暗闇の心【ジェイド視点】
いつからか、ときどき夢を見るようになった。
不思議な夢だ。
見ている間は夢だと分かるし、何度も見ている夢だとすぐに気づく。
しかし、目が覚めた時には全てを忘れているのだ。
夢の最初はいつも小さな頃の、エリアナとの大事なただ1つの幸せな思い出の夢。
ずっとこうしていたいと思う、とても幸せな時間。
それなのに気が付くと夢の中の自分はいつの間にか大人になっている。
エリアナと寄り添っていると、いつの間にか隣の彼女が別の人間に代わっている。
デイジー・ナエラスだ。
そうしてデイジー・ナエラスが側にいると、私はエリアナへの湧き上がる嫌悪と憎悪が止まらなくなる。
止めて、止めてくれ。
エリアナを憎みたくなんてない。ずっと彼女に愛されていたい。
頭の中で、小さな頃の自分が、エリアナを大好きで仕方ない自分がそう叫ぶ。
ああ、そうだね、その通りだ、私はエリアナさえいれば他には何もいらないのに。
それなのに、デイジー・ナエラスが、あの女がそれを許さない。
彼女が側に近づいてきた時、受け入れたのには理由があった。仕方のない理由だ。
それなのに、まさかこんなことになるとは思わなかった。
夢を見ている時間以外でも、まるで夢を見ているようだ。
そのうち悪夢と現実が混ざり合っていくようになった。
2人の正反対の自分がいて、いつでも葛藤している。
どちらも、自分で、どちらも自分じゃない。
分かっているんだ。私が愚かだったのだと。
まさかあの女にしてやられるなんて思いもしなかった。
それでも、許せない。
私がデイジーを側に置くはめになってしまったから、エリアナが私の側にいない。
私は彼女を悲しませたいわけではないから、彼女の側に誰もいないでほしいわけではない。
だが、そう思うのも本心なのに、湧き上がる怒りが止められない。
いつの間にか彼女の1番近くにいた彼女の友人が、変わらず彼女に接することのできるカイゼルが、仲良く彼女と話す他の生徒が、身内だからと気軽に彼女に触れる彼女の兄が、私が彼女と話せない時間に彼女と話している兄上が、
そしてエリアナが、
憎くて憎くてたまらない。
どうして?私以外にどうしてそんな顔をしてみせるんだ!
エリアナ以外はどうだっていいのに。
エリアナ以外はなんだっていいのに。
エリアナ以外は必要ないのに。
エリアナだけが私の世界のすべてなのに。
でいじーがいればなにもいらない。
許して、エリアナ。
デイジーの側にいると安心する。
許して、許して。ごめんなさい。
何に変えてもデイジーを守りたい。
許して、全部受け入れてほしい。
デイジーを傷つけるものは許せない。
取り上げないで、私からエリアナを。
デイジーだけが愛しくてたまらない。
行かないで、行かないで。
デイジー、デイジー、デイジー、デイジー!
エリアナ!
デイジーを愛してる!
エリアナ!もう1度!
僕を助けて!




