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24話 配信とテレビ

「皆さん、お久しぶりです。マナです」


 テレビ前でのあいさつが終わると各々で配信をつけ始める。私も最近新しく買ったピンマイクを着けて持ってきたドローンカメラを飛ばして配信をつける。


『配信感謝』

『配信感謝』 

『待ってました~!』

『マナちゃんおひさ~』

『新MV聞いたよ~』

『新しいMV滅茶苦茶良かった!』


 配信をつけると勢いよくコメントが流れていく。その中に新しく配信したMVへの感想もあって嬉しくなる。


 というか何だか最近久しぶりの配信ばっかりになっちゃってるな~。もうちょっと頻度があげられたらいいんだけど。そんな思いを胸に秘めつつ話していく。


「ありがとうございます。新曲はこの後、歌うつもりですので是非楽しみにしておいてくださいね。あっそれと皆さん聞いてください。今回の配信、なんとテレビで生放送されてるんです! 凄くないですか?」


『えっテレビ!? マジ!?』

『凄い』

『おめでとうマナちゃん!』

『興奮して声裏返ってるの可愛い』

『何チャンネルでやってるの?』


「8チャンネルのダンジョンキングダムっていうテレビ番組です。良ければそちらの生配信を見ながら私の配信も見ていただけたらありがたいです」


『見る見る』

『マジじゃん、すげー』

『私テレビあんまり見ないけどマナちゃんが出るなら見るか』

『録画しとこ。後で見返す用で』


 久しぶりの配信な上に特別な配信だからか視聴者数の伸びが異常だ。さっきまで二万人だったのがもう五万人を突破している。


「今回のダンジョンは『摩天』と呼ばれるダンジョンです。普通のダンジョンよりも大きいらしくて一階層進むのですら結構時間がかかるみたいですよ」


『あー、あの大規模ダンジョンね』

『確か最近、謎のうめき声とかが聞こえてるんじゃなかったっけ?』

『なんか記事で読んだな』


「え、やめてくださいよ。一気に怖くなってきました」


 まさかのホラー要素の話題が噴出したことに怖くなり、AZUSAさん達の方へ戻ろうかと考えてしまう。でも、なるべくバラけて配信してくださいとか言われたし我慢我慢。


「歌ってれば怖くないですよね。昔、絵本でそんなのを読んだことがある気がします。おっとそんなことを話していたら出てきましたね」


 そんなことを話していると目の前に大きな鎧を着た熊の魔物が現れる。以前のダンジョンでは見たことのない魔物だ。このダンジョン固有の魔物なのかな?


「おーっと~、ここでは歌姫マナがアーマードベアと遭遇しているぞ! 果たしてどんな戦いを見せてくれるのか!」


 気が付けば後ろにテレビのリポーターさんが来ていたようだ。さっそく新曲歌っちゃおうかな。


「それでは皆様、お聞きください。『剣劇』」


 歌い始めた瞬間、私の周りに無数の剣が具現化され漂い始める。歌に合わせて私が右手を前にかざすと、その剣の群れが一斉にアーマードベアへと迫っていく。


 激しい金属音を打ち鳴らしながらアーマードベアが耐えている。

 だが、鋭い剣先が次から次へと体へ当たるたびに纏っている鎧が砕けていき、破片が零れ落ちるのが見える。倒れるのも時間の問題だろう。


『すげー、剣劇だとこんな能力になるのか』

『いつ見ても強すぎるよね』

『でもマナちゃんくらい歌が上手くなかったらここまで強くなってなさそう』


 コメントを見て自分で言うのもなんだけど歌の上手さによって能力の強さが変わるっていうのは強ち間違ってないんじゃないかと思う。実際、全然歌えなかったら具現化できないし。


 あとは曲がいかに自分に合ってるかどうかも大事かも。他の人の曲を歌うよりも私の曲を歌った方が威力が増している気がするし。


「いや~私マナさんの大ファンでして。こんなに間近で歌を聴くことが出来るなんてそして戦闘を見れることになるなんて……感無量でございます」


『おいずるいぞ、俺と変われ』

『私もマナちゃんをもっと間近で見たい~』

『でも俺達がマナちゃんと同じ階層に潜ったらすぐ死にそう』

『それはそう』

『ダンジョンが危険なお陰で逆にマナちゃんが守られてる気がするww』


 やがてアーマードベアの鎧が剣の嵐によって剥がれ落ち、一本の剣が胸に突き刺さったところで倒れ伏す。どうやらサビに行く前に倒してしまったようだ。


「……すみません、サビ前で終わってしまいました」


「良いんです良いんです! お楽しみは最後まで取っておかないとね! さあ次はAZUSAさんを見に行ってみましょう! それではまたCMの後で!」


 こうして私のテレビ出演は少し不完全燃焼気味でスタートするのであった。

ご覧いただきありがとうございます!


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