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召喚ゲーマー  作者: tamazo
第一章
5/26

5.鍛えてみた

多分、どこかでボロがでる状態です。 そこは大目に見るってことで。

■5.鍛えてみた■


 スルメ団も大きな仕事が終わったため、休暇をとっていた。 冒険者ギルドのようなものがあれば、ゲームでいうクエスト的な仕事もあったりするのだろうが、そんなものはなく、シャドウはやることも無くぶらぶらとすごしていた。

 教会にも足を運んでみたが、やはり神社のような佇まいであった。 もっとも、ミルト村のものに比べれば、はるかに規模も大きく、大勢の信者がひっきりなしに訪れていた。

 

 市民エリアには入れないので、恐らく見れると思われる場所を一通り見学してしまうと、シャドウは特にやることもない。そんなシャドウの元に、サンドラが現れる。


「暇してんでしょ? 訓練付き合ってよ。」


 サンドラは有無を言わさずにシャドウを引っ張っていく。 そして、町外れにある原っぱへと連れて行かれた。

 そこには、シャドウ達とおなじように、数人の流れ者と思われる人達が剣を振るっていた。


「じゃあ、早速始めようか。」


 準備運動もそこそこに、サンドラが訓練用の木剣をシャドウに放り渡す。 シャドウはそれをキャッチすると、2、3度振り回して感覚を確認する。 実際、まともな剣を振るっていないシャドウにしてみれば、それがどれだけ実際の剣に近いのかは良く分からなかったが、問題なく振るえることを確認できたのでよしとする。

 シャドウが構えるのを待って、サンドラが剣を構える。 サンドラはファーレン学園で修行した、正統派の剣である。 その構えはシャドウからみても、美しく、隙のないものといえた。


「ちょっとまって。 そのままね。」


 剣を構えたシャドウを、サンドラが止める。 そしておもむろにシャドウに近づいていく。


「ああ、まずこの持ち方はだめ、小指でもっとしっかり抑える。 で、肘はもっと閉めて。 肩もこう。 ああ、足も。」


 サンドラが、次々とシャドウの構えを修正していく。 シャドウはなすがままであり、修正された構えはかなり窮屈なものであったが、明らかに攻撃される面がへり、かつ前後左右への動きを考えると、理にかなったものであることが伺える。


「しかし、構えもしらないであんなこと出来るとか。何者なのよ、あんたは。」


 それはシャドウに問いかけたものではなく、独り言に過ぎないのだが、シャドウにしてみれば、目の前で独り言を言われれば自分に言われたのと変わらない。 とはいえ、シャドウには返す言葉がないのだが。


 それから素振りから始まり、簡単に剣を交え、およそ2、3時間ほどたった頃であろうか。


「はあー。休憩、休憩。 ちょっとなんなのよ。」


 サンドラが、肩で息をしながら、汗を拭う。 その顔にはあきれた表情が張り付いていた。 一方、シャドウの方は汗こそかいているが、平然としていた。 それだけならまだいいのだが、碌な構えも出来なかったシャドウだが、あっという間にサンドラに剣がかするレベルにまで上達していた。 サンドラにしてみれば、脅威の成長ぶりである。


 サンドラはどかっと地面に腰を下ろすと、大きなため息をついて、うつむいたままであった。 シャドウもしょうがないのでその横辺りにしゃがみこんで回りの様子を見ていた。 来たばかりの時には気がつかなかったが、周りで剣を振るう人たちを見てると、明らかに上手、下手が手に取るように分かるようになっていた。 短時間ではあるが、知識と経験がその判断を可能にしていた。 そうすると、サンドラの剣技がどれほど凄いものなのかが、改めて理解できるのだった。


 突然、サンドラが頭を上げる。


「そういえば、こないだのあれ、どうやんのよ。 やり方教えなさいよ。」


 サンドラがじっとシャドウを見つめる。 おそらくスラッシュのことだろうと、シャドウは思うのだが、実際シャドウにしてみても、どうやってるのか、どうやれば出来るのかは理解していない。 しゃどうは黙り込む。


「はあ、やっぱり教えられないってことか。」


「あ、いや。 教えるのはかまわないんですが、実際どうやってるのか、自分でも良く分かってなくて。」


 当初は剣をすばやく振るうことで、かまいたちを発生させているのだろうと考えていたのだが、かまいたちでショートソードが切れるわけもなく、ますます理解に苦しむスキルとなっていた。 むしろ、ウォークライにしても、大声を出す必要すらないので、どうやって相手のヘイトを稼いでいるのかも、まったく説明が出来ない。

 結局、スキルとは説明ができない謎現象である、というのがシャドウの出した結論でもあった。


「まあ、一応それっぽくやって見せますね。」


 そう言うと、シャドウは立ち上がり、自分の中のイメージでスラッシュの動きを再現する。 もっとも、周りにそれなりに人がいるところでスラッシュを発動させれば、予期せぬ被害が出る可能性もあるし、間違いなく借り物の木剣も使い物にならなくなるだろう。

 サンドラがシャドウの動きをじっと見ていた。 そして「よしっ」という掛け声とともに勢い良く立ち上がると、シャドウの脇でそのフォームを真似る。 ひたすら剣を振るい始めたサンドラを、シャドウはただ見守るしかなかった。


 おそらく千回ほどを超えたあたりであろうか、突然サンドラの目の前の草がはじけ飛ぶ。 それにあわせてサンドラの木剣がぼっきり割れた。


「で、出来た……」


どうやら、サンドラはスラッシュに成功したようだった。


「す、すげえ……」


 思わず、シャドウも目を見開いた。 自分ですら理屈も分からないスキルを、サンドラは見よう見まねで再現させてみたのだった。

「なによ、これ……。 こんなの実戦で使えないって。」


 サンドラが大きく息を吐く。 スラッシュの発動には成功したものの、その威力はシャドウのものと比べるべくもなく、剣の角度やスピードなど、制御がシビアすぎてとてもシャドウのようにやすやすと使えるものではないようだった。


