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召喚ゲーマー  作者: tamazo
第一章
8/26

8.旅の仲間

きりが悪かったので、ここまでUP。

■8.旅の仲間■


 道をあきらめ、一行は先頭のトーマスが道を切り開きながら山へと入っていく。

 シャドウは背負ったフランに枝があたらないように注意しながらその後につづいていた。


 これまでの道のりとは違い、それは極度の緊張状態を強いられていた。 何時、落石を起こした犯人が襲ってこないとも限らない。 そんな状態ではあったが、予想に反して何事もなく歩みを進めていた。 しかし、その緊張感はシャドウ達を徐々に削っていく。



 道を閉ざされ、山に入って4日目。

 期限まであと3日と迫っているが、なんとか到達できそうだという見込みはある。 それが一行の気を緩ませる。 そして……


 シャドウはマップの点を見逃していた。 それはシャドウの失敗ではあるが、フランに気を使いながら山を進むシャドウに、そこまで求めるのも酷というものだろう。


「トーマスさん、まずい! 囲まれてる!」


 シャドウが叫び、剣を抜く。 シャドウのマップには赤の点が示されていた。


「私を置いて逃げてください!」


 フランがかすれるような叫びを上げる。


 動いたのはシャルだった。 シャルの銃が標的を見つけるや否や撃破する。 続けてサンドラが飛び出していく。


 トーマスはシャドウの後ろに回り、辺りを警戒する。 飛び出したサンドラに、いくつかの影が襲い掛かるが、サンドラは意に介さずにそれらに立ち向かっていく。 サンドラは木を背中に、複数の敵と対峙していた。


 突然、トーマスの盾が動く。 カツンという音とともに、矢が地面に落ちる。


「シャル、弓だ!」


 すかさず、トーマスが矢の方向を示し、シャルに指示を出す。 シャルは頷きもせずに、すばやく矢の射線を追う。 シャルの銃が弓兵を仕留めた。 シャルはさらに弓兵を探す。


 シャドウは焦っていた。 サンドラが倒した敵とシャルが倒した敵を合わせても、今見える敵、つまり表示される赤の点が足りない。 それは突然に消えたのだ。

 ふと、シャドウは気配を消すスキルを思い出していた。 サンドラやトーマスがスキルを使える以上、敵もスキルを使える可能性は捨てられない。


「トーマスさん、頼みます。」


 シャドウは、すばやく、しかも丁寧に背負っていたフランをトーマスに渡す。

 そして、ゆっくりと目を閉じる。 シーフがLv30で使えるスキル、気配感知。 気配を消したとしても、それすらをも感知するそれは今のレベルではゲームなら使えるはずもない。 しかし……

 しばらくすると、フランとトーマスを感じる。

 弓兵を警戒するシャルを感じる。

 敵を倒して、周囲を警戒しながら戻ってくるサンドラを感じる。

 はずだったが、なにも感じることは無かった…… その時、シャドウの耳が僅かな草の音を捉えた。


 シャドウは咄嗟に剣を払う。 剣に手ごたえを感じ、草陰に潜む敵がうめき声を上げた。 さらに周囲を探る。残り2。


「おりゃー」


 トーマスの掛け声とともに、草陰からフランに襲いかかった敵が、盾の直撃をうけて吹き飛ばされ、止めをさされる。 残り1。

 

 その時、シャドウのマップに赤の点が表れる。 シャドウは点の位置、つまり目の前を凝視するが、敵の姿はなかった。

 一瞬、姿を消したのかと考え、気配を探る。


「そこか!」


 シャドウが頭上に剣を突き上げる。 トラストショット。 それはゲームでは槍のスキルであった。 敵単体に対して、強力な一撃を放ち、かつスラッシュよりも有効範囲は広い。 スラッシュの範囲減少、威力向上を探る鍛錬のなかで、シャドウが見つけたスキルである。

 

