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短いですが、切りが良いので。
妙に内容の濃かった待機時間を経て、ようやく第9の試練が始まった。
どうやら今回の試練では、第5、7の試練と同様、神官と共に行動するらしい。
私はなんと、兄と行動することになった。今回は指名制ではなく、厳正な抽選の結果である。
私が相手だと知った時の兄は、大変嫌そうな顔をしていた。ひどい。
ちなみに、エドの相手はリリアちゃんの婚約者くんだった。婚約者くんを送り出すリリアちゃんは、とてもにこやかな笑顔だったけれど、もし婚約者くんの相手が女神官だったら果たしてあんな表情をしていただろうかと考えて、途中で怖くなったので考えるのを止めた。
「ローラ。とりあえず移動するぞ」
「いいけど、どこに?」
兄の言葉に首を傾げると、「まずはローシャ湖を目指す」と返ってくる。
「ローシャ湖って?」
「北にある湖だ。……なんだ、他に行きたい場所でもあるのか?」
「ううん。そんなことないけど、……なんか、やる気だね?」
私の言葉に、兄は「まあな」と頷く。
「聖獣が行方不明だなんて、今まで聞いたことがない。それに、光だけでなく他の教会も同様の事態に陥っているんだ。次期聖人を選定する試練が重要なのは間違いないが、今回については、試練に全力を尽くすことが事態の収束にも繋がる以上、やる気を出さない理由はないな」
そう、なんと今回の試練では、聖獣の存在が必要不可欠なのだ。聖獣にシュアの花を捧げ、聖獣からとある何かを受け取ることで試練達成となるらしい。
何を受け取ればいいのかは教えられていないが、受け取ったら『受け取った』と分かる仕組みになっているそうだ。過去にも同様の試練が行われており、それを知っている人は何を受け取ればよいか分かっているようだが、あいにくそんな話は聞いた覚えがない。
隣でキュリさんが「ああ」と何かを理解したらしい顔で頷いていたけれど、そんなに有名な話なのだろうか。正直よく分からないが、私が分からなくてもお兄ちゃんが分かっていれば問題ないので、最終的に私は考えることを放棄した。
とはいえ、そもそも聖獣が見つからないことには試練を通過することができないことは分かる。つまり、まずは聖獣を見つけることから始めるべきだ。
ちなみに、本来の予定では教会が聖獣にお願いして、ある程度決められた範囲内にいてもらうはずだったらしいが、お願いしようにも相手がいないのだからどうしようもない。
そのため今回の試練は、捜索範囲内が全世界だという、過去に類を見ない、恐ろしいほどの難易度になってしまった……との話である。
「そう考えると、相手がお前だったのは丁度よいな」
「なんで?」
「遠慮する必要がないからだ。―――いいか、ローラ。道中はお兄様の言うことに従いなさい」
「ふむ。従ったら何か良いことがある?」
「ケーキを買ってもらえるよう、父さんに一緒に頼んでやる」
「よぅし、仕方ないなあ!」
ここで自分がケーキを買うと言わないところが、兄が兄である所以である。
けれど、誰が買ってくれたものであれ、ケーキはケーキだ。手に入れられるなら、細かいところには目を瞑ろう。
「そうと決まればさっさと移動するぞ」
そう言って兄が取り出したのは、何だか段々と見慣れてきた転移の神具である。
周りが徒歩で移動を始めているところを見るに、最初から転移の神具を使う者は少ないのではないだろうか。
それに、転移の神具って、地面に叩きつける使い捨ての道具だった気がする。それをこんな序盤から使ってもいいのか。
そう思って問いかけると、
「使い捨ての物と、繰り返し使える物がある。俺が持っているのは後者だが、転移の神具は魔力を大量に消費するからな。普通、ある程度指針が決まるまでは使うのを控えるだろう。それに、今は試練に参加していない神官たちも使用しているから、これまでの試練と違って、事前に魔力を供給してくれる神官もいなかった」
「え。じゃあ、私たちもこんな最初から使っていいの?」
尋ねると、何言っているんだ?と返された。
「俺とお前だぞ?魔力が不足する不安がないのに、こんな便利な道具を使わない手はない」
「なるほど?」
よく分からないが、問題ないなら問題ない。
頷く私に、兄が満足そうな顔をした。
「よし、疑問は解消したな?じゃあ、そろそろ行くぞ」
そして私たちは転移した。