 結局、サンドラがスラッシュを発動させたところで訓練は終了となり、二人は町に戻っていく。



 数日後、サンドラとトーマスがシャドウを訪れていた。

 

「よう、なんかおもしれえこと始めたらしいじゃねえか。」


 トーマスはなにやら大きな荷物を抱えている。


「じゃあ、早速いくよ。」


 サンドラに引きづられるように、またもやシャドウは連れ去られていった。


 先日の原っぱで、シャドウはトーマスと対峙している。


「んじゃあ、軽くやってみるか。 どっからでもいいぞ。」


 そう言うとトーマスは盾を構える。 どうやら、トーマスも訓練に参加するようだった。 シャドウは剣と盾を構えてトーマスに挑む。

 数分後、肩で苦しそうに息をするシャドウを、トーマスが笑ってみていた。 まさに完敗であった。


「まあ、悪くはねえが、まったく良くねえな。」


「それ、ダメってことですよね……」


 落ち着いたところで、トーマスがダメだしをする。


「そもそも、盾の使い方がなっとらんな。 おい、盾は何に使うんだ?」


「敵の攻撃を防ぐ、ですよね?」


「ああ、そっからダメだな。」


 トーマスの言葉にシャドウは首をかしげる。 しかし、サンドラは苦笑していた。


「まあいい。 説明すんのもめんどくせえ。」


 そう言うと、トーマスはシャドウと向きあう。


「敵の攻撃を防ぐってのは間違っちゃいねえんだが。」


 トーマスはシャドウに盾を構えるよう促すと、シャドウの盾めがけて、その体躯を生かした蹴りを放つ。 その一撃でシャドウは後ろに吹っ飛ぶ。


「な? 蹴りを防げても、それじゃやられんだろ? 今度はおめえがやってみな。」


 トーマスがにやにやしながら盾を構える。 シャドウは先程の恨みを晴らすべく、全力で蹴りを放つ。 が、転がっていたのはシャドウだった。


「まあ、受けてもいいんだがよ。 なにやったかわかるか?」


 転がって強打した背中をさするシャドウを、木剣で突っつきながら、トーマスが笑う。


「受け流し…… ですか。」


 ゲームのスキルにも受け流しは存在するが、剣のスキルであり今のシャドウにはレベル的にも足りない。


「おお、そんだけ分かれば十分だ。 防御した瞬間ってのは、攻撃のチャンスだろ? そんときに相手が体勢崩してたら、ラッキーってこった。 んじゃ、次だ。」


 トーマスが剣をわずかに動かす。 シャドウの目がその剣のわずかな動きをキャッチする。


「痛ってええ。」


 シャドウが頭を抱える。 シャドウを襲ったのは剣ではなく、盾だった。 剣を囮に死角から盾で殴ったようだ。


「これでもぶん殴れば痛てぇんだよ。 まあ、頭にかぶってたら痛くはねえだろうが、そんでもそれなりには効くだろ?」


「ほい、次。」


 シャドウはたてを構え、剣と盾に注意を配る。


「おお、いい目つきだ。」


 トーマスはにやりと笑うと、シャドウの目の前に盾を突き出す。 視界を遮ぎられたシャドウは一瞬躊躇するが、次の瞬間に足を抱えてうずくまる。 視界を遮られた瞬間に、足を木剣で切られていた。


「どうだ。 しかし年寄りにはきついな。 おい、サンドラ。 変わってくれ。」


 トーマスに代わり、サンドラと対峙する。



「難しすぎ。」


 訓練を終え、酒場に戻ったシャドウは、あちこちの身体の痛みをさすっていた。


「あたりめえよ。 俺も練習に練習を重ねてできるようになったんだ。」


「まあ、あたしの剣も、子供の頃から鍛えてるけどね。」


 自力でスキルを発生させていたサンドラの強さは、想像以上のものだった。 レベルでいえばかなりの高レベル帯といえるだろう。女性としては大柄ではあるが、男性と比べるとそれ程ではないのだが、それは一般の男性と同格であるということだ。 それに加えそのスピードと技の正確さには目を見張るものがある。 不足気味の打撃力をスキルで補うことができれば、ゲームのプレイヤー相当になる可能性を秘めていた。


 トーマスの強さは、盾を中心とした攻撃の多様性にある。 その多様性を生み出しているのは、これまでに培ってきた経験であろう。 実際、トーマスの剣技はサンドラのそれに及ばない。 しかし、サンドラとトーマスの戦いは互角というより、トーマスに分があるように見受けられる。 サンドラの剣は定石であるため、トーマスからしたら読みやすい剣筋といえるのだ。 そしてトーマスの攻撃は、突然の蹴り技などサンドラの想定を上回る多様性があり、どうしても対応が遅れ勝ちになる。 それでも一方的な試合にならないのは、サンドラの才能によるものであろう。


 一方、シャドウは、スキルを使えばトーマスやサンドラに勝てるであろうが、スキルなしではまったく歯がたたない。 当然といえば当然である。 スキルなしで強いものが、さらにスキルを使った場合、それは最強ともいえるのだ。

 そして、ゲームでは盾のスキルは敵の特殊攻撃を阻止するバッシュをはじめ、数えるほどしかなかったが、この世界では盾すら攻撃手段となりうるのであった。



次回予告:みんな頑張れ。 おれはちょっと休憩。

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