 どさっという音とともに、敵が上方から落ちてくる。


 シャドウはマップと周囲の気配を探るが、すべて終わったようだ。 振り返り、フランを守るトーマス、辺りを警戒するサンドラとシャルに頷いて見せた。



「どうして私を置いて逃げなかったのですか。」


 フランがうつむいていた。


「なあ、フラン様よ。 俺達流れ者は評判が全てだ。 依頼者ほっぽって逃げたとなりゃ、次の仕事はねえ。」


 トーマスが目をきょろきょろさせながら答える。


「まあ、本音はフラン様を守りたかった、という事です。」


 シャルがフランの手をとり、微笑みかける。


「皆さん……。 ありがとうございます。」


 フランは涙声で感謝の意を述べる。


「あの、盛り上がってるとこですみませんが、まだ他もいるかも知れないんで、さっさと森ぬけませんか?」


 シャドウが背負子を持って、周囲とマップを注視していた。



「っつ!」


 目的地の泉を目前に、先頭のトーマスの足が止まる。

 そこには、重装備の騎士が待ち構えていた。


 シャドウのマップには緑の点が表示されていたが、その佇まいには重圧を感じる。


「やはり……」


 シャルがつぶやくと、前へと歩み出る。


「ちょっと、シャル!」


 サンドラがシャルを止めようとするが、シャルの歩みは止まらない。


 騎士達の前でシャルは立ち止まり、頭を下げる。


「フラン様、無事にお連れいたしました。」


 シャルのその言葉に、騎士たちが二つに割れて道を作る。

 シャルは振り返ると、ニッコリ笑い、その道を進んでいく。 シャドウ達も、あわててその後をついていった。



 その先には、岩にかこまれた小さな泉があった。 泉には、なにか神聖なものを感じる。

 泉の入り口には先程の騎士達が守りをかためていた。


 シャドウは、ゆっくりとフランをおろす。 すかさずメイドがフランをささえ、用意された天幕の中へといざなう。


「ねえ、この人達って、ずっとここで待ってたってこと?」


 サンドラがトーマスに尋ねる。


「だろうな。」


 シャドウ達はフランを同行させ、途中でトラブルがあったとしても、かなりのハイペースでここまで来ていた。

 途中の道が崩れたことを考えると、あの重装備や荷物で森を抜けたとは思えない。 つまり、道が崩れる前に到着していたのだろう。

 


 翌日の夜。

 空には満月が現れ、月明かりが泉を照らしている。

 リトランもこちらに向かってはいるようだが、道がくずれているため間に合わなかったようだ。


 一同は、騎士に連なり並ぶ。


 天幕から、一人の高級な服を着た男が姿を現す。


「!!」


 トーマスとサンドラが驚愕の表情をする。 しかしシャルは冷静に騎士に合わせて片膝を付く。

 トーマス、サンドラが、あわてて片膝を付く。 状況が分からないシャドウも片膝を付いた。


 そして、男に誘われるように、白い衣装を着たフランがメイドに付き添われて姿を現す。 満月の光をを受けたこの泉で呪いという穢れを落とすのである。


 ゆっくりと杖をついたフランが、しかししっかりとした足取りで、泉へと入っていく。

 フランの身体は吸い込まれるように泉へと沈んでいく。


 それに合わせて、侍女が泉の周りに幕を張張っていく。 その時、シャドウは泉にとある人物の影を見た。


 しばらくして、水の音がすると、メイドと侍女たちが幕の中へ入り、幕がとりのぞかれる。



 そこには、濡れた髪にローブを羽織った、美しい少女がいた。


「おお、わが娘、フランソワよ!」


 高級な服を着た男が、少女に駆け寄り抱きしめる。


「お父様……。」



 儀式のあと、シャドウ達は天幕へと呼ばれる。

 天幕に入ると、先程の男、綺麗な衣装に着替えた少女、そして護衛の騎士や侍女達が居た。


「その方らか。」


 男が口を開く。 トーマスとサンドラはあの後からガチガチに固まっており、シャドウにいたってはチンプンカンブンであった。


「お初にお目にかかります、モルト公爵様。 シャル・ビスコンにてございます。 そしてそちらがわがリーダーのトーマス、その横がサンドラ・西念、シャドウにてございます。」


