表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚ゲーマー  作者: tamazo
第一章
7/26

7.旅の始まり

もりあがってます?(不安

■7.旅の始まり■


 オムロに戻ると、トーマスは巨大猿の出現と討伐について、衛兵に報告に向かう。 鬼獣は下級のゴブリン程度ならともかく、巨大猿ぐらいになると軍の討伐対象となる。 今回はスルメ団や熟練の流れ者グループという戦闘集団がいたために討伐可能ではあったが、基本的に流れ者は戦闘は出来るが、所詮一般人の延長にある。 

 

 下級の鬼獣は稀にみらるが、それ以上の鬼獣は近年例がないことから、至急公爵の騎士団による調査が開始されることとなった。


 世間では大きな動きがあるわけだが、シャドウの周りでも大きな動きが発生しつつある。


 トーマスの戻りを酒場で待つシャドウ達であった。


「おう、待たせたか。」


 トーマスが酒場に入るなり、シャドウ達に手をふる。 そして、そのトーマスの後ろには。


「リトランさん!」


 リトランはシャドウに礼で返す。


「何時こちらにいらしたんですか?」


「いや、つい先程付いたばかりですよ。 丁度、そこの先でトーマスさんと出会いましてね。 それにしても大きな鬼獣をたおされたとか。 街道沿いではその話で持ちきりですよ。」


 シャドウがミルトの村を出発してから1、2ヶ月が経とうとしていた。 その間、シャドウにはさまざまな事が起こったのだが、それをリトランはわが子を見るようにニコニコと受け答える。


