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異邦人狩りーーユウキとアオイ  作者: グレファー
第19話 学園都市の裏側
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19-3

 アオイがストローズ魔法学校に入学してからユウキ、シーラ、コニールの達3人は、エルメントの町で情報収集を行っていた。


 怪盗団が動き出すのは毎週週末であり、あと2回止めるチャンスがあることはわかっていた。そしてシーラの提案で次の1回は捨て、最後の1回で止めようという作戦を立てていたのだった。


「本当にいいのかよ次の秘宝は無視して」


 ユウキは焼き鳥の串を頬張りながらシーラに尋ねた。町の屋台で買ったものであり、シーラとコニールも同じ串を持って歩いていた。


「ええ。今からじゃ間に合いませんし、むしろ怪盗団の行動を予言して、次に怪盗団が向かうであろうバノン家に取り入った方が、信用されやすいですからね」


「そんなもんか……」


 ユウキはそう答えはしたものの、どうもすっきりはしなかった。ユウキがあまり知略に向いておらず、すぐに行動するタイプなのもあるが、それ以上にこの町の様子が気になったからだ。


「なんというか……格差がすごいな」


 学園都市ということもあり、町の中心には多くの学校および生徒が寝泊まりする寮が存在し、その周りは次代を担う子供たちの安全を守るという名目もあるためか非常に整備されていた。


 しかし少し外れると途端に荒れた風景を見せていた。寂れているわけではないが、雰囲気がとにかく怪しげなものとなっていた。ユウキの指摘にシーラはため息をついて答える。


「少しこの町の説明をしますとね。300年前に魔法を研究する目的で大学が建設されて、そこから人が集まってきてこの町が作られた歴史があります。そういった経緯もあって、この町ではともかく魔法が強いやつが偉い風潮があるんですよ。……22の秘宝はその産物です。この秘宝を一つでも持っていれば、この町で特権が握れるくらいの影響力がありますから」


「……で、そんな歪な社会が形成されて、魔力を合法非合法構わずに得ようとする風潮が生まれ、さらにその退廃した風潮は格差を生み、その格差は治安を乱すということだ。大通りから少し外れたら、闇ルートで流している魔法道具を扱っている店が多くあるからな……」


 コニールも続けて言った。その声のトーンは決して明るいものではなく、咎めるようなものであった。


「私もパンギアからこちらに派遣されたことは何度かあるからな。そしてここの住民はみんな魔法を使うから厄介なんだ……。正攻法ではどうしようもないときがあるからな」


「ふーん……」


 ユウキはモリモリと肉を食いながら二人の話を聞いていた。その様子を見てシーラは呆れながら言う。


「兄さん食べすぎでしょう……。なんでそんなお腹減ってるんですか」


 シーラの指摘にユウキは若干キレながら答えた。


「うるせえな! 今日も早朝からインジャの訓練に付き合わされたせいで疲れてんだよ! なんでハイラントでの1週間だけだと思ったのに、こっちに来てからも付き合わされてるんだ!」


 温泉街ハイラントで1週間の休養を取っている時に行っていた、インジャとの訓練はこの町についてからも行われていた。ハイラントからこの町に来るまでの移動中ですら訓練は行われており、ユウキの覚えが悪いこともあってか、とても“熱心”に叩き込まれていた。


「いくらこの身体でも、こんなに厳しいと本当につらいって……。全身アザだらけで、筋肉痛で……」


 ユウキは初めてインジャと会ったときは圧倒できていたが、今現在ではもう触ることすらできなくなっていた。ユウキの疲れによる能力の低下というより、ユウキが素人であることが完全にバレたこともあり、達人であるインジャに軽くいなされるようになってしまっていた。それはコニール相手も同様であり、たまにコニールがユウキに訓練をつける際、コニールもユウキを軽く圧倒できるようになってしまっていた。


「それは君が覚えようとしないのが悪いだろう。本当にその辺の素質が無いんだもの」


「……で、俺たちは今どこ向かってるんだ」


 いたたまれなくなったユウキは話題を変えようとシーラに問いかける。情報収集で町を歩いてはいたが、シーラには何か目的があって動いているようであった。


「ああ、それはですね」


 シーラは大通りからルートを外れた方に歩き始め、コニールがそれを見て咎めた。


「おい、この先は裏通りに……」


「ええ。こっちで問題ないの。その裏の店に用があるから」


× × ×


 3人は裏通りを進んでいったが、同じ町の中なのに全く違う雰囲気を感じさせた。天気も変わったわけではないのに、何故か裏通りに入っただけで暗くなったように感じさせた。そして歩きながらシーラは2人に語り始めた。


「……私がこの町で何をやってたのか。気になって仕方ないんでしょう?」


 シーラのその言葉にユウキとコニールは何も言わなかったが、否定もしなかった。その二人の様子にシーラはため息をつき、そして続けた。


「ここまで旅してきてわかると思いますが、私は魔法が使えません。これは勉強不足なんかじゃなく、先天的に魔法が使えない体質でした。……でも家庭の都合で魔法学校に通わざる得なかった。しかも超エリート校のストローズ魔法学校に」


