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派手な爆発音が、何度響いたか分からない。
絶え間なく竜の近くで爆発を起こし、竜が避ける方向を水や火で誘導し、土壁を作って引き返せないように仕向けた。
そうして、ついに竜たちを退けた頃には、辺り一面、見える範囲は立派な荒野に成り果てていた。
まあ、竜と戦ったにしては人的にも物理的にも被害が小さいのは確かだろう。私も、自然保全のために頑張った。褒めてほしい。
「じゃ、2人とも助かった。本当にありがとう」
なんか一周回って清々しい顔をして、ロイドたちは去っていった。ルーシェに至っては、竜との戦いぶりを間近で見たからか、気づいたときにはエドのことを様付けで呼ぶようになっていた。
あれはもはや崇拝の域に突入していたに違いない。
「色々あったけど、シュアの種は手に入ったね」
ロイドいわく、竜たちの巣で拾ったとのことである。
私が言えた義理じゃないけど、そういうことをするから、竜たちが怒り狂っていたんじゃないの?
「考えていた手に入れ方ではないけどな」
はあ、とエドが深く息を吐く。どうやら、エドなりの考えがあったらしい。
私としては、結果的に手に入れば過程は何でもいいんじゃないかなと思うけれど、その辺りの考え方は人それぞれなのだろう。仕方ない。
「これからどうする?神殿に戻る?」
「戻る。……これ以上ここにいても碌なことがなさそうだ」
「そっか。ところで、戻る時ってどうするの?」
「神具がある」
……ああ。ルーシェさんが間違って投げて虫を転移させたアレか。
目の前に出されたそれをしげしげと眺めて、そうだ、と思いついて顔を上げる。
「試しに私が使ってもいい?」
「絶対に嫌だ」
間髪入れずに断られた。エドのけち。
さて、無事に戻ってきましたアウローラちゃん。
戻ってきた順番でいうと、なんだかんだで3番目だったらしい。割と早かったようだ。
特に他の候補者と接することもなく、早々に正院へと移動すると、既に帰っていたらしいフェルチと会った。
教会にいた神官たちはどうだったかと問うと、「愚か過ぎて語る気にもならない」と至極穏やかに言われた。怖っ。
その後、サイラス先生にも偶然会って、試練はどうだったかと聞かれたので、「エドが頑張っていました」と答えると、何とも微妙な顔で頷かれた。
もう少し違う感想が聞きたかったのかなと思ったので、「あと、シュアの種ってなんか気持ち悪い見た目ですね」と言ったら、「……大変斬新な感想ですね」と何かを諦めたような顔で頷かれた。
あれ?なんか間違えました?
それから、今度はお母さんに会って、「ローラ、今回はとっても頑張ったみたいね」と褒められた。
どうやら、竜を追い払った時に、私が自然保全に努めたことを評価してくれたらしい。
エドの勢いは森一つなくなる勢いであり、まあその勢いも竜と対峙した際には仕方ないこととはいえ、それを防げたのは素晴らしいことだそうだ。
その他にも、生態系がどうのこうのと教えてくれたが、正直ちょっとよく分からなかった。なんかごめん。
そして最後に、エドと1時間ぶりに再会した。
なんだか非常にげっそりしていたので、どうしたのかと問いかけると、「何でもない」と言われた。
だが、本当に何でもないようには全く見えなかったので、とりあえず、サイラス先生から貰った飴玉をあげた。
すると、何も言わずに口へと運び、ころころと口の中で転がし始めた。……うーん?
どうしたんだろう、と首を傾げていると、ちょうど通りがかった兄が「お、エド」と近寄ってきた。
「ねえ、お兄ちゃん。エド、どうしたの?」
なんだか遠い目をしているエドの目の前で、こそこそと尋ねると、「ああ、実は」とこそこそ教えてくれた。
どうやら、聖人の候補者の中に、エドの婚約者候補……と言われている人がいるらしい。神殿に帰還後、速やかに私を正院へと送り届けてから、「用事がある」と本院に戻って行ったのだが、そこで件の人と会ったようだ。
まあ、エドの自称婚約者候補など、今までだってよく登場してきた。過去を振り返っても、両手では足りないくらいの人数がいた。
幼い頃は何度も魔力爆発を起こして、周囲に多少畏怖されていたらしいが、そんなもの昔の話である。
今となっては、魔力爆発も無闇に起こすことなく、容姿も良ければ頭も良い素敵な王子様である。女の子が憧れるのも無理はない。
だが、リュースフォルトの国王夫妻から宛てがわれた婚約者候補ではないし、そもそもエドは神官なので、たとえ国王から命じられたところで従わなければならない理由もない。
神官になったことを機に王位継承権は破棄しているらしいし、……とはいえ、国王の子供だから王子なことに変わりはないし、神官としても上位神官なので社会的地位は高い。要するに、結婚相手として魅力的ということだ。
「でも、こんなに疲れているなんて珍しいね?」
「一風変わった性格だって話だ」
「へえ。それってどんな?」
「何でも、エドを神の生まれ変わりと言っているらしい」
「ふーん、それってどこの神?」
「さあな。聞いていた神官もよく分からなかったらしい。……ちょうどいい。本人に聞いてみよう」
そう言って兄がエドに話しかける。
飴玉を食べ終わったらしいエドが、ぼんやりとした顔で首を横に振った。
いわく、「俺も知らない」とのこと。
「まあ元気だせ。熊に噛まれたとでも思えばいい」
ねえそれ重症じゃない?下手すれば致命傷だよ。
「そうだな……」
やばい突っ込まない。これは重症だ。熊に噛まれたレベルかもしれない。
兄が私を見る。私も兄を見る。
数十秒が経過する。
先に折れたのは兄だった。
「ローラと一緒に寝るか?」
かと思ったら人身御供にされた。なんで?
「それもいいかもしれない……」
なぜか肯定された。ねえ本当に大丈夫?
「ローラ。きっと明日お礼にシュウェルのプリンを買ってもらえるぞ」
エドに聞こえないように兄が囁いた。ふむ、なるほど?
「さ、張り切って寝よう」
私たちはエドの部屋に向かった。一応、兄もついて来た。
ーーー次の日。
「昨日のお礼」
寝て気力が回復したらしいエドがくれたのは、シュウェルのプリンと焼き菓子のセットだった。やったね!




