紙片の四 (詩の仮置場より)
虹は存在しない
ただ空気中の水に反射した光があなたの網膜に像を結んでいるだけで どこか遠くに虹があるわけではない
そこにあるように見えるが 近づくことも触れることもできはしない あるいは
あるいは全身に虹を浴びていると言うこともできよう
例の反射した光は目にだけ射し込むものではなく あなたのいる場所全体に等しく注がれているのだから
── 虹浴び
人生を賭して、さてどの道で二流になるかと空を見上げたものだ。
何度も立ち止まって、走りだしては転びそうになって、もちろん恥ずかしいから、それをごまかしてきたことも、私は覚えている。
今もまた、この道を進み続けた先になにを見るのか、そもそもこの道は続いていくのか、なにもわからないまま歩いている。
やりたいことが見つかるかどうかは運次第。もがきつづけていても、結局は偶然だった。
ただ興味を持った。そして業界に入ってみた。そうやって「やってみたい」と「なんか違う」をくり返してきたのだった。
今もまだ自分のダメさを毎日噛み潰して苦い顔になりながら、けれど今はまだ序章だから全然やめようとは思わない。つねに人生という歴史のさなかにいるのだと知っているから、なにもかもを投げ捨てるなんてもったいないことはしないよ。
すこし遠くを見ながら歩いていこう。
── 深視力
わたしはくらげだ
海流に逆らうことなどできない
喰われることのなかった幸運に守られ 泳ぎつつも流され ゆくえを決められもせず漂い続けてきた
わたしはこう生きていくんだ! と断言できるような熱意や実力を持っているわけではない
わたしは一流にはなれないと弁えている だから巨人と背比べをするつもりはない
けれども天才の高みを目にしたなら、それを目指すことはできる 理想へと近づくよう もがくこの身があるのだから
── くらげ