 シャルの音頭で、あわてて3人が片膝をつく。


「ビスコン? そなた、ビスコン子爵家のものか。」


 シャルが頷く。


「此度の件、大儀であった。 公爵として、そして父として、礼を言う。」


 モルト公爵が頭を下げる。


「ひっ!」


 トーマス、シャル、サンドラが揃って声にならない悲鳴を上げる。


「そなたらも疲れておるであろう。 後日、改めてとさせていただこう。」


 その言葉に合わせて、侍女が天幕をあけると、逃げ出すかのように、4人はあわてて飛び出していった。




「で、シャルは知ってたの?」


 サンドラがシャルに不機嫌そうに話す。


「いえ、途中でそんな気がしただけです。 確信したのは、騎士ですね。 公爵家の紋章でしたので。 サンドラ、貴方も紋章学を取ってませんでしたか?」


 騎士の胸の紋章は、公爵家のものであったようだ。


「いや、あたし騎士科だし、紋章学はCだし……」


「サンドラさんって騎士なんですか?」


「シャドウ、騎士になれたなら流れ者とかやってないし。」


 シャドウは、あっという表情をする。


「まあ、騎士を目指してたんだけどね。 女だし、剣もあれだし。」


 女性の騎士というのはかなり珍く、かつサンドラの剣は正統かつ美しい剣ではあったが、実戦向けであった。 騎士といえども常に戦闘するわけではなく、主な仕事は儀仗兵的なものである。 特にサンドラの目指していた王直属の騎士団には、その傾向が強い。


「私の家の騎士団を紹介してもよかったのですが…… かなり農民的な騎士団ですので……」


 シャルのビスコン子爵家にも騎士団はあるが、平和な土地柄ゆえ、普段は農業をしていた。


「まあ、あたしもそうだけど、シャル、あんたも大概よね。 学院の法力科トップが流れ者だもの。」


「ええ。 私も法力研究所落ちましたから……」


「まあ、トーマスさんには感謝しかないけどね。」


 サンドラとシャルはトーマスを見る。


「いや、俺も一応教え子の面倒みないとだしな。」


「教え子?」


「トーマスさんは、騎士科で剣術を教えてたのよ。」


「!!」


 シャドウがトーマスに目を見開く。


「いや、教えるっつっても、臨時講師だしな。」


 トーマスが頭を掻いてみせる。


 聞くところによると、トーマスは流れ者でありながら、騎士を交えた大会などで優勝しているそうだ。

 それらの実績も踏まえた評判が、今のトーマスの、そしてスルメ団の評判となっている。


 そして、シャルは研究を続ける費用を得るため、サンドラは剣を磨くために流れ者となったのだが、学園卒とはいえ、新人二人に仕事があるわけもなく、むしろ学園卒の肩書きが足を引っ張ったのだが。 二人はすがる思いで著名な流れ者でもあるトーマスに相談した。

 引退を考えていたトーマスだったが、教え子のためと人肌縫いだのがスルメ団結成のいきさつであった。


「しかし、なんでスルメ団って名前なんですか?」


「あ? 俺は漁師の息子だろ? 村の特産品がスルメだったんだ。 そんだけだ。」


「まあ、トーマスさん、いっつもスルメくっちゃくっちゃやってたしね。」


 3人が苦笑いしていた。



「そういえば、あの人が公爵様なんですね。」


 シャドウの言葉に、シャルが頭を抱える。


「あの人ではなく、あのお方ですね。 モルト公爵、王家の一人で、現王のご兄弟です。 それと公爵が敬称ですから、様はいりません。」


「8年ぐれえ前に壮大な兄弟喧嘩やらかして、負けた兄貴だな。」


 シャルはにやにやするトーマスを睨みつけ、トーマスが咳払いした。


「でも、あのフラン様がフランソワ様だったとはね……」


 フランソワ・モルト。 幼い頃から聖女候補といわれていたが、8歳のときにその姿を消す。 当時は大きな話題になったのだが、次第にその話をする人は減っていった。


「フランソワ様が8年前に行方がわからなくなり、その後しばらくして呪い姫の噂ですが、さすがにそこが繋がってるとはおもいもしませんでした。」


 シャルが腕を組む。


「フランソワ様の呪いって、結局何なんでしょうね?」


「そりゃ、姿が老婆になる呪いでしょ?」


 サンドラがシャドウに答える。


「あ、いや。 そうじゃなくて、誰が何のために呪いをかけたのかって。」


「それは分かりませんね。 8年前といえば、王位継承でいろいろあったようですが、現王がそのようなことをするとは思えませんし。」


「まあ、いいじゃねえか。 呪いは解けたんだからな。」


次回予告:えー、まだ書き溜めはいくつかありますが、見直しとかするのに、しばらくかかりそう。

とりあえず、ネクタイと靴下着用の全裸待機せよ! 風邪ひいて、それが直る頃までには、次をUPできるであるかと……

待てない人は、↓こんなのも書いてますので、よろしければどうぞ。

<株式会社 勇者サービス>

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