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模擬戦

 

 すったもんだがあった数日後、フレンが俺の部屋に飛び込んできた。

 その報告を聞くと、どうも魔王軍が続々とこの魔王城に向かっているとのことだった。


「それぐらいなら報告する必要もないかなと思ったんですけどどうもそうはいかない事情が発生しましてね。どうやらその中に十二翼最強の男が混ざっているらしいんですよ」


「なに?十二翼最強だと!?………ってそれゴズじゃないのか?」


 確かあいつ自分のことを十二翼のリーダーで魔王の次に最強とかなんとか言ってなかったか?


「なに言ってるんですか。そんなわけないでしょ。ゴスは親の地位を引き継いだだけ。つまりは世襲ですよ。たしかにゴズの父は偉大なお方でしたが息子のゴズはてんでダメなんですよ」


 なんと……

 あれだけ威勢を張っているもんだからそれなりなのかと思っていた。

 ……まぁゴズに対する皆の反応を思い出せばなんとなくそれも理解できるが。

 まぁそれは置いといて


「で、その十二翼最強の男ってのはどんなやつだ?」


「山羊族のギーラですね。2メートルを超える巨大な体とそれよりも長い槍を使い、さらに魔法も使えるいわゆる万能型って感じでしょうか」


 ……なんか正直あまり強さが伝わってこない。

 万能型っていうのは聞こえはいいが裏を返せばどこにも秀でたものがないと捉えられてしまう。

 槍と魔法を使うやつなら人間にいたが、どれも中途半端で全く役に立っているイメージはなかった。


「レノン様正直あんまり強くないとか思ってません?」


「……まぁそうだな」


「甘いですよ。ギーラは万能型ではありますが、どちらに秀でているものがないのではありません。むしろどちらも秀でている万能型なのです。魔法は前魔王様の次に強く、槍を使えば右に出るものはいない。そんな男です。誰もが彼を最強と言い、魔王様かなり頼りにしていました。……ああゴズだけはちがいますけどね」


 なるほど、そう聞くと途端に強そうに感じた。

 魔王にも力を認められ、仲間からの信頼も厚い。

 これは少しはやりがいがありそうだ。


「あれ、魔王様何か嬉しそうですね」


「ああ、ようやく俺も本気で戦える相手が出てきたと考えると少し楽しみになっただけだよ。さてフレン、皆んなを集めてくれないか?少しやっておきたいことがある」


「分かりましたー」


 そう言ってフレンは部屋から出て行った。

 ギーラか……

 最強の万能型……

 先日の件で溜まりに溜まった魔力を放出できるほどの相手であることを願うぞ。

 そう思いながら椅子から立ち上がり、レノンはある準備を始めた。


 ◇◆◇◆



「で、魔王様。俺たちを集めてなにをするんだ?」


 全員が集まったところでワンズがそう尋ねた。


「ああ、これからの戦いに備えて改めてお前たちの実力を知っておきたいと思ってな。それとそれに見合った実力の底上げをしておきたい」


「……?実力を知りたいってのは分かるが底上げってのはどうやるんだ?ゴズたちが攻めてくるまでそう時間があるわけじゃないだろう?」


「たしかに犬の言う通りですね。そう簡単にできるものなのでしょうか?」


「おいキツケ、お前また俺のこと犬っつったろ」


「なに?どこか間違えていたかしら?」


「大間違いだバカ蝙蝠が!!俺は人狼、狼だ!!あんな人族に飼われて尻尾振ってるような奴らと一緒にすんじゃねぇ!!」


「似たようなものでしょ?あなたも魔王様に尻尾振ってワンワンしてればいいじゃない。そうすれば少しは可愛げが出るんじゃなくて?」


「なにを………!!やるか!!」


「いいわよ?あなたなんて集団じゃなきゃただの弱っちい犬でしかないのだから。一対一ならあんたに負ける気なんてしないわよ」


「減らず口が……上等だこ『いったん黙れバカどもが』へぶ……!」


 喧嘩を始めたワンズとキツケの脳天に一発拳を打ち込んだ。

 そして見事にノックアウト。

 2人とも後ろにバタンと倒れ込んだ。


「気を取り直して底上げの話なんだが、ドゴラとスラメはもうその方法は分かっているだろう?」


「方法ですか……あ、なるほど!つまりは能力付与ということですな!」


「はい、ドゴラ正解。というわけで君たちには相手を組んでそれぞれ一戦ずつ模擬戦を行なってもらう。それで俺がその戦いから付与する能力を決める。ちなみにスラメはすでに付与しているから能力の使い方などの研究にあててくれ」


「分かりました!」


「ようやく我も実力を認められたということなのだな……感動だ。今日のことは日記につけておこう」


 え、ドゴラ日記とかつけてんの?

 そのなりで……引くわ……


「じゃあ組み分けなんだが、ドゴラ対スラメ、ワンズ対キツケ、フレン対マホってところかな」


「えー!魔王様!僕ドゴラさんとですか……一瞬で消されてしまう未来しか見えないんだけど…」


 現在スライム状態のスラメがプルプルと怯えている。

 龍対スライムなんてどう考えても無謀な戦いだ。


「大丈夫だスラメ。お前はすでに俺から能力を与えられているじゃないか。それを使えばドゴラなんぞ簡単に倒すことができる。約束する」


「本当!?じゃあ僕頑張るよ!!」


 今度はぴょんぴょんとはねる。

 本当に素直でいいスライムだ。

 和む。


「ねぇー、ふれんー。こないだはぁー、魔王様に止められちゃったけどぉー、今日はぁー、ちゃーんと殺してあげるからねぇー」


 エヘエヘと笑うマホ。


「いやだなマホ。その言葉……そっくりそのままお返しするよ。死にたくなければさっさとウィッチ族のところに帰りなよ」


 ……殺す宣言はやめような。

 ただの模擬戦だから。

 とはいえこの対戦カードを組んだのは俺なんだけどね。

 そりゃあ、因縁のある相手の方が本気になるよね。

 そういう意味合いだったけど、こいつら本当に殺し合いしそうで怖いわ。


 気絶している2人は置いといて模擬戦を開始しよう。




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