「では、教会はほかの方が。」


「ええ、これでようやく、しばらくの間は旅の法師に戻れそうです。」


 リトランがシャドウに微笑みかける。


「オムロにはどのような用事で?」


 シャドウがリトランに訪ねる。


「実はシャドウ様と皆様ににお受けいただきたい依頼がございまして。」


 リトランの顔から笑みが消え、そのまなざしに強い思いがこめられていた。



「呪い姫ですか。」


 リトランの話を聞き終わったトーマスはうつむいたまま、サンドラにいたってはあからさまに頭をかえていた。 そして、シャルも難しい表情で腕を組んだままである。


「ちなみに呪いってなんですか?」


「そりゃあんた、呪いは呪いでしょうが。」


 そんなサンドラをシャルがどつく。


「申し訳ございませんが、呪いについては一切お話することができません。」


 リトランがシャドウに頭をたれる。


「はあ。 でも、呪いっていっても、触ったら感染するわけでもないですし、別にかまいませんが。」


 シャドウは事も無げに言ってのける。


「呪いは感染しないのですか?」


 シャルとサンドラががシャドウに身を乗り出す。


「え? するんですか? 聞いたことないですが。」


 シャドウにとって呪いとは、せいぜいがゲームにおける呪いのアイテム程度である。 ゲームの呪いのアイテムは装備しないと呪われないのが定石である。


 シャルはしばらく考え込むと顔を上げる。


「確かに呪いが感染するとも、近づいたところで呪われるという話も、噂レベルですね。 実際にそれで呪われた方がいるとは聞いたことがありません。」


 シャルは決意を固めたように、トーマスを見て頷く。 そしてトーマスはサンドラを見る。


「なによ、あたしだけ置いてきぼりってやつ? 冗談じゃないわよ、行くわよ。 ええ、いってやるわよ!」


 サンドラは決意を固めるように、テーブルをドンと叩く。


「リトラン様、その話お受けしますぜ。」


 4人はリトランに頷いてみせる。



 それから数日後、リトランに連れられ、スルメ団の一行はとある屋敷を訪ねていた。


「今、主がまいります。」


 屋敷のメイドが、一行に頭をさげ部屋を退出する。

 しばらくして、先程のメイドに連れられ、一人の杖をついた老婆が部屋へと入ってくる。 しかし、この屋敷はこのメイド以外は見当たらなかった。


「皆様、始めまして。 私のことは、そうですね。 フランとでも及びください。」


 老婆が洗練された礼を尽くす。


「フラン様、お久しぶりでございます。」


 リトランが片膝をつき、フランと名乗る老婆にお辞儀をする。


「リトラン様、お久しぶりでございます。」


 メイドにすすめられた椅子に座ったフランもリトランに会釈する。


「あー、この度はお日柄も良く……」


 突然、鳴れないセリフを吐くトーマスに、サンドラが肘でつついて止めさせた。


「スルメ団のトーマスです。」


 トーマスは頭をかきながら、ざっくりと挨拶した。


「同じく、シャル・ビスコンでございます。 お見知りおきいただきますよう。」


「同じく、サンドラでございましゅ。」


 シャルの完璧な挨拶に引きずられたサンドラであったが、かんでいた。


「同じくシャドウともうします。」


 挨拶が終わると、メイドが一歩前に進み出る。


「リトラン様。 泉の件は本当なのでしょうか。」


 リトランがメイドに頷いてみせる。


「はい。 お時間がかかり申し訳ございません。 このリトランめがこの耳で聞き、この目で確かめております。」


 リトランはフランを見つめる。


「リトラン様。 心よりお礼申し上げます。」


 フランがリトランに礼を述べる。 フランが呪われてから8年ほどがたつそうだ。 8年前、リトランはフランの呪いにさまざまな解呪を試みたが、効果は見受けられなかった。 そこからリトランの旅が始まる。 ちょっとした伝承、噂を一つ一つその足で調べまわった。 そして2年ほど前にようやく泉の存在を知るのだが、伝承レベルでは具体的な場所の特定にはいたらず、更なる調査が必要であった。 およそ1年ほど前、山の何処かにあることが特定できたのだが、それに呼応するかのようにフランの容態が悪くなり、杖なしでは歩くことすらままなくなりつつあった。 なんとかこの屋敷までフランを移動させることには成功し、泉の場所も特定できたのだが、泉までフランを安全に移動させる方法も見つからずに、時間だけが過ぎていった。 


「フラン様、この者達が同行させていただきます。」


「ご面倒をおかけしますが、よろしくお願いいたしますね。」


 老婆がやさしく微笑みかける。 シャドウは一瞬老婆が少女のように見え、あわてて目を擦るがそこにいるのは先程の老婆であった。


 出発は2日後、依頼内容は、老婆の護衛と、2週間以内に指定された泉まで老婆をつれていくこと。 スルメ団だけであれば問題ないスケジュールであったが、老婆の足取りを考えると厳しい内容といえるだろう。



 翌日、シャドウは旅の支度をすべく、シャルやサンドラと街中へとくりだしていた。


「えっと、水、食料、テント、食器とか炊事道具も居るよね。」


 手にしたリストを眺めながら、サンドラがぶつぶつと唱える。


「でも、シャドウさんのあれのおかげで、荷物が増えても大丈夫ですね。」


 サンドラに比べると身体能力が劣るフランは、荷物をもたなくていいことにほっとしていた。

 順調に買い物を続ける一行であったが、ふとシャドウの足が止まる。


「どうかされました?」


 シャルがシャドウの目線を追う。


「それ、いります?」


 シャルは怪訝な表情でシャドウをみるが、シャドウの目は釘付けになっていた。



 出発の日、屋敷の前には、トーマス、シャル、サンドラ、そしてリトランがいた。 そして今、フランがメイドに付き添われながら杖をついて屋敷の玄関を出ようとしていた。

 

「すみませーーん。」


 声のする方向を見ると、シャドウが何かを背負ったままこちらに走ってくる。


「あんたね、てか何それ?」


 サンドラの目は、シャドウの背中を追う。 サブトンのようなものをくくりつけた背負子だった。


「いや、途中山道じゃないですか。 歩くの大変じゃないですか。 ならこれでと。」


 良いアイデアだと思っていたシャドウは、サンドラの目つきに縮小していった。


「ふふふふ」


 目を見開いていたフランが突然笑い出す。

 

「フラン様?」


 メイドがあわてて声をかけると、フランは涙を拭いながら少女のような笑みで、手を振ってみせる。


「ちょっと、乗せていただこうかしら。」


 フランが歩み寄ると、あわててシャドウは中腰になる。 フランが乗ると、シャドウはゆっくりと立ち上がる。


「大丈夫でしょうか?」


 心配そうにリトランがフランに声をかける。 フランは目をつぶり、静かに胸に手を当てる。

 

「ええ、問題ないようです。」


 リトランとメイドがほっとする。 そこで初めてトーマスがその意図に気がついた。


「乗り物の制限…… ってやつですかい。」


 リトランが頷く。 フランにかけられた呪いはさまざまな制限が発生する。 その一つに馬車などに乗れないという制限があった。 正確には乗ると苦しみに見舞われるのだが。 おそら背負子は呪いの術者の想定外であったのだろう。


