第4章 1幕 4 劫火
-偽りの竜王-
「な…なんでテメェがそのバケモンを従えてんだ!それはあの英雄の騎竜だろ!!」
あり得ない、100〜200年前に猛威を奮ったとされるこのミッドガルド近辺に伝わる英雄
「あぁそうだよ。あと、私がギドラの騎森妖精だ。」
「…え?」
(こいつが、あの英雄トレス…?)
「ぎやーーーーー!!!!!」
「正気かあのクソエルフ!!!」
奴があの”ドラゴン?”を出してから、突然人間達が騒めき始めた。
「あの野郎ギドラだしやがった!!」
「ちょっとトレスさん!まだ俺達いるんですけど!!」
「だまれ愚民ども、よいかお前達がそこいにるから悪い。」
(なんなんだコイツらは、狂ってるのはエルフだけじゃねぇのか?分からん、分からん!!)
-滅びの焦吐息-
まるで、この平原全ての気体を簒奪するかの如く、周囲の空気が奴の騎竜に一瞬で呑み込まれる。
(あ…死んだわ、コレ)
「チィッ!!総員、転移魔法が使用できるものは即座に同志達を引き連れトレス様の背後へとへ避難!!間に合わぬものは、やむを得ん!耐炎の鱗衣の使用を許可する!!」
あのエルフの隣にいる、黒髪の男から流れる様な指示が放たれた。
人間達は、やれ”正気じゃねぇ”だの、”覚えてろクソエルフ”だのと罵詈雑言を吐き捨てながらも一矢乱れぬ動きで命令を遂行していく。
あるものは他者を抱きしめ瞬時に消える。
あるものは、虚空から取り出した赤褐色の鱗の様な装いを身に付け地面に魔法を放ちその中へと退避する。
では、俺の部下。ゴブリン達はどうか。あまりの恐怖により失禁しているもの。腰を抜かし、虚空を見つめるもの。頭を抱え蹲り、父や家族と思わしき者の名を叫ぶ者。
あぁ、我らは戦う前から敗北していたのだ。
もしかしたら、今回の”超級のアイテム”の出現も人間達、いやこのエルフが流したブラフだったのかも。
よく考えたら分かることだった。
情報が圧倒的に足りないのだ。そりゃ、無知なものが相手の職業を見誤るのも当然だ。
だから、亜人は人間に勝てないんだ。
純粋な強さでも、数の暴力でもない。
“情報”
この一点だけで、戦局を打開する案は出せた筈だ。
それこそ、このエルフが竜騎士と分かっていれば、”あのアイテム”を使用し無力化する事もできただろう。
いや、それこそがコイツの狙いで自らを囮とし、我らのアイテムを簒奪するつもりだったのかも。
とは言え、全ては後の祭りか。
(こんな事なら、死んでも良いから一度“アルフヘイム”に行って女エルフと一発かましたかったぜ。)
そんな、感傷に浸る中、オンジは全てを呑み込む焦熱の劫火、圧倒的な暴力を前に、炎の津波の中へと消えていった。
最新話更新ですぞ!
さて今回はニチガイ主人公トレスさんの職業の事実上の初お披露目です
この竜騎士ですが、ユグドラシル最強の職業の一つと言われるほどのブッ壊れです
ですが、はい
尋常ではなくデメリットが多いです
まず、竜に戦闘を任せ切ると、とんでもない事になります
竜は竜の形をした魔力体ではなく、しっかり意思があります
これが、この職業の全てのデメリットに起因し、トレスさんだからこそ噛み合ってるんです
簡単に言うと、トレスさんがアパート大屋さん
そして、金払ってギドラさんに住んでもらって、尚且つ料金は自分が払わなければいけません
そして、まだこれ以上のデメリットが2つ?あります。
ちなみに、最初の人間の王様も竜騎士だったとか何とか。
どんな最後を迎えたんでしょうね?
そして、まず習得するまでも面倒くさい上に習得したらしたで面倒くさい。
よほどの変人でなければ、こんな職業は選びません。
当然これと同等でもっと制約の少ない職業がありますからね。
なにより何が厄介なのか。
この神世界ユグドラシル。
ゲームではないので、職業の振り直したが基本出来ません。
振り直すことは一応できますが、それは事実上今までの人生を棄てる事と同義だからです。
かなり面倒くさい世界です。
さぁ、これからトレスさんの愉快な仲間達が続々登場していきます。
乞うご期待!