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異邦人狩りーーユウキとアオイ  作者: グレファー
第2話 賜"われた"恵み(ギフト)
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2-1

 先の異邦人の騒動から1時間が経ち、ユウキたちはシーラの案内の下、今日泊まる宿屋に向かっていた。人が密集している都会であるためか、先ほどの騒ぎがあった後でも、すぐに街の機能は取り戻されており、現場から離れるほどに事件がまるでなかったかのように街はいつも通りの喧騒にまみれていた。


「アオイ、大丈夫か?」


 ユウキは隣を歩いているアオイを心配し声をかける。先ほどの戦いからアオイはどうも調子を悪そうにしており、頭を抑えていた。


「いや……大丈夫。あの気色悪い草に絡まれたダメージが残ってるかもしれない。今日は宿屋に行ったらさっさと寝ようと思う」


 並んでいるユウキとアオイの二人を見て、シーラはどうにも違和感を感じていた。男と女で確かに印象は違うはず。顔の作りにも性差があり、身体付きもユウキはともかくアオイは非常に女性らしい身体をしていた。だがどうしても二人がダブって見える雰囲気があった。


「お二人は……兄妹なんですか? 双子?」


「「う……」」


 シーラの質問に二人とも答えに詰まってしまう。そしてしばらく黙った後でアオイが答える。


「……うん。……双子……みたいなものだね」


「みたいなものって……。双子にみたいも何もないでしょうよ」


「ちょっと説明しづらいんだ……。私たちもなんて言っていいかわからないから……。それより、宿屋はまだかな?私の体調があまり良くなくて……」


 アオイは話題を変えるようにシーラに尋ねる。シーラもそれ以上は追求せず、アオイの質問に乗っかるように答えた。


「私の叔父さんが経営してる宿で、今は私も泊まってるんです。あと15分くらい歩けば着きますから。私の部屋が4人まで泊まれる部屋だから、そのままそこに案内しますね」


「ありがとう……でもいいの? まだ会って間もない私たちと一緒の部屋に泊まるなんで」


 アオイはシーラに尋ねるが、シーラは微笑みながら返事をした。


「別に問題ないですって。姉さんたちが“善人”側の人間なのはさっきの一幕でよーくわかりましたから。善い人じゃなきゃあんな理由で戦わないでしょう。他の人たちが傷つけられたから~なんて」


 シーラに言われ、アオイは恥ずかしがって目を反らす。


「あはは……あれはその……ね。その場のテンションってやつで……」


「テンションだろうが、ああ言うことを言える人なら、私は信頼できますから。遠慮なく泊まってってください」


 二人で盛り上がっているアオイたちを余所に、ユウキは小さくつぶやいた。


「……女子二人はともかく、男の俺も一緒の部屋に泊まるのかよ……」


「泥棒だぁ!!!誰か止めてくれぇ!!!」


 叫び声が上がり、ユウキたちはその声の方向を見る。すると黒い影が人混みの中を縫うように走っており、そのままユウキたちの横を通り過ぎていった。


「今日はなんだかトラブルがやけに起きますねえ。……ってか速いなあの泥棒。子供か何かですかね」


 シーラは呑気に状況を分析するが、ユウキはため息をついて俯いた。


「はぁ……。シーラ、少しアオイの事頼む」


「はい?」


 ユウキはシーラの方にアオイの身体を預けると、通り過ぎていった影を追いかけるように走り出した。


「いやこの人混みを追いかけるのなんて無理……って速っ!?」


 ユウキのスピードはシーラから見ても異常な速さだった。それでいて先ほどの影と同じように人混みにぶつからないように器用に避けて進んでおり、あっという間に追いついていった。


 ――人込みを走り抜ける小さな影は今日も楽勝な仕事だと考えていた。足の速さじゃ誰も自分には敵わない。そうこの街じゃスられるような隙を見せてる方が――。


「捕まえた」


 ユウキは逃げていた子供の肩を捕まえると、身体をそのまま持ち上げた。


「嘘っ!? なんで俺に追いつけるんだぁ!?」


 持ち上げられた子供は、驚愕して自分を捕まえたユウキを見る。ユウキは呆れながらその子供に言い放った。


「追いつけちゃうもんは追いつけちゃったんだから仕方ないだろ。ほら、盗んだものさっさと返せ」


 子供は観念して腕に抱えていた戦利品を地面に落とす。革製の高級そうなバッグであり、ユウキから見ても金目のモノが入っていそうな雰囲気だった。そして戦利品を返しても自分を離す気配のないユウキに、子供は怯えながら話しかける。


「お……おい、もう離しただろ? なんで俺を解放してくんねーんだよ」


「あのなぁ……お前がしたことは犯罪だろ? だったらちゃんと謝るだけ謝れよ」


「ふざけんなよ! そんなことしたら殺されちまうだろうが!」


「はぁ!? スリくらいで殺されるってどんな世紀末……」


 ユウキは頭上から何かの気配を感じ、その直感を信じて上を見る。するとそこには建物の屋根の上でスリングショットを構えた――子供がいた。


「また子供!? こいつの仲間か!?」


 今にも放たれそうなスリングショットを見て、ユウキは捕まえていた子供を離して防御態勢を取る。


「ユウキ! 後ろにもいる!」


 突如上がったアオイの叫び声を聞いて後ろを見ると、同じく屋根の上に別の子供がおり、ユウキに照準を向けていた。


「アオイ! 後ろは頼む!」


 ユウキは叫んで言うと、アオイは頷いてその場で屈む。そして左手を地面の石畳に当てると、右手をユウキの背後にいる子供に向ける。


「直に当たったら……ちょっと痛いからね!」


 次の瞬間、石畳が一枚地面から消え、屋根の上の子供の身体に直撃し、スリングショットの狙いが逸れる。そして次にユウキの正面にいる子供が弾を放つが、ユウキは目を見開いて腕を前面に掲げた。


