くよりも早く、お兄ちゃんから確認された。

 どうして分かったんだろう、と不思議に思いながら頷くと、そうだろうなと一度首を縦に振ってから、


「おめでとう、ローラ。第9の試練、通過したぞ」

「え。今なんて?」



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