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呪心〜誰かの心の収集記〜  作者: 榛原朔
行事の書 一章 霧晴らす知恵の樹

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27/59

13-ホワイト、クリスマス

会場ではまだクリスマスパーティが続いていた頃。

1人その場を離れたクロウは、会場から見て星見の塔の反対側――ウプサラ神殿へとやってきていた。


「寒っ……」


クリスマスツリーが雪で彩られていたように、今日はそれなりの量の雪が降っている。

神殿までの斜面を登るクロウの口からは、真っ白な息が漏れていた。


アルキュオネウスが言っていたように、普段は巨人などの魔獣がいることも多いようだったが、今は運良く何もいない。

彼は寒さに震えて手を擦り合わせながらも、何者にも邪魔されることなくまっすぐ進んでいく。


目の前に鎮座しているのは、雪に隠れるように純白だが、金細工が施されていることでその存在を主張している神殿だ。


高さは当然、研究塔、星見の塔らとは比べるまでもない。

せいぜい6〜7メートル程度で、2階に届くかどうかといったところ。


しかし、白い雪ではっきりと見通せないことを踏まえても、横幅はそれなりにある。

最低でも20メートルはあり、山頂近くにあることを考えれば明らかに異常な程だった。


とはいえ現在。

魔獣も敵対するような魔人もいないため、クロウは何も気にすることなく神殿に足を踏み入れた。




~~~~~~~~~~




神殿に入ったクロウは、所々にある機械類や紙類、棚、テーブル、いかにもな石像、奇妙な氷像などを気にすることなく進んでいく。


目指すは最深部。

先日アトラに聞いた、とある人物が待つ場所だ……




彼が最深部に辿り着くと、目の前にあったのは背後の機械がはっきり見える程に透き通った巨大な赤い氷像だった。

この部屋にはその氷像と機械しかない。


その機械だけがこの部屋の存在する意味で、その氷像だけがこの部屋に訪れる意味だ。

入り口でしばらく黙って見つめていたクロウは、やがて悲痛な表情でゆっくり彼女に歩み寄る。


赤く染まった中からでもわかるほどに、いかにも血が通っていないような青白い少女は、閉ざされた氷の中に。

頸部が大きく切り裂かれ、流れ出た血が凍りついた状態のまま目を閉じていた。


「……」


神秘はただ氷漬けになっただけで死にはしない。

だが、もちろん体力は奪われる。


その上さらに、氷が神秘によるものであるならば、その力の入れ具合で結果は簡単に変わるだろう。

少女は全身の血が流れ出ている状態で、神秘の氷で氷漬けにされているのだ。彼女の状態は考えるまでもない。


クロウはやはり自覚しないまま、一筋の雫が頬を伝う。

右の碧眼ではなく、左の琥珀色の眼から。

氷像から放たれる冷気ですぐに凍りつき、消えていくが、後から後から絶え間なく。


しかし、氷像のもとまで辿り着き、ピタリと手をつけると、至近距離からの冷気を受けてすべての雫は光となって後方へと流れていった。

彼はそっと目を閉じて頭を預けると、静かにつぶやく。


「メリー……クリスマス、ヒマリ……」


1話のクロウの描写も一文だけですが増やしました

(まだ必要なくて後回しにしてたけど設定固めました)

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