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サークル勧誘

 立成19年4月、星花女子大学教育学部に入学した私が学生生活の中で最初にやることと言えばサークル探しだ。お昼休み中にキャンパスのあちこちで勧誘のビラが配られているが、どれもこれも楽しそうで目移りする。運動神経は良くないので文化系に絞られるけどどうしようかな。料理系だけでも和食系にスイーツ系、そば・うどん同好会なんてものもある。高校と比べて細分化されていて多様性があって迷ってしまう。


 そんな中で、ジャーナリズム研究会といういかにもお固そうなサークルの前を通りかかったときだった。品の良さそうな学生が私にニコっと微笑みながら話しかけてきた。


「すみません、もうサークルは決められましたか?」

「いいえ、まだです」

「良かったらお話しだけでもどうですか?」


 無理やり勧誘、という風な感じではなかったので誘いに乗ることにした。「どうぞどうぞ」と促されてパイプ椅子に座ると、長机を挟んでその学生が私に名刺を渡してきた。


「私、西恵玲奈(にしえれな)と申します」


 片手で受け取ってしまったけど、確かこういう場合は「頂戴します」と言って両手で受け取るのが礼儀だったような。でも西さんは笑顔を崩さないまま続けた。


「どこから来ました?」

「S市です」

「高校は?」

「県立城西に通ってました」

「じゃあ、大学から星花なんですね。私は小学校からです」

「え! 本物のお嬢様なんですね!」


 思わずお嬢様なんて口走ったら苦笑いされてしまった。星花女子大学の組織構成はちょっと複雑で、大学ならびに教育学部の付属小学校と、中等部高等部は別法人で運営されている。中等部高等部の方を一般的に星花女子学園と呼んでいるが、ここに通う生徒は良いところのお嬢様が多いことで有名だった。ちなみに大学から星花大に入る人は「なんちゃってお嬢様」と呼ばれているらしい。


 どうりで西さんから気品が漂っていたわけだ。対して私はお嬢様なんて家柄ではない、なんちゃってお嬢様に分類される人である。


 西さんはジャーナリズム研究会の活動について丁寧に説明してくれた。社会問題からスイーツの話題まで幅広く扱い、メディア関係の企業に就職する先輩も多いと。私は教育学部ですと伝えたら、当然教育問題も扱うので教員採用試験にも活きる、と言われた。


「取材未経験だからって心配しなくていいよ。会員のほとんどが未経験から始めたんだし」


 いつの間にかタメ口に変わっていったが、もうこの時点で私は先輩の話に引き込まれていた。後ろにいる先輩たちも優しそうだし、ここに決めてしまおうか。


「どう? まずは一日体験って形だけでも……」

「いいえ、正式に入会させてください!」


 そのときの先輩たちの目は、何だかウサギを見つけたライオンのようにギラギラと輝いていた。


「ありがとうございます! じゃあ早速、ここに名前と学部をお願いします」


 私は入会届にサインした。ついでに連絡先の交換もした。それから四限が終わった後に学生会館二階にある部室に来てと指示を受けて、いったん分かれた。


 その日の四限は英語の講義だった。講義が始まる前に隣の子から、


「もうサークル決めた?」


 と聞かれた。


「うん、さっきジャナ研に入ったばかりだよ」

「あっ、ふーん……」

「何なのその微妙なリアクション」

「いや、社会経験が積めそうだなーと思って」


 なんてたってジャーナリズムだからね。


 講義が終わったらさっさと学生会館に行こう。これからの学生生活が楽しみだな。

 ジャナ研の活動については楠富つかさ先生の『君と咲かせる大輪の百合』の「TurningNight」前編を読もう。リンクは貼りません、というか貼れません。だってじうはちきんだもの。


主な登場人物:


・名無しの女子大生

 何の変哲もない子。実は同級生の男子とつきあったことがあるが半年で別れておりこの話の時点ではフリー。


・西恵玲奈

 星花女子学園OG。『君の瞳のその奥に』(楠富つかさ様作)主人公。学園時代は新聞部と放送部を兼部していたメディアガール。後輩の恋人がいるが……

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