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呪心〜誰かの心の収集記〜  作者: 榛原朔
行事の書 一章 霧晴らす知恵の樹

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15/59

1-目指すはホワイトクリスマス

祝一周年!!

ということで、クリスマスイベントストーリー

「霧晴らす知恵の樹」開幕です!!


※まだ「化心」二章は完結していませんが、二章後の話となっています。そのため、初っ端からガルズェルスにいますが、大目に見ていただけるとありがたいです。


※一部二章のキャラの生存ネタバレになると思います。

基本的にどのキャラもギリギリの戦いをしているので、緊張感は失われないと思うのですが、もし二章を確実に生き残るキャラを知りたくない方がいましたら、二章完結後に読むことをおすすめします。

二章長すぎて完結できず、すみません。

八咫で起こった百鬼夜行が解決した数週間後。

クロウ達は、再びガルズェルスの入り口にある、色とりどりに輝く科学偽装の街ポールへとやってきていた。


目的は、暴禍の獣(ベヒモス)討伐前の息抜き。

数時間前にローズが提案してきた、雪国での本格クリスマスパーティーだ。


数時間前の提案で、もう既に到着している……

これは明らかにおかしいことだろう。


しかし、鈴鹿が光で送ってくれたので到着は一瞬。

ついさっき話にあがったばかりなのだが、瞬き程度の時間で旅が終わっていたのだった。


そのメンバーはというと……


「なぁ海音、本当に他の人達はよかったのか?」

「はい、問題ないです。皆さん、休まない方や今までのサボりの分を頑張ってくれている方ですから。

……将軍は行方不明ですし」

「……まぁそうなるか。律もあれだし……」

「そうですね、よくなるといいのですが……」


まず、若干震えているクロウと、彼と話している海音だ。

クロウは初めてこの国に来た時と同じく、いつもより少し厚着をしている。


だが海音は、八咫よりも遥かに寒いこの雪国でも、変わらずいつもの和服を着ていた。

しかも、クロウと違ってまったく寒そうにしていない。


たしかに晴れてはいるのだが、それでも寒さは劇的には変わらないはずである。

そうだというのに、彼女は服装と同じく、異国でも完全に通常運転なのだった。


「おいリュ〜! 手伝ってくれなくてもいいんだけどよ〜……せめて大人しくしててくれよ〜……!」

「あっはっは、やっぱ雪ってテンション上がるよな!!

ついこないだ来たばっかだけど!

