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13話 自分の曲

『配信感謝』

『一昨日ぶり~』

『カッコいい! 何その衣装?』

『仮面と相まって滅茶苦茶似合ってるー』


 美穂ちゃんと出かけた次の日、さっそく配信で昨日買ったドレス風鎧を身に着けて配信を開始する。皆の反応が好印象で嬉しくなる。


「ありがとうございます。昨日買いに行ったんですよこの衣装。夏用にも変更できるらしいので恐らく配信内では基本この格好で過ごすことになると思います」


『いいねー』

『配信用衣装カッコよすぎ!』


 視聴者数は2万人。一日休んだけどあまり影響はなかったみたい。

 登録者数も順調に数が増えていって今のところ80万人に届きそうだ。この調子で100万人までいかないかな? そんな甘くはないか。


「それでは一昨日の続きから始めますね」


 記録石を使ってダンジョンの20階層の水晶へと転移する。そして近くにある階段から21階層へと向かっていく。


 今日はAZUSA居ないみたい。まあ忙しいし当然だよね。ていうか一昨日あそこまで配信に居てくれたのがもはや奇跡に近い。


 それから新しい衣装を身に纏って魔物を狩っていってダンジョン攻略を続けていく。

 少し使ってみてこの衣装について感じたことは、まずドレス風の鎧なのに思ったよりも動きやすい。

 あと少し攻撃が掠るくらいならダメージが無い。防御力もかなりあるみたい。


「20階層までと比べてかなり魔物が強くなってきましたね。今日は行けて25階層までかもしれないです」


 かなりの時間をかけて22階層まで到着すると時計を確認して限界を知る。

 幸いにもこれからはどうか分からないけど、22階層へと繋がる階段のすぐ横にはショートカット用の水晶が浮かんでいるから次は最悪ここから再開することができる。


『まあ20階層以下だもんね』

『こんな深いところまで潜った事ねえぞ俺』

『歌姫なら行ける行ける』

『てかさっきからレベル6が野良で出て来すぎな』

『そいつらを軽く屠ってる歌姫もヤバいけどな』


 これだけのコメントが流れていく中であまり攻略できないことに対する不満の声が上がることがなく、ホッとする。


 それにしても一気にレベルあがったな~。ここまでレベルが上がると30、40階層になった時、実力的に果たして本当に攻略できるようになるかが不安になってくる。


 一応、今の計算では一日で最低5階層いくとして今日を入れてあと六日で50階層に到達できる。


 そのころになれば収益化の申請くらいはできるかな? 

 私が配信しているこのサイトは収益化の申請が他よりも通りやすくなっているらしい。

 申請してから1週間くらいすれば通るらしいからその時に通っていれば武器とかも買って良いかもしれない。


『てか今更だけどドレス鎧が標準装備になるとかいよいよ姫だよな』

『歌姫ってワードが当てはまるわけだ』

『ライブとかしないの? 歌姫』


「ライブですか。そりゃあやれたらやりたいですけど、どうやったら出来るのかが分からないですし。そもそも私、自分の持ち歌もないので」


 今のところ、あの輝かしいステージに立ちたいっていう思いはあるもののそれを実行に移せていなかった。

 ある程度、登録者数が増えてきたら誰かに作曲頼もうかな? でもああいうのってどう頼むんだろ?


 そんな思いを抱えながら結局、その日の配信では最初に言った通り、25階層までしか攻略できずに終えるのであった。



 ♢



「あれ? 何か来てる?」


 ダンジョンから帰ってきた私は仕事用に作ったメールアカウントにメールが一通届いているのに気が付く。

 美穂ちゃんに言われた通りにちゃんと配信サイトなどの諸々のSNSのプロフィールにちゃんと仕事用のメールアドレスを貼っておいたのだ。


 何だろう? もしかして噂に聞く案件依頼とか? 


 少しウキウキしながらメールを起動して件名と送り主を確認する。


「楽曲提供のご依頼!? それにAZUSAから!?」


『マナ様。初めまして。私、AZUSAのマネージャーを担当しております白石瑠璃と申します。この度、弊社事務所所属のAZUSAの方からマナ様へと楽曲を提供したくご連絡させていただきました。ぜひマナ様と共に作品を作り上げられれば幸いです。お忙しいところ恐縮ではありますが来週の土曜日までに一度こちらのメールに返信という形でご連絡いただけますでしょうか? ご検討よろしくお願いいたします』


 メールの本文を読んでいく内に口角が上がっているのが自分でも分かる。

 作曲の依頼をしようと思っていたところに楽曲提供の話がそれも憧れのAZUSAから来るのだ。これで嬉しがるなというのは無理な話だろう。


 もう一度送り主の名前とAZUSAが所属している事務所『シャーロック』のホームページを調べて本物であることを確認すると私は早速了承の旨のメールを送るのであった。

ご覧いただきありがとうございます!


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