「少々よろしいでしょうか。」


 メイドがトーマスに話しかける。


「皆様、旅にしては軽装のように見受けられますが、お荷物などはどちらに?」


 これから2週間ほどの旅に出るはずが、ここはちょっと外出程度の身の回り品ほどしか所持していない。 すくなくとも、水や食料を持参する必要があり、かなりの荷物があるはずだった。

 トーマスがリトランをチラッと見ると、リトランは頷いてみせる。


「おい、シャドウ。 何か出してみてくれ。」


 シャドウは頷くと、腰のバックから剣を取り出す。


 フランとメイドは目を見開いていた。


「まさか、それは……」


 メイドが有り得ないという表情でトーマスとリトランを見つめる。 伝説上の魔法カバンであるかと。

 しかし、リトランはそれには答えず、そっと口の前に指を立てる。

 

「そうそう。」


 リトランが、何かを思い出したかのように、シャドウに話かける。

 

「こちらをお持ちください。」


 リトランは、紫の小さな玉の数珠のような首飾りを差し出す。


「これは?」


「お守りのようなものと思っていただければ。」


 リトランがシャドウにその紫の首飾りを渡す。 シャドウは首にかけようか迷っていると


「ちょっと、それはしまっときなさいよ。」


 ちょっと顔を引きつらせたサンドラに言われ、そのままストレージにしまうとリトランに礼をいう。




 フランを背負ったシャドウ一行は、無事出発し、2日目を迎えていた。

 明日から、いよいよ山道へと入っていく。

 シャドウはゆっくりとフランをおろすと、大きく伸びをした。


「大丈夫でしょうか。」


 シャルに手を取られたフランがシャドウを気遣う。


「え? いや、平気ですよ。」


 あわててシャドウが答える。 巨大猿を倒したことで、Lv10に成っているシャドウにとって、フランは荷物にもならない。 流石にトーマスには叶わないが、普通の男性と比べたら、体力的には圧倒的に上であろう。 伸びは、ある意味癖のようなものである。


 そして、当初は呪いのイメージが抜けずに、おっかなびっくりフランに接していたシャルとサンドラであったが、フランの人柄に触れることで、普通に接することができるようになっていた。


 夕食のあと、シャルは銃の手入れをしていた。 山道に入ると、獣や盗賊が現れる危険性が高くなる。


「あのシャル様。 もしやそれは法具では?」


 フランがシャルの手元を見つめながら問いかける。


「はい。 自分で作った法具です。 こうすると玉がでて相手を倒せます。」


 そう言うと、シャルは銃を構えてみせる。


「ご自分で作られたのですか。」


「ええ、お恥ずかしい話ですが、以前ファーレン学園で法力を学んでおりました。」


 シャルはフランに学園での出来事などを話始める。


「しかし、法力研究所には入ることがかないませんでした……」


「それ程の知識を持ちながら、なぜ?」


「一つは女性であること。 もう一つは法力を癒し以外でつかうということ、の2つが原因でしょうか。」


 この世界において、法力とは基本的に癒しの力と認識されている。 そして、教会の者に法力を持つものが多いため、教会における治療行為が法力の使い方とされていた。


「確かに法力は癒しに使われますね。 でも思うに法力は粘土のようなものと思うのですよ。」


「粘土? でしょうか?」


 フランの言葉にシャルは驚く。


「はい。 粘土はさまざまな形に姿を変えることができましょう? 法力も同様に、さまざまな形に変えることができるのではないでしょうか。 たとえば貴方の銃のように。」


 シャルは絶句した。 ここまで法力を理解している人物が居たことに。


「失礼ですが、フラン様はどちらで学ばれたのでしょうか。」


「いえ、すべては本などから得た独学です。 時間だけはありましたので。」


 フランはふと悲しげに笑う。


「フラン様はもしや……」


 シャルはそれ以上の言葉を紡げなかった。



 山道に入ると若干ペースは落ちるが、荷物はストレージの中、フランはシャドウが背負っているため、ほぼ問題なく移動できていた。 また、稀に獣が現れるが、サンドラが瞬く間に始末する。


 こうして、残りも少なくなってきてはいた。 しかし、それもここまでだ。



「ダメだ。 落石で通れねえ。」


 トーマスが苦々しげに言葉を吐く。


「どうしましょうか。」


 シャルが腕を組んで考え込む。 その脇でサンドラが首をかしげる。


「落石っておかしくない? 雨も降ってないし。」


 トーマスはサンドラに目で合図をする。 落石は故意であると。 何者かが、この旅を邪魔している。



次回予告:書き溜めがすくなくなってきてるので、執筆に戻る予定。 ここから超不定期掲載に突入。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