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11話 身バレの危機

「ねえ凄いよ茉奈!」


「こ、今度はどうしたの? 美穂ちゃん」


「どうしたもこうしたもないわよ! とにかく凄いんだから! ほら!」


 毎度のことながら周りには聞こえないように努めるも少し上ずった声でそう言いながら美穂ちゃんが携帯をこちらへと見せてくる。

 そこにはいつも配信内容を呟いているSNSのページが開かれている。今度は何があるんだろう?


「気づかない? ほら、このトレンドのところ!」


 美穂ちゃんに言われてトレンドを見るとそこには歌姫マナという名前が表示されていた。えっ、私トレンドに載ってたの? いつの間に。


「え、気付かなかった」


「これ凄いよ! 茉奈、あんたマジで今時の人だよ」


「そう言われても……実感がないからな」


 トレンドに載ったのは正直嬉しい。もしかしたら初配信の時も載っていたのかもしれないけど、それでも確認したのは今日が初めてだから嘘じゃないかと疑うほどに驚いている。


 でも同時に怖くなってくる。今までは配信に来てくれる人達の間だけでやり取りしていたのが他の人にまで伝わっていくのが。正直、こんなことになるとは思っていなかったのだ。


「まあ実感がないのは仕方ないわね。つい最近まで普通の女子高生だったもの」


「うん、そうなんだよね」


 ていうか普通の女子高生って認識は今でも変わってなくて。変わったのは私を取り巻く環境だけなんだ。


「あっ、そういえば美穂ちゃん。今日AZUSAのコラボカフェ行くじゃん? 家帰ってからにする? それか制服のまま行く?」


 このまま配信の話をしてるとクラスメート達にも聞こえると思った私は話を切り替える。

 まあ実際本当に聞きたかったことなんだけど。


「家帰ってからでいいんじゃない? せっかくカフェに行くんだったら服着替えたいし」


「オッケー。分かったよ」


 そう。今日は美穂ちゃんと一緒にAZUSAがコラボしているカフェに行くのだ。


 そこではBGMがすべてAZUSAの曲、そしてAZUSAを模したキャラクターのキーホルダーなどのグッズの数々、更に何といってもAZUSAに関連したデザインのご飯が食べられるのだ。


 あ~楽しみ~。早く放課後にならないかな~。


「あ、あのさ、姫野さん。ちょっと良い?」


 私が美穂ちゃんとコラボカフェについて話していると突然一人の女子生徒から声を掛けられる。

 クラスメートではあるが顔を知っている程度の仲だ。そんなに話しかけられるほどの仲ではない。確か名前は柏木さんだったかな?


「どうしたの柏木さん?」


 不思議に思いながら問い返すと、柏木さんはもじもじしながら中々声を発そうとしない。やがて口を開いたかと思えばこんな事を言うのだ。


「姫野さんってもしかしてこの人?」


 そう言って柏木さんの見せてくる画面に映っているのは仮面を着けて配信している私の姿だ。一瞬、何が起こっているのか認識できない程に頭が真っ白になる。


 いや確かに一番最初はクラスの皆にバレたかもしれないって思ってたけどこうまで確信をもって聞いてくる人は一人も居なかったから気にしてなかった。

 どうせバレてるんだろうなとか思いながら過ごしてきていた。


 しかしいざこの立場になると改めて何と答えればいいのか迷ってしまう。どうせバレてるし認めちゃう? それともしらを切って過ごす?


 そんな風にパニックに陥った私を見て察したのか美穂ちゃんが横から割って入ってきてくれる。


「柏木さん。人違いだと思うよ」


「でもこの人の仮面を外してる姿が姫野さんに似てるんだよ」


 そう言って私が最初バズった歌いながら魔物をしばいている動画を見せてくる。

 これはクラスメートたちの間でも私じゃないかと疑われていたものの話しかけられはしなかった動画だ。


「この動画じゃ分からないわよ。だって遠目すぎて顔がよくわかんないじゃん」


「えっ、でもほらこの口のとことか目とか似てるくない?」


「気のせいだって」


 私の代わりに美穂ちゃんが相手してくれている。正直、私だけだとどうせバレてるだろうしなとか思って認めていたところだ。

 ここで美穂ちゃんが強く否定することで周りのクラスメート達にもこいつは違うんだなと思わせることができる。


「そっか。ごめんね。変なこと聞いちゃって」


「良いよ良いよ」


 柏木さんが諦めて私の席の前から去っていく。そしてすかさず私は小声で美穂ちゃんへと感謝する。


「ありがと、美穂ちゃん」


「気にしないで。というか私も気を付けるわ。ちょっと教室で茉奈のこと話し過ぎた。次からはもうちょっと控えるね」


 こちらに気遣わせないように返すどころか逆に気を遣ってそう言ってくれる美穂ちゃんに、ああ、なんていい友人を持ったんだと私は自分の幸運を噛みしめるのであった。

ご覧いただきありがとうございます!


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