手伝いならヴィンセントでいいだろ? 俺は遊ぶ」


そして次に、力の使いすぎで休んでいるローズと、彼女をおぶっているライアン、彼の周りで雪を巻き上げているリューだ。


リューが好き勝手しているのはいつも通り。

しかしライアンは、今回ばかりは勘弁してくれと、周りを飛び回っているリューに文句を言っていた。


雪は降っていないが、地面には積もっている。

おぶるのも、雪を風で巻き上げてくるのも、ライアンにとってはたまったものではなかったのだ。


もちろん、ローズは自分ではどうしょうもないことであるため仕方ない。だがリューは完全に愉快犯で、その反応も含めて楽しんでいるようだった。


しかもライアンの懐には、寒さに弱い猫のロロも入り込んでいる。この場でもっとも過酷な状況と言えるだろう。

おまけに……


「ヴィニ〜……」

「お嬢をよろしく、ライアン」

「リューを止めてくれよ〜……」

「クロウが突っかかると、楽しそうに言い合ってたの見てたでしょ? リューは無理だよ。そう見えてる」

「あ〜……」


このメンバーで、もっとも頼りになるヴィンセント。

そんな彼に助けを求めても、リューは止められないということで見て見ぬふりをされていた。


ヴィンセントにローズを任されるということ。

これは、お嬢様至上主義の彼からしたら、最大級の信頼だと言える。


しかし、懐に潜り込んできたロロ、風で飛び回って雪をまき散らすリュー、助けてくれる人が誰もいないという状況に、ライアンは悲痛な声を上げるのだった。


「…………」


もちろんフーは傍観者だ。

彼女は手伝いをすることも、兄の暴挙を止めることもなく、ただ彼らのやり取りを見つめていた。


「まぁまた会ったら教えてやろう」

「そうですね、私はまだ幕府の人間ですし」

「うん。ってことでヴィニー、はやく研究塔の跡地に行こうぜ。どうなってるか知らねぇけど、とりあえず」


彼らがしばらく街を歩いて、街の中心近くに来た頃、クロウが後ろを振り返ってにこやかに催促を始めた。


研究塔――それはこの国の王がいた場所である。

もっとも、以前グレースが壊したため、現在はどうなっているかはわからない。


だが、他の心当たりというとヘーロンの研究所くらいだ。

あそこも広くはあるのだが、塔で行うすべての研究を行えるとは思えなかった。


そもそもヘーロンの研究所があるのは、フヴェル湖の近くにあるブランだ。環境的には、仮の研究場だとしても研究塔跡地で活動する方がいいだろう。


となればやはり、ニコライ達に会うためには研究塔跡地に行くのが1番可能性が高いのだった。

もちろん絶対に行かないといけない訳ではなく、クロウ達がそうしたかったというだけだ。


なにせ、今回の目的はクリスマスパーティー。

特に場所の指定はなく、当然ニコライ達に許可を取る必要もない。


しかし、ローズ達が独断専行したことで、ガルズェルスを出発したのは唐突だった。

それからしばらく会っていないのだから、どうせならば顔を見ておきたい。さらには、時間があれば一緒に楽しみたい。


そのような理由から、彼らは唯一心当たりのある、ガルズェルスの首都バースにある研究塔跡地を目指していたのだった。


「はいはーい、車……タクシーだっけ? 探してくるよ」


すると、ライアンの助けを求める視線を受けて気まずそうにしていたヴィンセントは、これ幸いとばかりに足を早めて集団から離れていく。


完全に望みがなくなるライアンは、力なく叫び声を上げていて悲しげだ。


「あぁ、ヴィニ〜……」

「……頑張って!」


そんな彼に対して、ヴィンセントはほんの少しだけ申し訳無さそうにしながら笑顔でエールを送る。

どうやらフーもついていくつもりのようなので、完全に希望は断たれたと言えるだろう。


しかも、さっきまでの彼は、近くに妹がいたから控えめに暴れていたようだ。

2人が離れていった途端に、町民にまで雪や風が飛んでいくほどの荒ぶりを見せた。


「あっはっは!!」

「うわっ、フーいなくなったら悪化すんのかよ!! ぶは……」


ライアン達は、ヴィンセント達がタクシーを見つけてくるのを待つために立ち止まったので、ローズが茨でシェルターを作っている。


そのため、次に標的となったのはクロウだった。

リューは風で雪を持ち上げ、クロウを挑発する。


「おう、雪合戦しよーぜクロウ!!」

「……斬って大人しくさせましょうか?」

「ぺっ……いや、けがするじゃん……こういうのはやりかえすだけでいいんだよ、こんにゃろう!!」

「あっはっは!!」


彼は口に入った雪を吐き出すと、とりあえず斬ろうとする海音を諫め、リューを大人しくさせようと全力で抵抗を始める。


そして彼の言葉を聞いた海音も、一緒になってリューに向かって雪玉を投げ始めた。


「なるほど……いくら雪でも、2対1ならたしかに黙らせられそうですね。お力添えしましょう……えいっ!!」

「あっはっは!! 俺の風を突破できるかなぁ?」


海音が加勢しても、リューは危なげなく雪を弾いていく。

それどころか、その雪玉を崩さないように風をコントロールし、逆にクロウ達に投げて武器にしてしまっていた。


この勝負では、人数差よりも能力が重要であることは明らかである。もはや反則であるとまで言える行為に、クロウは声高に抗議を始めた。


「ズルいぞてめぇー!!」

「やはり斬りますか……」

「いや、やめろアホ!!」 


同時に、海音もとりあえず斬るの精神を発揮したが、クロウは慌てて止めにかかる。

すると彼女も、別にけがをさせたい訳ではないため、不本意そうにしながらも雪合戦を続けた……




ヴィンセントが戻るまでの一時、彼らは平和だが感情の荒ぶる雪合戦を楽しんだ。


(……祝、海音生存確定ボソッ。

もとから危なげなく戦っていたので、そこまで深刻なネタバレではない……ですよね?

二章完結させられなくて、本当にすみません……)

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