× × ×


 シーラは魔法学校に入学してから“座学”では学年トップ――いや、歴代の生徒の中でも随一の成績を出していた。あまりの成績の良さに母親であるセシリーと同じく飛び級まで検討されたが、それはできなかった。――何故なら魔法が使えないことが発覚したからだ。


 シーラが魔法が使えないことが分かったのは学校に入る前ではなく、入ってしばらくしてだった。授業で魔法を使おうとしても全く魔力を練ることができず、学校に入って1年経ってようやく検査して発覚したのだった。


 そしてそこからシーラの地獄が始まった。元からロマンディ家の出身であることや、あまりの成績の良さに周囲の反感を買いがちであったが、魔法が使えないできそこないだと判明したことで、シーラに対するいじめが加速したのだった。


 そして何よりロマンディという名の重圧に耐えられなかったのがシーラだった。魔法使いの名家であるロマンディの長女であるにも関わらず、魔法が使えないなんてことはあってはならないことだった。


 そしてシーラは12歳のころから学校にあまり通わなくなった。学校に行ってもいじめにあうだけであり、何よりテストだけとりあえず出ていれば進級に必要な点数は余裕で稼げたからだ。シーラは家にも帰ることができず、悪い仲間と町に出ることが多くなった。


× × ×


「……で、暇だから色々な商売に手を出したらこれが大当たりしましてね。この町の色んな店の元締めは私なわけですよ。……例えばこことか」


 目的地に到着したシーラは手を上げてその店の看板を二人に示す。“フェリックス魔法道具店”という看板が掲げられた店だった。


「お前がこの店の店長なの……?」


 シーラの突拍子もない話にユウキは困惑して質問するが、シーラは笑って返事をした。


「今はもう店長の役割は別の人間に振ってます。ただ利益は継続的に私の口座に振り込むようにさせていて、そういった店が多くあるわけです。散々皆さんが気にしてた、この旅の資金だってそっから出てたわけですよ」


 ユウキとコニールはシーラの金の羽振りがやたらよかった理由にようやく合点がいった。ロマンディの家の人間というだけでは考えられないほどの金の使い方をしており、今までずっと疑問に思っていたことだった。


「なんというか……たくましいんだな……」


 ユウキは素直にそのシーラのバイタリティに感心していた。自分がシーラと同じ立場だったら――いや、自分がシーラをどうこう言える立場ではなく、そしてついこの間まで腐っていたことを思い出す。そして自分の学生生活を思い出して嫌な気分になり、シーラに問いかけた。


「……それで、この店に来た理由は?」


「まあまあそれは入ってからで」


 シーラは扉を開けると、中にいたならず者たちが一斉にシーラ達に目を向けた。店内は単純に掃除がされていないため埃が舞っており、乱雑に商品が棚に並んでいた。コニールはその一つを手に取って見ると、深くため息をついた。


「はぁ……これ、もう取引停止処分を食らってるはずのものじゃ……」


 コニールが手に取ったのは赤い丸薬が入った瓶だった。コニールの言葉を受けて、シーラは驚いたように言う。


「よく知ってるわね……。その魔力増強薬“ポリフェンテル”を」


「知ってるよ……。2年前くらいに話題になってただろ。魔法使いの魔力を増大させる薬だけど、原材料に個体数が大幅に減少した“シロトペリス”って鳥の心臓を違法に使ってて、密猟を咎めるために行政処分を受けたはずのものだ」


「正解。……まぁ言ってしまえばここはそういう店なわけよ。コニールも今は騎士じゃないんだから変な気起こさないでよね」


「……別に騎士を辞めたわけではないんだが……」


「シーラさん……!?」


 シーラとコニールが話している中、中年の男がその会話に割り込んでくる。ユウキと似たような黒の外套を身にまとい、がどう見ても裏の魔法使いであると判断せざるを得ない見た目だった。


「ああ、タダスミ。元気だった?」


 シーラは二回りも年上であろうその男にきさくに話しかけた。ユウキはその様子を見て、その男がどういう人物なのか、だいたいの推察がついた。


「もしかして店長さん?」


 ユウキがタダスミに問いかけるとタダスミは頷いて答えた。


「ああ、俺がこの店の店長のタダスミだ。しかしお前たちはいったい……?」


「タダスミ。この人たちは私の仲間だから丁重に扱ってやって。……あと、例の“紋章”はまだ扱ってる?」


「え……ええ。しかしあの紋章は……」


「いいから。この人には絶対に必要になるから」


 シーラはユウキを指さしながら言い、タダスミは頭を下げてそれに答えた。


「はっ。わかりました。少しお待ち下せえ」


 タダスミは店の裏にかけて行き、ユウキ達はしばらく待たされる形になった。店には数人のならず者がいたが、今のやり取りを見て少しシーラ達に怖気づいたのか距離を置いたり、店から離れるものがチラチラと見えていた。


「……紋章ってなんだ?」


 ユウキは今のシーラ達の会話から気になった単語を挙げて尋ねた。特に自分に必要になるというところが特に気になっていた。


「……答えにはなってないですが、今の兄さんに必要なものってわかります?」


「必要なもの?」


「ええ。姉さんがいなくなったことで、兄さんには今絶対に必要なものがあります」

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