「……ふぅ。危ねえ危ねえ」


 ユウキは目の前でつかんだ弾をパラパラと地面に落とす。その現実離れした光景にユウキに攻撃をしかけた子供たち、そしてシーラも含めドン引きしていた。


「な……なんじゃですかあれは……」


 シーラは鼻水を垂らしながらユウキの尋常でない身体能力に驚愕していた。アオイも気まずく微笑みながらシーラに言う。


「そんなにトレーニングしてるわけじゃないんだけどね……気づいたらああなっていたというか……」


「いや……兄さんのインチキじみた力もそうですけど、姉さんのその能力も相当トンチキですからね……。そんな簡単に発動できる瞬間移動テレポーテーション能力なんて、空間魔法学会で発表したら天変地異が起こるレベルの衝撃ですよ……」


 シーラは先ほどのマイルたち異邦人の襲撃の際、アオイの能力についての簡単な説明を聞いていた。左手で触ったものを、右手を向けた方向に飛ばす能力。射程距離は20mまで。空間を転移して飛んでいく、と。


「正直これもよくわからないんだけどね。ある日勝手に身についていたから」


 アオイは自嘲するようにシーラに言うが、発言が終わると同時にめまいを感じて膝をついてしまう。


「姉さん!?」


 急に膝をついたアオイを介抱するように、シーラも一緒に屈み肩を抱く。アオイの額には大量の脂汗が浮いており、身体を触った感触から高い体温を感じた。


「兄……!」


 シーラがユウキを呼ぼうとした瞬間、背後から気配を感じシーラは後ろを振り向く。すると裏路地から飛び出してきた子供二人が棍棒を持ち、自分たちに振りかぶってきていた。シーラはアオイを身を挺して庇うために覆いかぶさる。


「アオイイイイ!!!」


 だがユウキが全力でアオイ達を襲おうとする子供たちの下へ跳躍し、棍棒を振り下ろす前にアオイ達の前に立ちふさがる。そして拳を握りしめると、振り下ろされている棍棒に向けて思いっきりパンチを入れた。


「だりゃああああああ!!!」


 ユウキの拳が当たった瞬間、2つの棍棒は跡形もなく砕け散り、棍棒を振りかぶっていた子供たちはその衝撃でひっくり返った。子供たちは慌てて立ち上がるが、その際に自分たちを見下ろすユウキの顔を見た。


 背負っている日の光が逆光になり、そのせいで――いや、おそらくその影が無くても抱く印象は変わらなかったかもしれない。ユウキの顔面には怒りの形相が張り付いており、子供たちは半泣きになりながら、立ち上がることも忘れ這うように裏路地に消えていった。


 アオイに危害を加えようとした子供たちが消えたことで、少し落ち着きを取り戻したユウキは先ほど捕まえた子供の方を見た。しかし一連の動きの中で、すでに子供は姿を消してしまっていた。戦利品までは持っていく余裕はなかったのか、盗んでいたバッグはおかれたままになっていた。


「逃げるための一連の陽動作戦ってわけですね。相当頭が回るこって」


 シーラは皮肉るように言い、アオイの背中をさする。そしてユウキはアオイの体調を思い出し、ハッとしてアオイに駆け寄った。


「アオイ! アオイ! 大丈夫か!?」


 アオイは耳元で叫ぶユウキの声をやかましそうにしながらも、無理やり笑みを作ってユウキに返事をする。


「だ……大丈夫だよ……ほら……」


 アオイは立ち上がろうとするが、足に力が入らずユウキに身体を預ける形になってしまう。ユウキはそのままアオイを背負うと、シーラに尋ねた。


「お前の叔父さんの宿だったか!? 早くそこまで案内してくれ! もうそんなに遠くないんだろう!?」


「え……ええ! こっちです! 走れば5分くらいで着きます!」


 シーラは宿への方向を指さして走っていき、ユウキもアオイを背負いながらそれに着いていく。その際、シーラはユウキが砕いていた子供たちが飛ばした弾のようなものを拾っていた。何故鉛弾や、石の類ではなく、握って砕ける程度の何かの”種子”を飛ばしていたのか、少し気になったからだ。


 そしてそれに少し遅れて、盗まれたバッグの主が追いつくが、そのころにはユウキたちは人混みの中に消えて行ってしまっていた。


「取り戻してくれたのか……? しかし、アオイに……ユウキ? まさか……先ほど聞いた”異邦人狩り”……?」


 コニールは放置されていたバッグを掴み、ユウキたちが消えていった方角を見る。そして彼らを追うように、コニールもその方角へ向かっていった。

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