第2話 魔王
[魔王城最上階]
「いやはや、ここまで来る者がいようとはねぇ。」
魔王が不敵な笑みを浮かべる。
魔王アールドワイツ、この名前を知らぬ者はいない。
幾多の戦士が魔王城に攻め入るも返ってくる戦士はいなかった。
だが、魔王に悩まされ続ける日々も今日で終わりだ。
今回は冒険家や腕自慢が勝手に魔王城に攻め入っているわけではない。国より魔王討伐として選抜された複数のPTメンバーにて魔王城に攻め入っているのだ。
その総数300人の強者だ!!
が、しかし・・・
現時点で魔王を前にして残ったメンバーは、私達のPTのみだ。
勇者ドマニーク、武術家サイロン、魔術師グレイブ、回復魔導師アリクシス、槍使いマーコフ、弓使いセルシス
もしかしたら他にも生き残りはいるかもしれないが戦闘不能に陥っている事だろう。
「いくぞ!!」
勇者ドマニークの声と同時にPTメンバーが各々動き出す。私は、皆んなを回復させるための魔法を準備する。
最初に魔王に攻撃をしかけたのは、弓使いセルシスだった。
精巧な弓で弓矢を魔王に向けて放つ。
撃ち放った弓矢は魔王へとみるみる近づいていく。
魔王はその弓矢をサラリと避けた。
「何もわかっておらぬなぁ。」
魔王が片方の腕の掌を私達に向けて前に出し、何かを話そうとする。
「主達よぉ。我を倒しても何も解決せんぞぉ。せっかくだから魔王の仕組みを教えてやろう。」
なんだろう?命乞いかな?
そういえば魔王については何も知られていない。書物にだって何も記述がないのだ。
返ってきた戦士が1人もいないんだ。情報の欠損は当たり前といえば当たり前か。唯一知っている情報が”アールドワイツ”という名前だけだった。
だが、それも今日で終わるだろう。私達が魔王を倒して生きて帰るのだから。
「その仕組みってのは、魔王を倒した人間が魔王になってしまうというものさぁ。我もまた勇者だったのだよぉ。」
魔王を倒してしまったら今度は自分が魔王になるって。。いやいや、これはさすがに嘘でしょ。
「魔王になると色々大変だぞぉ。まず、会話の語尾が伸びてしまう事とかぁ。恥ずかしいんだが勝手に呼び方が我だの主だのになってしまうんだぁ。まぁ他にも色々とあってだなぁ・・・。」
その時だった。高火力の魔法が魔王に炸裂した。
えっ。。今、魔王が頑張って話してるのに。
「うぉぉぉおーやられた!まさか今攻撃してくるなんて思わなかった。ん?あれ?普通に話せてる。そうか。俺の命が尽きる時、魔王という因縁からもおさらばできるという事か。。。」
魔王の息は途絶えた。
「で、でかしたぞ。グレイブ!」
あの空気を読むことができない筋肉の塊の武術家サイロンが空気を読んでいる。
「あいつの言葉に惑わされるところだった。助かったぜ。なっ、なっ!」
勇者ドマニークが同意を促すように私と槍使いマーコフに声をかけた。
「あぁ。しかし魔王の最後の言葉。気になるな。」
槍使いマーコフ空気読んでーー!今、やっと魔王を倒して世界を救ったって時だよ。ここは、喜ぶべきところじゃない。
「これで世界が平和になるなぁ。」
!!?
グレイブ?




