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策略と喧嘩

 

 魔王の部屋でな出来事から数日後。

 ゴズの書斎には裕に二桁を超える封書が届いた。


「ゴスさんそれは?」


 ソファに腰掛けるゴブルが問う。

 するとゴズはニヤついた顔でその封筒をゴブルの前に差し出した。

 封筒を開いたゴブルは少し驚いた。


「おいおいどうしたんだこれ……全部ゴズさんに味方するって書いてあるじゃねぇか。何したんだよゴズさん?」


「何簡単なことさ。あの偽魔王が魔王様を倒した男だという話をすべての種族に流しただけだ。するとどうだろう。一気に私に味方すると封書を寄越したのですよ。しかも差出人を見てください」


 ゴズに指示されるままがゴブルは封筒に目を落とした。


「……ほぉ、これはすごいな。ほとんどの十二翼からきてるじゃねぇか。これは勝てるかもなゴズさん」


「当たり前だよゴブル。私にかかればこの程度造作もないのですよ。集まった者達を利用して確実にあの偽魔王を殺し……私が魔王となります。あぁ、あくまで最初は形式上娘様に魔王になってもらいますがね」


 グフフと笑うゴズに冷ややかな視線を送る。


(おそらくこいつはあれだけ言われた後でも自分の人望とか思ってそうだよな。どう考えても魔王様の仇を討つために全員集まってきているだけだろ……まぁこれは言わないでも集まれば分かることか)


 正直ゴブル自身ゴズについていることに嫌気が差してきている。

 しかしおそらくこの状況はすぐ解消されると踏んでいる。

 だから暫しの我慢だ。

 そうすれば……やつがここにくる。


 ゴブルは封書の中にある名前を見つけていた。

 目先の欲には全く興味がない、ただひたすらに己の強さだけを磨いてきた本当の魔王軍最強の男だ。

 偽りだらけのゴズとは違う。


(ゴズが魔王軍のナンバー2と呼ばれてるのは自分で魔王様からナンバー2に指名されたと言ったのが広まっただけだがらな。あれ実際は言われてないのみんな知ってるっていう)


「おい!聞いているのかゴブル!!」


「……聞いてますよゴズさん。上手くいけばいいですね」


「上手くいくに決まっている。なにせ私の考えだからな!ああ!目に浮かぶ。私が魔王となる姿が!!」


 再び自分の世界に入って行ったゴズにため息しか出ないゴブルだった。


「………みんな早く来ねぇかな」


 ◇◆◇◆



 ゴズが去った後の魔王の部屋には変態ウィッチの荒い息遣いだけが響いていた。


「はぁ……はぁ……!魔王…様!!マホにぃ、マホにぃ、もっと濃い魔力をぉー、ちょーだいぃー!!」


 ジリジリと距離を詰めてくる。

 その顔はまるで飢えた獣だ。

 てかお前ら主人の危機だぞ?

 助けようと動いたのはドゴラだけが?

 お前ら俺を見捨てるのか!?


 視線でいくら訴えても誰も反応しない。

 というか目を合わせようともしない。

 こいつら……こうなったら……


 俺はある魔法を使った。


『お前らいいから早く助けろやー!!』


「「「!!!!!」」」


 マホを除く全員が頭を抱えてしゃがみ込んだ。

 そう俺が使ったのは伝達魔法『意思通達』だ。

 これは言葉を発することなく相手と会話ができる優れもので今までも何度か利用していた。

 故にマホを除く全員に俺の声は届く。

 そして俺は大声で叫んだ。

 するとどうなるだろう。

 急な大音量に耐えられず全員しゃがみ込んだ。


 ハハハッ凄いだろう!

 …………あれ?誰も立ち上がらない。

 キツケとワンズ白目になってないか?

 あー、気絶してるわ。

 フレンは……かろうじて意識はあるけどピクピクしてる。

 無事なのは……スラメだけか。

 これスライムには効果がないみたいだ。


「……?皆さんー、どうしたのですかぁー?」


 マホは自分以外の急な行動に少し驚いた様子だ。

 そして正気を取り戻したのだろうか、先ほどまでの気味の悪い言動は収まったみたいだ。

 なるほど、あの奇妙な状態になったら驚かせればいいのか……


「ん、んん!ところでマホとやら。お前たちウィッチ族は俺に付くということで間違いないな?」


「んー、ちょっと違うかなぁー。魔王様につくのはぁー、マホだけだよぉー。ウィッチ族はぁー、関係ないよぉー」


「ん?どういうことだ?」


 マホはウィッチ族の代表だろ?

 それが俺につくのなら一族の同意かと思ったのだが。


「魔王様……それについては私から説明します」


 ふらふらと手を上げたフレンがそう言った。


「マホは十二翼の1人ではありますが、ウィッチ族の代表ではありません。実力がウィッチ族で一番なだけです。彼女は気まぐれな性格ゆえ代表には向かないということで代表は別のものが就任したのですよ」


 なるほど…理由が明確でよろしい。


「あのさぁ、フレンちゃんさぁー、それぇ、私が言おうとしたことなんだけどぉー、何で言っちゃうのかなぁー?」


「私は魔王様の秘書ですから。魔王様の補佐をするのが仕事です。だから今のも仕事の範疇ですよ。別にあなたのセリフを取ったつもりはありませんよ」


「はぁー?マホぉー、カチーンときちゃったぁー。フレンー、あんたぁ、とりあえず殺すねぇー!!」


 マホが怒りをあらわにし、魔力を放出させる。

 何という魔力……!


「やれるもんならやってみなよ。まぁ、あんたが私に敵う未来なんて訪れやしないけど!」


 対抗するようにフレンも魔力を放出させる。

 さすがにマホとの差は垣間見えるがそれでも人間の大魔導師たちと比べれば桁外れな魔力だ。

 俺がまだ人間だったころ、これだけの魔力を誇るフレンが現れたとき魔導師たちはひっくり返ってたもんな。

 などと回想に浸っているうちに、


「しねぇぇーーー!!」


「お前がなぁー!」


 2人が最大級の殺傷魔法を放った。

 かなりの威力を秘めたそれは部屋の壁面や床面を破壊しながら接近する。それなりの広さがあるこの部屋を埋め尽くすような光と威力を孕んだそれを見て、


「わ、ワンズ!!あなた何とかしなさいよ!!」


「はぁ!魔力耐性低い俺になにができるってんだよ!ならむしろお前がやるべきだろキツケ!!」


「私はあなたのせいで今弱体化してるんです!だから助けてよ!」


「俺だって魔王様との戦いで消耗してんだ!そうだドゴラ!ドゴラは……あいつまだ気絶中かよ!!」


 ……そろそろ収集がつかなくなりそうだ。

 仕方ない俺が止めるしかないか。


 レノンは椅子から立ち上がり、スッと右手を上げた。


『魔力吸収!』


 そう叫ぶとフレンとマホを包み込んでいた魔力がどんどんと右手に吸収されていく。

 そしてものの数秒で2人は魔力切れを起こしその場に倒れてしまった。


「ふぅ、これでもう大丈夫だろう。それにしても2人の魔力量は異常だな。俺が吸収できる魔力量がもう限界だ。どこかで発散しないとな……」


 静かになった部屋の端で縮こまるワンズとキツケ。

 そして絶賛気絶中のドゴラ。


「……やっぱ魔王様ってすげぇわ」


 ワンズの呟きのみが部屋に響いたのだった。



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